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大台ケ原

大台ケ原 奈良県 自然保護の意味を体感

かつての原生林もササに侵食され衰退が進む

かつての原生林もササに侵食され衰退が進む

 運転席のドアを開けたら、思いがけない冷気にたじろいだ。大台ケ原ドライブウェイ終点の駐車場は標高約1500メートル。車で気軽に来られても、本格的な山なのだ。

 紀伊山地の一角・大台ケ原は、頂上部になだらかな丘陵が広がる景勝地。国内有数の多雨地域としても知られる。その東部(東大台)を回る9キロコースに挑戦した。

 雨具、着替え、非常食をリュックに入れ、まずは最高地点の日出ケ岳(1、694メートル)を目指した。大型連休前の平日。冬季閉鎖されていたドライブウェイが開通したばかりで、登山者の姿はまばら。よく整備されていて、迷う心配はない道だ。

 かつては、うっそうとした原生林が広がっていたが、1961(昭和36)年にドライブウェイが開通して観光客が増え、森林の衰退が進んだ。台風で樹木が倒れてミヤコザサが繁殖し、それを好むシカが増えたことも影響したらしい。登山路の周囲にも、樹皮が大きくめくれて、樹勢の弱った木が目についた。

 
よく整備された尾根道の両側は、立ち枯れの木や倒木が目立つササ原。わずかなバランスの乱れから、自然は姿を変えてしまう

よく整備された尾根道の両側は、立ち枯れの木や倒木が目立つササ原。わずかなバランスの乱れから、自然は姿を変えてしまう

 尾根に出て、木製の長い階段を上り切ると、日出ケ岳の山頂。見渡す限り、山が幾重にも連なり、神々しさを覚えるパノラマだ。そのせいか大峰山、吉野山、熊野三山、高野山と山岳信仰に縁の深い山が、この地域には多い。晴れた日には、熊野灘の展望も楽しめるそうだが、この日は、もやがかかり、島影をぼんやりと確認できただけだった。

 尾根伝いに正木峠から正木ケ原、牛石ケ原へと進む。一面のササ原に、立ち枯れの木が墓標のように点在していた。マツ科のトウヒ林だった場所で、シカの食害や車の排ガスなどが原因らしい。ササもシカに食べられて背丈が伸びず、遠くから眺めると芝生のようだ。

 環境省近畿地方環境事務所では、食害防止のために、柵や金網で保護したりして森林の再生を図っているが、数100年かかる見通しだという。

 尾根ルートの終点は、展望ポイントとして知られる大蛇●(だいじゃぐら)。その名の通り、大蛇のような奇岩が谷に向けて突き出していた。岩の先端まで下りていこうとしたら、左側から突風。思わずしゃがみこんだ。岩の周囲に転落防止の柵が設けられてはいるが、それでもけっこう怖い。カメラを構えるのも、へっぴり腰になってしまう。紅葉の時期は、この狭い岩場が満員になるらしい。

 谷を挟んだ向かい側。西大台の山の絶壁を流れ落ちる大きな滝が目に入った。遠くから眺めても、迫力十分だ。後で調べてみたら「中の滝」という名で、落差250メートルは、国内3位だとか。

大蛇●(だいじゃぐら)からの見事な展望

大蛇●(だいじゃぐら)からの見事な展望

 後は下りるだけ、と思ったら、そこからが大変だった。急斜面を深い谷へ下り、つり橋を渡ってから一転して、きつい登り。休み休みしながら駐車場にたどり着いた。所要時間4時間弱。運動不足の50代としては、妥当なペースだろう。

 ふもとから登り切る体力はなくても、見事な展望を満喫でき、自然の力、自然保護の意味を体感できるコース。中高年に人気なのも分かる。

 ひと息ついていたら突然、青空を黒雲が覆い、小雪交じりの強風が吹き始めた。

 やっぱり、本格的な山なのだ。

(注)●は山かんむりの下に品

 文・写真 安藤明夫

(2013年5月24日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
近鉄・大和上市駅からバスで1時間50分(平日1往復、土日祝日2往復)。
車は、名阪国道・針インター(奈良市)から宇陀市・川上村を経由し約2時間40分。

◆問い合わせ
大台ケ原ビジターセンター=電07468(3)0312

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柿の葉ずし

★大台ケ原ビジターセンター
ニホンジカ、クマなど大台ケ原にすむ動物の写真や足跡スタンプ、植物標本などが展示されている。映像観賞のコーナーもあり、子どもの自然学習にぴったり。

★コケ探索路
ビジターセンターの駐車場近くの森林の中、フェンスで保護された原生林をたどり、コケを観賞するコース。
湿った地表や木の根元を覆う多様なコケを楽しむ。登山の自信はないけれど、自然に触れたい人に最適。

★柿の葉ずし
奈良県吉野地方の名産「柿の葉ずし」。ふもとの川上村にある大滝茶屋は、
大正時代に創業した老舗として知られる。
生の葉だけを使うため、葉を入手しにくい冬季は休業する。
伝統的な塩じめのサバの歯触りと、柿の葉の香りが絶妙のハーモニー。電0746(53)2350

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