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東北レストラン列車

東北レストラン列車 青森・八戸-岩手・久慈 流れる風景「三陸」味わう

海岸を走る「TOHOKU EMOTION」。左は「日本の灯台50選」にも選ばれている鮫角(さめかど)灯台

海岸を走る「TOHOKU EMOTION」。左は「日本の灯台50選」にも選ばれている鮫角(さめかど)灯台

 青森県八戸市の東北新幹線・八戸駅で降り、在来線の駅へ向かうと、白い3両編成の列車が待っていた。JR東日本はこの秋、八戸-久慈(岩手県)間に、ランチのコースと太平洋の大海原を一緒に楽しめる列車を誕生させた。東北復興への思いを込め、その名も「TOHOKU EMOTION(東北エモーション)」。調理過程を見られるライブキッチンや個室をしつらえ、ちょっとした“動く豪華レストラン”である。旅への期待でワクワクしながら、乗り込んだ。

 八戸駅を出発すると、海側に蕪島(かぶしま)と蕪嶋神社が見えてきた。赤の鳥居と社殿、海の青さが鮮やかだ。さらに欧州の城塞(じょうさい)を思わせる石壁に囲まれた葦毛崎(あしげざき)展望台の付近にさしかかると、列車は「撮影をどうぞ」とばかりに、しばらく停止した。

 と、目の前にウナギにキャビアが載った突き出し。器は大館(秋田県)の曲げわっぱ。これで高畠(山形県)ワインも青森のシードル(リンゴの発泡酒)もビールも、「お好きなだけ」とあっては、いくらでも飲めてしまう。

車内のキッチンでランチの準備をするスタッフら

車内のキッチンでランチの準備をするスタッフら

 岩手産のエゾアワビや宮城産のホタテを使った前菜5品の盛り合わせ。メーンは牛ほほ肉の煮込み。生キャラメルなど6種のデザート・・・と続くメニューは、ミシュランで星を獲得している東京・銀座の「アロマフレスカ」のシェフ原田慎次氏の監修だ。これに三陸の自然が織りなす風景が、ワインよろしく合わせられる。

 久慈までの約1時間40分では味わい切れない人もいるようで、「終点でも“まだ降りたくない”と名残惜しそうな方がいらっしゃいます」とEMOTION支配人の関裕次さん(44)。

 思いは同じ。再訪を期したが、来年3月までほぼ満席だという。久慈には約1時間15分いて、午後2時すぎに八戸を目指して出発した。久慈駅では、出発時に地元の住民が大漁旗を振って見送ってくれた。復路はランチの代わりに、デザートのビュッフェになる。

 八戸に戻ると、天候が急変し、夜には雪が舞った。日が暮れて、八戸港に揚がった魚介類や、今やB級グルメとして全国的に有名な「八戸せんべい汁」を酒肴(しゅこう)に、「ロー丁(ちょう)れんさ街」で雪見酒を楽しんだ。

観光客らでにぎわう陸奥湊駅前市場=いずれも青森県八戸市で

観光客らでにぎわう陸奥湊駅前市場=いずれも青森県八戸市で

 翌朝、陸奥湊駅(八戸市)の駅前朝市で腹ごしらえ。1人前用にさばかれた、多種多様の刺し身が所狭しと並ぶ。4種のミックスを選び、ご飯としじみ汁で550円。地元の人によると「安いのでつい買いすぎて食べ切れない人もいます」とのこと。

 食後は早朝から営業する銭湯へ。湯船に入り、旅を振り返ると、出会った人の顔が次々と浮かんできた。カメラを向けると「きれいに撮ってね」とポーズを決めた横丁の居酒屋の“おねえさん”コンビ。朝市で買った魚の名前を忘れ、慌てて聞きに行ったら、丁寧に「これはカレイ、隣はカジキマグロ・・・」と教えてくれた「イサバのカッチャ」(方言で「魚売りのお母ちゃん」)・・・。みんな、ほほ笑んでいた。

 最低気温が零度を切る寒気の中でも、体のぬくもりが増したのは、朝風呂に長くつかったせいばかりではあるまい。

 文・乙部淳悟
 写真・仲田美歩

(2013年12月27日 夕刊)

メモ

地図

◆TOHOKU EMOTION
土日祝日を中心に1日1往復運転中。八戸駅発午前11時5分→久慈駅着午後0時49分、久慈駅発午後2時8分→八戸駅着同3時47分。往復(ランチコース・デザートビュッフェ付き)大人1万600円。個室利用は、片道3000円追加。東京からのツアー商品がある。来年3月まで予約はいっぱい。同4月以降のツアー商品は同1月下旬に発売予定。詳細はJR東日本のホームページで発表する。 

◆交通
八戸までは東京から東北新幹線で約3時間。久慈駅へはJR八戸線の普通列車で約2時間。

◆問い合わせ
八戸市観光課=電0178(46)4040。久慈広域観光協議会=電0194(53)5756。

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葦毛崎展望台
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★まめぶ汁
久慈市の郷土料理「まめぶ汁」は、クルミや黒砂糖を包んだ団子(まめぶ)を、野菜や焼き豆腐などと一緒に昆布と煮干しのだしで煮込んだもの。店の紹介はホームページで。

★種差海岸
葦毛崎展望台がある種差海岸は蕪島の南東約12キロ、波打ち際まで天然の芝生に覆われた草原や鳴き砂の白浜、奇岩が点在する。今年5月に三陸復興国立公園に指定された。

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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