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コッツウォルズ

コッツウォルズ 英国 ガリバー気分で“村”歩き

英国のベネチアともいわれるボートン・オン・ザ・ウオーター村の「モデルビレッジ」。9分の1サイズで村を再現している

英国のベネチアともいわれるボートン・オン・ザ・ウオーター村の「モデルビレッジ」。9分の1サイズで村を再現している

 ガリバーはいた。その男は、集落内を流れる川をひとまたぎにし、妻らしき女性を連れて静かに立ち去っていった。アイルランドの風刺作家ジョナサン・スウィフトによって執筆されたガリバー旅行記を連想させる光景に私は出合ったのである。

 ロンドンから北西へ100キロ。イングランドの中央部に位置する丘陵地帯・コッツウォルズは、古くから羊毛の交易で栄えた。17世紀後半には英国経済の半分を支えた。その富で築かれた蜂蜜色の石造りの古い町並みは今も健在。隆盛期に比べると廃れたものの、20世紀に入ると、のどかで味わいのある景観を生かした観光産業が盛んになり、年間を通じて多くの観光客が訪れている。

 ガリバーを見かけたのは、ボートン・オン・ザ・ウオーターという集落の村はずれ。実を言うとこの場所は「モデルビレッジ」というアトラクション。実際の村を20メートル四方ほどのゾーンに9分の1サイズで再現。オールド・ニュー・インという宿屋のご主人が地元の職人を使って5年の歳月をかけて造り、1937年のジョージ6世とエリザベス王妃の戴冠式の日にオープンしたという。

 この疑似村には川も流れ、商店もそのままに再現。教会からは賛美歌も聞こえてくる。まるで、ちいさな人々がそこで生活しているかのよう。さらにこの村の中にも、さらなるミニチュアサイズの村が存在する。絵本の中に入り込んだような感覚だった。

もとは平屋の羊毛製品の商店や倉庫だったが、屋根裏部屋を増築して“コテージ”と呼ばれる2階家にしたバイブリー村の「アーリントン・ロウ」

もとは平屋の羊毛製品の商店や倉庫だったが、屋根裏部屋を増築して“コテージ”と呼ばれる2階家にしたバイブリー村の「アーリントン・ロウ」

 コッツウォルズには、小さな村がいくつも点在する。次に訪れたバイブリー村は、英国の詩人、ウィリアム・モリスが「英国で最も美しい村」と称した。「アーツアンドクラフツ運動」を起こした彼が一時、過ごした家があり、その向かいにある「アーリントン・ロウ」は14世紀の町並みがそのまま残るコテージだ。モリスが亡くなった現代でもモリスの精神を引き継ぎ、ナショナルトラストによって管理されている。ここに暮らすのは、羊毛で栄えていたころからの子孫で、勝手に家を売ったり、貸したりもできないそうだ。村はずれにある「トラウトファーム」は1902年開業のマスの養殖場。新鮮なニジマスや薫製などが買える。

夏場には広大な敷地にラベンダー畑も。隣接するカフェでハーブティーも楽しめる=いずれも英国・コッツウォルズで

夏場には広大な敷地にラベンダー畑も。隣接するカフェでハーブティーも楽しめる=いずれも英国・コッツウォルズで

 ロンドンへの帰りにラベンダーファームに立ち寄った。広大な敷地に何種類ものラベンダーが咲き誇り、車から降りると、いい香りが漂ってくる。精油や苗も売られていた。

 最後にこれだけは言っておこう。英国に行くと言うと、決まり文句のように「食事は大丈夫?」「おいしい物はあるの?」と必ず聞かれる。でも心配はご無用。「何を食べてもおいしかった」-。自称・美食家の私が言うのだから間違いない。

 英国の代表料理の一つ「フィッシュアンドチップス」は、揚げた魚とポテトを組み合わせた料理。もちろん現地の人たちは大好きで、金曜日は「フィッシュアンドチップスの日」になっているほどだ。魚の種類によって味は異なるが、タラの一種でぷりぷりした食感の「コッド」や、ふわふわ食感の「ハドック」が日本人向け。衣にビールが入っているお店ならサクサクした仕上がりで、塩とモルトビネガーをたっぷりかけて食べるとくせになる。

 ほかにもロンドンへ戻ってから食べたローストビーフやラムチョップは軟らかくジューシーで、お皿からはみ出るほどの大きさだったが、ペロリと平らげてしまった。

 文・写真 馬目詩子

(2013年11月1日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
コッツウォルズへは、ロンドンから車で約1時間半。日本からロンドンへは、
利用する航空会社によって異なるが12~13時間ほど。

◆問い合わせ
英国政府観光庁。インターネットのホームページで見どころなどが紹介されている。

おすすめ

ラムチョップ

ラムチョップ

★バーフォード村
ロンドンから車で約1時間半。坂道沿いに500メートルほど小物のお店やレストランが並ぶ。町並みも美しい。

★マナーハウス
コッツウォルズの大半の村にある。中世に農園の管理などを任されていた貴族が敷地内に建てた屋敷を、ホテルに改装。1泊180ポンド(約2万8000円)程度で英国のカントリーライフを楽しめる。

★ラムチョップ
臭みがなく、軟らかい。昔はマトンも食されていたが、現在は、ほとんどがラム。
レストラン、パブなどでも味わえる。店によって異なるが14ポンド(約2000円)程度。

★ロンドンのマーケット
アンティークや衣類が並ぶノッティングヒル周辺の「ポートベロー・マーケット」が人気。
銀製品やアクセサリーなど掘り出し物がたくさんある。若者向け、ストリート系の古着、バッグ、ブーツなどがそろう「カムデン・ロック・マーケット」など個性豊かなマーケットを巡るのも楽しい。

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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