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下関戦争砲台跡

下関戦争砲台跡 山口県 志士の無念 海峡に眠る

幕末の下関戦争で使われた長州砲のレプリカ。対岸の左後方が田野浦

幕末の下関戦争で使われた長州砲のレプリカ。対岸の左後方が田野浦

 明治維新のきっかけともなる下関戦争の跡地を、山口県下関市に訪ねた。長州藩は関門海峡で西欧列強と対峙(たいじ)したが、装備の遅れから大敗。攘夷(じょうい)派から開国派に転じ、多くの志士が命を賭して倒幕にまい進した。目を閉じ、当時の状況を思い浮かべると身震いのする思いがした。

 本州と九州の間に位置する関門海峡。狭いところは600メートル余りしかなく、「おーい」と叫ぶと、対岸に声が届きそうだ。ひんぱんに船が行き交う海の要衝で、それは起きた。幕府が攘夷の期限とした1863(文久3)年5月10日、濃霧と潮待ちのため下関市の対岸、北九州市・田野浦沖に停泊していたアメリカ商船を、長州藩の軍艦「庚申丸」などが砲撃。他藩に先駆け攘夷の口火を切ったが、反撃に遭い完敗。高杉晋作率いる奇兵隊の創設へとつながっていく。

 
 
功山寺境内にある高杉晋作像

功山寺境内にある高杉晋作像

 下関市には、その痕跡が今も残っている。当時、関門海峡に向けた長州藩の砲台は5カ所あったが、欧米諸国に比べると装備はお粗末。現在は、みもすそ川公園になっている壇の浦砲台跡を訪ねると、長州砲のレプリカが計6門、置いてあった。この辺りを毎日散歩しているという地元の平田茂次さん(85)によると、「言い伝えでは、長州砲の弾は300メートルしか飛ばなかった。火薬のない鉄球だったので、命中しても爆発せず、甲板の上をゴロゴロ転がっていたそうです」-。話を聞いて、明治政府が富国強兵に向かった訳が分かったような気がした。

 第一撃を放ったのは、やや離れた高台の亀山砲台とされているが、近年は見方が変わっている。市立長府博物館長の古城春樹さんは「当時の長州砲は、飛距離も短く、どこへ飛ぶかも分からなかった。田野浦までは、最も近い壇の浦砲台からでも2キロ余りあり、撃っても届かなかった。庚申丸の攻撃は、藩命ではなく、攘夷急進派だった久坂玄瑞(くさかげんずい)らの暴発だったようです」と教えてくれた。

 翌64年には、西欧列強が下関を砲撃し、長州藩はこてんぱんの憂き目に遭う。主戦場となった前田砲台跡は電力会社の社宅や作業の訓練場になっていたが2010年、「長州藩下関前田台場跡」として国史跡に指定された。いずれ、史跡として整備されるという。

 ここからバスに乗り、10分ほど行くと旧長府毛利藩の城下町ゾーン。山手にある功山寺は、奇兵隊総督を解任された高杉晋作が倒幕の挙兵をした場所としても知られる。境内には銅像があり、27歳で命を終えた晋作が、勇ましい馬上姿で出迎えてくれた。近くには乃木希典陸軍大将をまつった乃木神社が、復元された生家とともにある。バス停で出会った高齢のご婦人は「争い事はいやですが、お国のために、命をかけて戦われたのですから誇りに思います」。今も2人は、郷土の偉人だった。

下関幕末維新村展示館の坂本龍馬が妻お龍と過ごした本陣の一室の再現コーナー=いずれも山口県下関市で

下関幕末維新村展示館の坂本龍馬が妻お龍と過ごした本陣の一室の再現コーナー=いずれも山口県下関市で

 本州最西端の下関市は、交通の要衝なるがゆえに、幾多の時代で歴史に名をとどめてきた。源氏と平家が雌雄を決した「壇の浦の戦い」もしかり。太平洋戦争の空襲で、旧市街や晋作らが闊歩(かっぽ)した花街は焼失したが近年、市内赤間町の元料亭を生かして下関幕末維新村展示館がオープン。坂本龍馬が、妻お龍と下関で新婚生活を送った伊藤家本陣の一室を再現したコーナーや、晋作が龍馬に贈った拳銃のレプリカなどが展示されていた。

 この日の案内役は、下関観光ガイドの会メンバーの辻洋子さん(80)。お龍さんの代わりに新婚の間に座っていただいた。すると辻さんが、「龍馬たちの新婚生活は、大した調度もなく、質素なものでした。それに引き換え、今の人たちは恵まれてますね」-。この言葉が耳に残った。

 文・写真 富永賢治

(2013年7月5日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
下関市へは新幹線のぞみ(小倉経由)で名古屋から約3時間半、
東京からは約5時間半。
羽田空港から宇部、福岡、北九州の最寄り空港までは1時間40分前後。
JRの在来線などに乗り継ぎ、それぞれ1時間余りで到着する。

◆問い合わせ
下関市観光政策課=電083(231)1350

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★唐戸市場
新鮮な魚介類とその加工・販売店、漁師の直売店などが並ぶ。
人気のすしバイキングが楽しめる馬関街の営業時間は
金、土曜が午前10時から午後3時、日曜祝日は午前8時から午後3時。
同市場業者連合協同組合=電083(231)0001

★海峡ゆめタワー
地上143メートルの展望室から、関門海峡、巌流島などが一望できる。
入館は午前9時半から午後9時。展望料は大人600円、小中高生300円。
電083(231)5600

★下関市立長府博物館
長府毛利家の遺品をはじめ、坂本龍馬が起草した「新政府綱領八策」など、
幕末と明治維新期の資料を展示している。
入館は午前9時から午後5時。入館料は大人200円、大学生100円。
月曜休館(祝日の場合は翌日)。電083(245)0555

★下関幕末維新村展示館
入館は午前10時から午後5時。入館料は大人200円、小中学生100円。
水曜定休だが見学前の電話がお勧め。電083(232)9338

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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