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ニュルブルクリンク

ニュルブルクリンク ドイツ 納得 世界一の草レース

森の中を走り抜けるノルドシュライフェ(北コース)。コース沿いにファンが建てた小屋やテントも見える

森の中を走り抜けるノルドシュライフェ(北コース)。コース沿いにファンが建てた小屋やテントも見える

 世界で最も名の知られたサーキットだが、まったく気取った雰囲気はない。レーシングカーが時速200キロで走る路面は、スプレーの落書きだらけ。レースの合間に、ネットや壁を乗り越えたファンが、文字や模様を思い思いに描いているのだ。警備員は止めるどころか、手招きさえする。

 毎年5月に開かれるニュルブルクリンク24時間耐久レースは、トヨタ自動車の豊田章男社長が「世界一の草レース」と呼ぶだけあり、観客とレースの垣根は低い。

 松林の中をうねるように造られた全長約20キロの「ノルドシュライフェ」(北コース)と呼ばれるコースに、F1開催用に追加された全長約5キロの新コースをつなげて開催される。収容できる観客数は20万人。

 眺めのいいコーナーには、ファンがコースぎりぎりに物見の小屋を建て、ソーセージを焼きながら、ビールを飲む。トヨタのチームドライバーに聞くと「車を運転しながら、何を焼いているのか、においで分かる」のだという。

 北コースは長くて、狭くて、アップダウンがきつい。別名は「グリーンヘル」(緑の地獄)。車は大きなうねりを越えるとピョンと宙に浮き、そのまま見通しの利かないカーブに突入する。客はスリリングなコーナーワークをつまみに、さらにビールをあおる。

 
コース場から見た観客席。バーベキューのにおいも漂ってくる

コース場から見た観客席。バーベキューのにおいも漂ってくる

 このコースができたのは1927年。トヨタ自動車の創業より10年も前のこと。このころ、ドイツの自動車産業は既に、車でレースをする水準にあったわけだ。

 「ニュル(ニュルブルクリンクの略称)で鍛えた足回り」というのは、よく自動車メーカーに使われる宣伝文句。ドイツメーカーのほか、米国や韓国メーカーも付近に開発拠点を構えている。トヨタも密(ひそ)かに拠点を持っている。

 その理由は「世界一、厳しい」とされるコース状況。コース内の高低差は300メートルあり、コーナーは170もある。雨が降れば泥水の小川がコースを横切る。サーキットなのにラリーのような運転を要求される。つまり、このコースを高速で走破できる車は、めでたく「ニュル開発」とか「欧州車の足回り」というブランドを名乗ることができるのだ。

 自動車メーカーばかりでなく、腕自慢のドライバーも世界中から集まる。レース開催日や貸し切り日以外は一般開放されており、自車やレンタカーを持ち込んで走ることもできる。

レースをPRする女性たち=いずれもドイツ・ニュルブルクリンクで

レースをPRする女性たち=いずれもドイツ・ニュルブルクリンクで

 車好きには遊園地のような場所だが、魅力はスピードレースだけではない。周囲はベルギーやルクセンブルク、フランスにつながる緑豊かな山々。緩やかなカーブが続く山道を、手入れの行き届いた広大な牧草地を眺めながらゆっくりドライブもできる。ドイツ人はあらためて「森の民」だと実感し、グリム童話を生んだ自然環境も目の当たりにできる。

 実は、サーキットは大幅改修の費用が重荷になり、昨年、経営破綻した。現実は厳しい。ドイツの豊かな自動車文化はどう守られるのか、しばらく目が離せない。 文・写真 阿部伸哉

(2013年8月30日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
羽田空港と中部国際空港からは、独ルフトハンザ航空のフランクフルト直行便がある。
フランクフルトからは高速道路「アウトバーン」などでニュルブルクリンクまで約1時間半。
24時間レースや9月のF1開催時には、最寄りの最大都市コブレンツから臨時バスが出ているが、本数は限られており、時刻表をよく調べる必要がある。
周辺は宿泊施設は少なく、レース期間中は大混雑するので、事前予約は必須。

おすすめ

石焼きステーキ

石焼きステーキ

★コース運転
一般開放されている北コースは、事前申し込みをすれば持ち込んだ車で走れる。
一周26ユーロ(約3380円)から。保険料は別。ニュルブルクリンクのホームページ(名前から検索)で走行可能日のチェックと申し込みができる。
BMWは、客をタクシーに乗せコースを走るサービスを提供している。

★レストラン「ピステンクラウゼ」
F1サーキットから車で5分ほどの「ホテル・アム・ティーアガルテン」内にある。
ニキ・ラウダ、アイルトン・セナなど、店を訪れた世界的レーサーが天井や壁を埋めるようにサインしており、博物館のような雰囲気。
名物は石焼きステーキ。アルゼンチン産の分厚いヒレ肉が、熱く焼かれた平たい石の上に載って出てくる。20ユーロ(約2600円)。

★ケルン大聖堂
コブレンツからライン川を上流に行くと、「ローレライ」などライン観光のスポットが集まっている。逆にライン川を下ると、かつての西ドイツの首都ボンやケルンといった大都市を通り抜ける。
ケルン駅前にある1880年完成の大聖堂には、高さ100メートルの展望台まで昔ながらの石のらせん階段で上れ、ライン川を眺望できる。

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