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日和佐・大浜海岸

日和佐・大浜海岸 徳島県美波町 ウミガメに愛される浜

ウミガメの産卵地として国の天然記念物に指定されている大浜海岸=徳島県美波町で

ウミガメの産卵地として国の天然記念物に指定されている大浜海岸=徳島県美波町で

 緩やかなアーチを描いて続く500メートルほどの砂浜。碧(あお)く澄んだ海。ウバメガシが生い茂る海辺の林では、繁殖期を迎えたメジロが求愛の鳴き声を響かせていた。ウミガメの産卵地として知られる徳島県美波町(旧日和佐町と由岐町)の大浜海岸を訪ね、高台から眺めた。

 ウミガメの産卵地は、国内では茨城県から沖縄県にかけて広く分布するが、その海岸が国の天然記念物になっているのは静岡県の御前崎と、ここの2カ所だけ。大浜海岸では、かつて年間の上陸数が200匹ほどもあった。近年は環境の変化などで20匹程度に減っているものの、研究の先進地で、しかも産卵場所が民家から数十メートルしか離れていない点が加味され、1967(昭和42)年、上陸するウミガメと海岸が国の天然記念物に指定された。

 
飼育されているウミガメに餌をやることもできる=日和佐うみがめ博物館で

飼育されているウミガメに餌をやることもできる=日和佐うみがめ博物館で

 研究はショッキングな出来事がきっかけだった。戦後間もない50年、日和佐中学校の生徒が、食用に殺されたウミガメを海岸で見つけ、「何とかしなければ」と教師や生徒が立ち上がった。校内での繁殖、飼育活動が始まり、やがて町ぐるみの取り組みに。2009年秋からは、NHK朝の連続ドラマ「ウェルかめ」の舞台にもなり、多くの観光客が訪れた。

 大浜海岸は、住民らの取り組みで、ごみはほとんど見当たらない。素足で歩きたくなるほどだ。すぐ横にある「日和佐うみがめ博物館」の学芸員、田中宇輝(ひろき)さん(27)は「四国は温暖で、手つかずの自然が残っている」と5年前、東京から移り住んだ。ウミガメがやって来る理由については「サケのように生まれた浜に戻るという説もあるが、私は産みたい浜をカメが選んでいるように思える」と話す。博物館には、日和佐中学校でふ化した1950年生まれで、飼育個体としては国内最長寿のアカウミガメ「浜太郎」をはじめ、3種類、計約100匹のウミガメが飼育展示されている。

 四国では、どこにいても、お遍路さんを見かける。来年は行程約1400キロといわれる四国88カ所霊場の開創1200年にあたり、各地でさまざまな行事が計画されている。徳島県南部で、高知県寄りに位置する美波町日和佐地区は、昭和の中ごろまで京阪神への木炭や薪の積み出し港や漁業で栄えた。神亀三(726)年、行基菩薩(ぎょうきぼさつ)が建立した薬王寺は、第23番霊場。お遍路さんだけで年間約22万人が参拝する。

 宿にもお遍路さんがいたので夕食時に話しかけてみた。「何らかの苦悩を抱えているのでは・・・」との心配をよそに、あっけらかんとした人ばかり。「運動を兼ねて」「放浪癖があるんですかねー」など、重苦しいイメージはなかった。午前7時を過ぎると、徒歩やマイカーで次々と出発していった。

お遍路さんや厄よけの参拝者でにぎわう第23番霊場・薬王寺=徳島県美波町で

お遍路さんや厄よけの参拝者でにぎわう第23番霊場・薬王寺=徳島県美波町で

 せっかくなので、普段着のままリュックサックを背負い、薬王寺まで1キロほどのミニ遍路を試みた。すると自転車の女性から「いってらっしゃい」の声。道端で草むしりをしているおばあちゃんも、「気を付けて」と声を掛けてくれた。初めての地で、しかも初対面なのに。これは新鮮な感覚-。うれしくて足取りが軽くなった。

 遍路道沿いの接待所には、「日和佐うみがめお接待の会」のメンバー4人が詰めていた。最高齢の佐坂重子さん(82)は「いろんな人との出会いが楽しみで、月に2回ほど来ています」と熱いコーヒーでもてなしてくれた。自然は豊かだが、これといった産業のない美波町。過疎が進み現在の人口は8000人足らず。だが、お遍路さんだけでなく一般の旅行者にも優しかった。

 文・写真 富永賢治

(2013年4月26日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
美波町日和佐へは、大阪なんば発の高速バスで約4時間。新幹線・新神戸駅発の高速バスで徳島駅まで2時間、JR牟岐線に乗り換え特急で約1時間。

◆問い合わせ
美波町観光協会=電0884(77)1875

おすすめ

南阿波丼

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★日和佐うみがめ博物館
世界のウミガメ8種類の剥製などを展示。
入館料は大人600円、中高校生500円、小学生300円。
月曜(祝日の場合は翌日)定休。開館は午前9時~午後5時。電0884(77)1110

★うみがめマリンクルーズ
室戸阿南海岸国定公園・特別保護地区の海岸美を、約40分かけて楽しむ。
大人1800円、小学生以下4歳までは半額。
問い合わせ、予約は日和佐漁業者会=電0884(77)1730

★道の駅「日和佐」
地元産の果物や海鮮加工品を販売。無料の足湯もある。年中無休。
営業時間は午前9時~午後6時(土日祝日は午前8時~午後7時)。電0884(77)2121

★南阿波丼
地元産の食材にこだわったメニューで、店先にのぼりを掲示している。
600円程度から、2000円超の豪華版までさまざま。

★観光ボランティアガイド
要望に応じ、近辺を無料で案内する。1人からでも可。
申し込み、予約は観光ボランティアガイド会日和佐=電0884(77)0768

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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