【本文】

  1. トップ
  2. 旅だより
  3. 石巻、女川、南三陸
石巻、女川、南三陸

石巻、女川、南三陸 宮城県 被災各地に再生の息吹

復興のシンボルとして観光客でにぎわう石ノ森萬画館=宮城県石巻市で

復興のシンボルとして観光客でにぎわう石ノ森萬画館=宮城県石巻市で

 宮城県石巻市のJR石巻駅から10分ほど歩くと、旧北上川河口近くの中州に、ひときわ異彩を放つ銀色の建築物がある。「仮面ライダー」「サイボーグ009」や「HOTEL(ホテル)」の作者として知られる同県出身の漫画家・故石ノ森章太郎さんの作品やアトラクションを集め、今年3月にリニューアルオープンした「石ノ森萬画(まんが)館」だ。

 萬画館は2年前の3月11日に発生した東日本大震災で被災し、閉館に追い込まれた。その後のリニューアルで仮面ライダーに変身できる新たなアトラクションも加わり、石ノ森作品に夢中になった少年時代に戻ることができた。

 この建物の3階では大震災時、中州部分に取り残された約40人が5日間にわたって避難生活を送った。館内のがれき撤去作業にボランティアも協力するなど、萬画館再開は地域復興の思いとも重なった。

 同市では、約4000人の死者、行方不明者を出すなど一都市としての震災被害は最悪規模だった。その傷痕を忘れないための施設が萬画館の近くにある。

 それは「石巻ニューゼ-絆の駅」。地元紙の「石巻日日新聞」が運営する施設で、震災当時に報道部長を務めていた武内宏之館長(55)が、手書きの壁新聞を発行するなど、記者たちの極限状態での取材ぶりを語ってくれた。壁新聞は米国の博物館にも保存され、世界的に知られるようになった。

 「心をつなぐ情報の優先を心掛けた」-。記者として行動したことの是非を今も自問自答することがあるという。震災の教訓を後世に伝える使命感が武内さんらを支える。

 
石巻日日新聞が発行した手書きの壁新聞。当時の報道部長、武内宏之さんが当時の状況を語っている=石巻市で

石巻日日新聞が発行した手書きの壁新聞。当時の報道部長、武内宏之さんが当時の状況を語っている=石巻市で

 石巻市から三陸海岸を北上した地点にある南三陸町の復興仮設商店街「南三陸さんさん商店街」を訪ねた。松原食堂の「キラキラうに丼」(1800円)を食べながら、主人の渡辺浩さん(53)とみつ子さん(56)夫妻に、かつて町にあったモアイ像の話を聞いた。

 そのモアイ像は志津川港近くにあった松原公園の中で、海を向いて立っていたという。1960年のチリ大地震で発生した津波で被災した南三陸町がチリ政府との協力でつくったが、大震災の津波で流失。チリ地震の年、公園そばで開業した松原食堂も、モアイ像とともに倒壊した。

 今月、新たなモアイ像がチリから町に届いた。門外不出だったイースター島の石でつくられた特別な像。モアイという言葉には「未来に生きる」という意味があるという。仮設店舗を営む渡辺さん夫妻は「モアイ像が再生の象徴に思える」という。

 バスの車窓から美しいリアス式海岸を眺めるうちに女川町に着いた。緑の山に抱かれた入り江には、穏やかな波が打ち寄せていた。漁港として栄え、当時人口約1万人だった町も、大震災で800人を超える犠牲者を出す壊滅的被害を受けた。

津波で被害を受けた港を見ながら、大震災の状況を説明する語り部の阿部真紀子さん(中)=同県女川町で

津波で被害を受けた港を見ながら、大震災の状況を説明する語り部の阿部真紀子さん(中)=同県女川町で

 港を見下ろす高台にある女川町地域医療センターで、大震災の“語り部”として活動している阿部真紀子さん(43)に会った。そこは町の人々が津波から逃れ、センターへ来たものの、逃げ遅れた人が流されていくのを、なすすべもなく見守った場所だった。

 「ちょっとでも女川にお金を落としていってほしい。そう思ってガイドしてます」

 そんな言葉に素直にうなずいた。自らの体験と町のその後を語るボランティアガイドを務める阿部さんの言葉に、町の復興を願う心情が強く感じられた。

 文・写真 久留信一

(2013年5月31日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
石巻市へは仙台駅からJR東北線、石巻線経由で、直通快速列車もある。
女川町、南三陸町へはJRだと、未復旧区間をそれぞれ代行バス、BRT(バス高速輸送システム)に乗車。
詳細はJR東日本のホームページで。仙台から石巻、女川、南三陸へは、それぞれ高速バスがある。

◆問い合わせ
宮城県観光情報発信センター=電022(211)2822、
石巻観光協会=電0225(93)6448

おすすめ

モアイ像
モアイ像

★石ノ森萬画館
3~11月は午前9時~午後6時(チケット販売同5時半まで)、毎月第3火曜日が休館(祝日・夏休みは開館)。
入館料大人800円、中高生500円、小学生200円。
詳細はHPで。電0225(96)5055

★マンガッタンライナー
JR石巻線の小牛田-浦宿・石巻間で毎週土日曜日運行。
車両に「仮面ライダー」「サイボーグ009」など石ノ森作品が描かれている。

★石巻ニューゼ-絆の駅
大震災発生と被災状況を手書きの壁新聞で伝えた石巻日日新聞が創刊100周年を記念して開設。
1階に壁新聞や震災時の写真などを展示している。午前10時~午後5時、毎週月曜日休。
電0225(98)7323

★モアイ像
高さ約3メートル、重さ約2トン。初代が大震災で破損。2代目がチリから贈られ、
5月16日に南三陸町の南三陸さんさん商店街に据えられた。

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

旅コラム
国内
海外