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ハロン湾クルージング

ハロン湾クルージング ベトナム ゆったり山水画の世界

石灰岩の岩肌と水面のコントラストの中、水上村が点在する=ハロン湾で

石灰岩の岩肌と水面のコントラストの中、水上村が点在する=ハロン湾で

 それは、まるで一幅の山水画のような、壮大で神秘的な光景だった。

 ベトナム北部、中国との国境にほど近いハロン湾は、大小3000の岩山のような島々が海から突き出るように連なる。彫刻のようなこの奇岩の数々は石灰岩の大地が長い時間をかけ、海水に洗われてできた。白い岩肌と、深いグリーンの海面のコントラストが美しい。

 1994年に世界遺産に登録されて以降、国内外から観光客が押し寄せる。首都ハノイからは車で3~4時間。湾内には観光船が行き交い、日帰りのクルーズツアーが人気らしいが、今回はちょっと豪華に2泊3日の船旅を選んだ。

 乗船したのは「アウコー号」。就航してまだ1年の新しい船で、30ほどの客室はホテルのよう。ベトナム神話の女神の名前から取ったという船名にふさわしく、真っ白な船体が印象的だ。

 「日帰りではできない、ゆったりとした旅が満喫できますよ」。女性スタッフのムイさん(23)が流ちょうな英語で胸を張った。政府は海外からの観光客誘致に熱心で、乗客の大半は欧米からの観光客。地元出身の彼女は観光の専門学校で英語を学び、この船に職を得たという。

1万平方メートルを超える広大な鍾乳洞のスンソット洞窟=ハロン湾で

1万平方メートルを超える広大な鍾乳洞のスンソット洞窟=ハロン湾で

 乗客を乗せ、船は昼すぎに出港した。初日は海上カヤックで小さなビーチのある岩島に上陸し、世界遺産の海でひと泳ぎ。夜はデッキに出て、みんなで杯を傾けた。熱帯の国らしく、ここではビールに氷を入れて飲む。

 シンガポールから建築士の夫と訪れたタンさん(62)は「クルーズが好きでいろんな国に行ったけど、ここが一番だわ。だって、こんなにおしゃべりできるなんて思わなかったもの」と笑う。少人数の船旅は、アットホームな雰囲気をもたらしてくれる。

 2日目。船の行く手に、小さな小屋がいくつも連なって見えた。ブンビエン水上村だ。漁業で生計を立て、何と800人も暮らしているという。

 その一角に上陸した。住居から顔を出していた小さな女の子とお母さんに手を振ると、笑顔で返してくれた。そのそばで子犬がほえている。「発電機でテレビも見られるし、学校もある。海の上で生まれ、海の上で一生を終えるんです」と船のスタッフが教えてくれた。

 翌日の昼前に帰港するまで、ハロン湾最大のカットバ島でサイクリングをしたり、巨大鍾乳洞のスンソット洞窟を見学したり、盛りだくさんの行程だ。

 だが、最大の魅力はやっぱりこの景観美に尽きる。朝もやにかすみ、昼の光に浮かび上がり、夕日には赤く染められる。奇岩の海は、時間の経過とともに全く違った顔を見せてくれる。「ずっと眺めていたいね」。英国から訪れた老夫婦はデッキの上で繰り返しシャッターを切っていた。

商店がひしめくハノイの旧市街地。道路が入り組み、迷宮のようだ

商店がひしめくハノイの旧市街地。道路が入り組み、迷宮のようだ

  旅の起点となったハノイでは旧市街を散策した。1000年の歴史を持つ古都の中心部は、小さな商店がひしめき、道路には、バイクがひっきりなしに行き交う。出店で買ったベトナムのサンドイッチ「バインミー」をぱくついた。静かなハロンの海とは一転、ヒトとモノにあふれたこの国のエネルギーを感じることができた。

 文・写真 森本智之

(2013年12月13日 夕刊)

メモ

◆交通
ハノイへはベトナム航空が成田、中部国際空港などから毎日、直行便を運航している。
ハノイからハロン湾へは車で。ハノイ起点のツアー利用が便利。

◆問い合わせ
ベトナム航空=電03(3508)1481。観光情報は、ベトナム政府のHPが充実。

おすすめ

アウコー号

アウコー号

★アウコー号
ハロン湾には約200のクルーズ船があり、日帰りから2泊3日までさまざまなプランがある。アウコー号は2012年就航。全長約56メートル、客室数32。2泊3日で約500米ドル~。詳細はHPで。

★バンロン自然保護区
ハノイから南へ車で約2時間、石灰岩の岩山が連なる大湿地帯が広がる。「陸のハロン」といわれる景勝地で、竹製の手こぎ舟で遊覧できる。水面や岩山との距離が間近で、ハロン湾とは違った趣がある。

★水上人形劇
ベトナム北部で1000年近く続く伝統芸術。かつては農閑期の娯楽として村ごとに池などで行われたが、ハノイ市中心部に劇場が整備され、観光スポットになっている。伝統楽器の生演奏に合わせて、水面上を人形がコミカルに動き回る。ベトナム語のせりふが分からなくても十分、雰囲気を楽しめる。

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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