【本文】

  1. トップ
  2. 旅だより
  3. タウシュベツ川橋梁
タウシュベツ川橋梁

タウシュベツ川橋梁 北海道上士幌町 水面に映る丸いアート

ダム湖に沈んだ旧線路のアーチ橋、タウシュベツ川橋梁は、水位によって見え隠れし、季節それぞれの表情が変わる幻想的な橋だ=北海道上士幌町の糠平湖で

ダム湖に沈んだ旧線路のアーチ橋、タウシュベツ川橋梁は、水位によって見え隠れし、季節それぞれの表情が変わる幻想的な橋だ=北海道上士幌町の糠平湖で

 11個のアーチが連なる全長130メートルのコンクリート製の橋は、まるで湖に棲(す)む巨大な生き物のように見えた。湖面に映る姿も美しい。ここは「旧国鉄士幌線(しほろせん)コンクリートアーチ橋梁群(きょうりょうぐん)」の1つ、タウシュベツ川橋梁。北海道の帯広市から十勝平野を北上した上士幌町にある。橋梁群は2001年、北海道の歴史を伝えるものだとして第1回北海道遺産に選定された。

 1987年に廃線となった旧士幌線は、帯広駅と十勝三股駅(上士幌町)の間約80キロを結んでいた。かつては切り出した材木の運搬に使われ、地域経済やにぎわいを支えた。タウシュベツ川橋梁は37(昭和12)年にタウシュベツ川にかけられた。しかし、発電用ダムの建設に伴い周辺は水没、新しく線路が敷かれた。この橋梁を含む旧線は55(昭和30)年に廃止され、線路も外された。今はダム湖(糠平湖(ぬかびらこ))に姿をさらす。湖の水位の上下によって、完全に姿を隠すこともあり“幻の橋”として観光客の人気を集めている。

 糠平湖畔の、ぬかびら温泉(上士幌町)に1泊し、地元のNPO法人「ひがし大雪自然ガイドセンター」のアーチ橋見学ツアーに参加した。メンバーの車で林道を走り、タウシュベツ川橋梁の前に到着した。アーチの直径は約10メートル。静かな水面(みなも)にアーチ橋が映った眺めは、まさにアートだった。

 ツアーに参加していた埼玉県からの女性は「ここへ来たのは4回目。橋の写真のカレンダーがあればほしい」と満足顔で話した。

幌加駅跡には廃線当時の線路が残されている=北海道上士幌町で

幌加駅跡には廃線当時の線路が残されている=北海道上士幌町で

 ほかに第5音更(おとふけ)川橋梁や、廃線当時の線路が残る幌加駅(ほろかえき)跡などを訪ねた。橋梁は44本かけられたが、現在も形をとどめているのは14本だけという。温泉街の一画、糠平駅の跡地に建てられた鉄道資料館には車掌車が置かれ、旧士幌線の歴史を伝えている。

 ガイドセンター職員の上村潤也さん(27)に近況を聞くと、「10月上旬は水量が増え、橋梁は水没しています」とのこと。次に姿を見せるのは湖面が雪と氷に覆われる1月上旬から5月初めにかけて。「冬は天候が安定し、雲1つない青空の下、白銀に冬化粧した姿も素晴らしいですよ」と教えてくれた。氷結した糠平湖をスノーシューを履いて横断する見学ツアーや、ワカサギ釣り体験もできる。

標高644メートルの展望台から十勝平野が一望できる狩勝峠=北海道新得町で

標高644メートルの展望台から十勝平野が一望できる狩勝峠=北海道新得町で

 廃線になった鉄道を生かす取り組みは、山を1つ越えた隣の新得(しんとく)町でも力を入れている。旧狩勝線(かりかちせん)だ。

 十勝平野を一望できる標高644メートルの狩勝峠を越えていた線路は07(明治40)年に完成、北海道の東と西を結ぶ鉄道、後の根室線の一部だった。しかし、急勾配と急カーブが続いていたため66(昭和41)年、今の線路に替わり、狩勝線は廃線となった。

 旧新内駅(にいないえき)を拠点に、NPO法人「旧狩勝線を楽しむ会」が線路跡地を遊歩道にするなど、町おこしに頑張っていた。峠付近の狩勝隧道(ずいどう)の前からゆっくり下ると、途中の展望台でさわやかな風を受けながら「日本新八景」の絶景が楽しめる。町役場産業課観光係長の市川栄樹さんは「狩勝線の記憶を掘り起こし町の歴史を発信したところ、共感して訪れてくださる観光客が増えてきました」と話していた。

 文・写真 鈴木賀津彦

(2013年10月11日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
上士幌町のぬかびら温泉へは、帯広からバスで約1時間半。帯広へは札幌経由などで。札幌-帯広はJR北海道の特急「スーパーおおぞら」もしくは「スーパーとかち」が便利。

◆問い合わせ
地元の上士幌町観光協会=電01564(2)3355
新得町観光協会=電0156(64)0522

おすすめ

写真

★旧国鉄士幌線アーチ橋見学ツアー
NPO法人ひがし大雪自然ガイドセンターのメンバーが車で案内。大人3000円、子ども1500円。定員制(ワゴン車2台分)、前日までにセンターに予約。タウシュベツ川橋梁へは林道のゲートの鍵を借りる必要があり、ツアー参加が便利。詳細はホームページで。電01564(4)2261

★ぬかびら温泉(ぬかびら源泉郷)
糠平湖の南岸にある。宿は9軒だが、源泉は24本。「湯めぐり手形」で3軒の湯に入れる。

★上士幌町鉄道資料館
士幌線の資料や運転体験ができるスクリーンなどを展示。入館料100円。11月から3月は休館。電01564(4)2041

★新得そば
新得町はそばの産地。7月下旬に通称そば街道(国道38号)を走ると、視界一面にそばの白い花が広がる。「新そば祭り」は毎年2万人でにぎわう。老舗そば処(どころ)「みなとや」=電0156(64)5745=のアベック丼などが人気。

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

旅コラム
国内
海外