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渡良瀬遊水地

渡良瀬遊水地 栃木県など 野鳥の楽園彩る夕空

人気があるハイイロチュウヒの雄

人気があるハイイロチュウヒの雄

 東京から電車で約1時間。栃木、群馬、茨城、埼玉の県境に広大なヨシ原が広がる。その名は渡良瀬遊水地。面積約33平方キロ、日本最大級の遊水地だ。ここは2012年、国際的に重要な湿地を保全するラムサール条約に登録された。冬の定番観光の1つは、バードウオッチング。タカ類のハイイロチュウヒの撮影を目的に向かった。

 渡良瀬遊水地は日の出の景色も見逃せない。夜明け前、北エントランスと呼ばれる入り口近くの堤防の上で日の出を待った。日の出30分前、地平線付近の空の光と色が美しく変わってきた。刻々と紫やだいだい、黄、赤に変幻した。地球の鼓動を感じる。大湿地帯の空が見せる冬の絶景だ。厳しい寒さだが、至福を感じるひとときである。ここは春から初夏、晩秋に川霧が現れるビューポイントだが、冬は北風が強くて発生しにくい。

 午前9時半にゲートが開き、まず田中正造ゆかりの「谷中村史跡保全ゾーン」に足を踏み入れた。ヨシ原に住居跡の木立と古道が今も残る。延命院跡に小さな鐘があり、たたくと深い響きが村跡に広がった。

 明治時代、足尾銅山鉱毒事件が発生し、国は鉱毒を沈殿させるための遊水地を造った。政治家の田中正造は村民とともに闘ったが、住民約2500人は離散。谷中村は廃村に。歴史をしのばせる共同墓地が湖畔にあり、手を合わせた。

谷中村跡に残る延命院跡の参道と共同墓地

谷中村跡に残る延命院跡の参道と共同墓地

 バードウオッチングのため、谷中村跡から約2キロ北東の谷中橋付近に向かう。

 待つこと約2時間。午後4時15分すぎ、翼を広げると1メートル近いハイイロチュウヒの雄がヨシ原のねぐらに戻ってきた。昼間は遊水地周辺の農耕地でネズミ、小鳥などの狩りをしている。ねぐら入り前、ヨシ原を飛び回る習性がある。近くを飛んだ時、隣の観察者たちから「すごい。やったー」と歓声が上がった。翼の上面は灰色で下面が白。翼の先端は黒い。何度見ても美しいタカだ。

 長年にわたり観察を続けている日本野鳥の会会員の内田孝男さん(62)は「ハイイロチュウヒの雄は5羽も。全国的に数が少なく、1カ所に雄5羽は珍しい」と話した。そのため全国の野鳥愛好家の人気スポットになっている。

 ハイイロチュウヒのほかに絶滅危惧種のチュウヒ約40羽もこの付近のヨシ原をねぐらにしている。

冬の夕焼けがヨシ原上空に広がった時、カワウの群れが通り過ぎた。手前はハイイロチュウヒのねぐら入りを撮る野鳥ファンと車=いずれも栃木県栃木市の渡良瀬遊水地で

冬の夕焼けがヨシ原上空に広がった時、カワウの群れが通り過ぎた。手前はハイイロチュウヒのねぐら入りを撮る野鳥ファンと車=いずれも栃木県栃木市の渡良瀬遊水地で

 この日は美しい夕焼けが現れそう。堤防に上がり、ハイイロチュウヒが飛び回るヨシ原を望むことにした。観察者の車が等間隔で並ぶ。ずらり約20台も。ヨシが高いので、5段脚立や高い踏み台に上がってカメラを構える姿がユニークだ。

 目の前をコチョウゲンボウとノスリが飛んだ。ねぐらに向かうカワウの大群も次々と現れた。数百羽に達しただろうか。

 日没後、秩父山地上空の夕焼けが色を深く染めた。地平線には、富士山がシルエットで現れた。厳しい寒さで、北風も強い。その分、夕焼けが鮮やかに感じられた。冬の渡良瀬は、いつ行っても、新鮮な感動がある。

 1990年から自然保護の活動をしている「渡良瀬遊水池を守る利根川流域住民協議会」の猿山弘子さん(74)は「広大なヨシ原を自然と歴史を学ぶ野外博物館(エコミュージアム)にしたい」と将来を語っていた。

 文・写真 堀内洋助

(2014年1月24日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
谷中村史跡保全ゾーンへは東武日光線・板倉東洋大前駅から徒歩30分。車は東北自動車道・佐野藤岡ICから約20分。車は北エントランスから入る(谷中村跡の前にゲートがあり、12~2月の開門は午前9時半~午後4時)。

◆問い合わせ
渡良瀬遊水地アクリメーション振興財団=電0282(62)1161。開門時間など詳細はホームページで。

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渡良瀬に春を告げるヨシ焼き
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★足尾鉱毒事件田中正造記念館
正造と鉱毒事件の貴重な資料や写真、パネルなどを展示。群馬県館林市の「歴史の小径(こみち)」地区にある。開館は火、木、土、日曜の午前10時~午後4時。入場無料。電0276(75)8000

★田中正造旧宅
栃木県佐野市にあった正造の生家を保存して公開している。県指定史跡。開館は火、木、土、日曜の午前10時~午後4時。一般300円、高校生以下無料。電0283(24)5130

★ヨシ焼き
渡良瀬に春を告げるヨシ焼き。昨年、3年ぶりに実施された。今年は3月15日午前8時半スタート。荒天の場合の予備日は21日と22日。栃木市藤岡総合支所都市建設課=電0282(62)0908

★川霧
乳白色の霧がヨシ原に漂う日本屈指の幽玄な風景。朝日を浴びて色が変幻する。早春から初夏と晩秋が規模が大きい。日の出前後に発生する。条件は晴れて冷え込み、湿度があり無風。

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