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八丈島

八丈島 東京都八丈町 奥深い自然に惹かれて

人懐こいジャージーの子牛に観光客の歓声が絶えない=東京都八丈町のふれあい牧場で

人懐こいジャージーの子牛に観光客の歓声が絶えない=東京都八丈町のふれあい牧場で

 八丈富士(854メートル)の中腹に広がる町営の「ふれあい牧場」。なだらかな丘陵に、黒毛和牛と茶色のジャージーが数十頭、のんびりくつろいでいた。

 丘陵の先には、青い海と水平線、険しい絶壁の大パノラマを楽しめるはずだったが、島の天気は移り気だ。レンタカーで山道を上るうち、白いガスに覆われてしまった。

 代わりに主役を務めたのが、人懐こいジャージーの子牛。観光客に近づき、柵越しに差し出した手をなめてくれる。つぶらな瞳がかわいい。この牛たちに、島の酪農の明日が託されている。

 明治時代から酪農が盛んだった八丈島。子牛の間は、この牧場で預かり、成牛を自前の畜舎で飼う方式で営んできた。しかし酪農離れが進む中、牛乳製造に協力してきたJAが撤退。2008年に島の有志が「楽農アイランド」という会社をつくり、八丈牛乳のブランドを細々と守りながら「山地酪農」という新しい手法を試みている。ふれあい牧場のジャージーも、いずれは同社の牧場に移る。

 「畜舎ではなく、自然の中で育てる。昔からのやり方じゃ後継者も育たないからね。あと数年から10年ぐらいで仕組みが整うかな」と、社長の小宮山建さん(67)。60を過ぎての起業に情熱を燃やす。

 
黄八丈の織りの実演を見学できる「黄八丈めゆ工房」

黄八丈の織りの実演を見学できる「黄八丈めゆ工房」

 牧場を出て、島の高台にある「黄八丈めゆ工房」を訪ねた。伝統的な絹織物・黄八丈の織りの実演や解説のDVDを見られる。当主の山下誉さん(72)は、織物の話をそっちのけで「ジュラ紀の森をつくる」という夢を語ってくれた。温暖・多雨の八丈島には、国の天然記念物「北限のヘゴ」など古生代の森があり、次世代に残すための植樹作業を続けている。草木染のルーツを探る中で、古代の森に惹(ひ)かれたという。

 江戸初期から「流人の島」だった八丈。島の子たちは、政治犯から読み書きを習い、遠い江戸の文化にあこがれた。そのせいか、外の人を警戒しない、気さくな「夢追い人」が多い島だ。

 今回の旅は「福八子どもキャンププロジェクト」への参加を兼ねての休暇だった。福島県の被災地で放射能の不安にさらされて暮らす子どもたちを、自然の中で思い切り遊ばせてあげようという夏休み企画。50代の記者も一緒に遊んでもらった。

 漁船をチャーターし、無人島の八丈小島でデーキャンプ。突堤から飛び込んだ海は、とことん青く、深い。真っ黒に日焼けした海好きの大人たちが、銛(もり)でイシガキダイなどを仕留め、子どもたちも負けずに挑戦する。立ち泳ぎの上達の速さは、驚くばかりだ。

クロアシアホウドリの繁殖が期待される八丈小島

クロアシアホウドリの繁殖が期待される八丈小島

 ごつごつした火山岩の磯から陸地に向かうと、なだらかな斜面に、住居や神社跡の石垣が点在していた。昭和の最盛期には100人以上が暮らしていたという。この小島、今春に絶滅危惧種のクロアシアホウドリの生息が確認されて話題を呼んだ。約300キロ離れた鳥島から数十羽が移ってきたとみられ、今秋には初の産卵が期待されている。

 「クロアシアホウドリが来ると、国の特別天然記念物のアホウドリもやって来るといいます。ひなの成育を観察しやすいし、世界の注目を集めるはず。観光の起爆剤になるかも」。地元の「夢追い人」が目を輝かせた。

  文・写真 安藤明夫

(2013年9月20日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
八丈島へは空路だと羽田空港から約55分(1日3便)。
船は東京・竹芝桟橋から11時間(同1便)。

◆問い合わせ
全日空国内線予約・案内センター=電0570(029)222、
東海汽船予約センター=電03(5472)9999

おすすめ

愛らしい「キョン」

愛らしい「キョン」

★温泉めぐり
八丈島には太平洋を見渡す大露天風呂の「みはらしの湯」、
ひのき造りの「ふれあいの湯」など7つの温泉・足湯があり、
温泉好きには1日周遊券(大人700円、小学生350円)や、
2日間有効のバス・温泉共通券(大人1000円、子ども500円)がお得。

★八丈植物公園
愛らしい「キョン」が飼育されている。中国・台湾原産のシカ科の動物で、柴犬ほどの大きさ。
1970年代の人気漫画「がきデカ」で「八丈島のきょん」という決めぜりふが有名になった。

★島寿司(ずし)
寿司だねをしょうゆ主体のたれに漬け、甘めの酢飯で握る郷土料理。
タイ、トビウオ、マグロ、カンパチ、カツオなど、島で水揚げされる魚を使う。
ワサビの代わりに、練りがらしを使うのが特徴だ。

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