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霧島

霧島 鹿児島県 霧氷の韓国岳 雲の中

朱塗りの社殿が美しい霧島神宮。天照大神が地上を統治するため派遣した孫のニニギノミコトがまつられている

朱塗りの社殿が美しい霧島神宮。天照大神が地上を統治するため派遣した孫のニニギノミコトがまつられている

 鏡のような湖に映る、青い空と真っ白な霧氷。数年前、雑誌で見た美しい写真の景色を求めて、鹿児島県の霧島に向かった。

 まずは、旅の安全を祈りに霧島神宮へ。かつては高千穂峰の近くにあったのが、噴火で焼失を繰り返し、500年ほど前に今の場所に移ったとか。現在の建物は300年前のもの。朱塗りの本殿に色鮮やかな彫り物がかわいらしい。

 すてきな出会いがあるようにとお願いして振り向くと、大きな杉の木が目に入った。樹齢800年、高さが38メートルもある立派なご神木。吸い寄せられるように近づくと、神職の青木信市さん(63)とばったり。せっかくだからと、木の反対側に連れて行ってくれた。

 「ほら、あそこ」。指さした先を見ると、枝の上に小さく出っ張った部分が見える。「トトロがいるでしょ」と笑う青木さん。確かに、小さなトトロがちょこんと立っているよう。今度はこっちと案内され、「しゃくを持って法衣を着てる人。分かるかな?」とにっこり。早速、御利益をもらったような気持ちになった。

大浪池の湖畔から望む韓国岳。上方は、真っ白な霧氷に覆われていた

大浪池の湖畔から望む韓国岳。上方は、真っ白な霧氷に覆われていた

 翌朝は、登山口から大浪池へ向かう。あいにくの天候。雪がチラチラ舞っているし、風もきつい。山の天気は分からないからと自分に言い聞かせ、祈るような気持ちで一歩ずつ進んだ。風が静まり、木の葉の揺れる音、鳥のさえずりに、心がなぐ。緩やかな登り道を30分ほど行くと、大浪池に到着した。

 まん丸で鉢のような形をした火口湖。ここから霧島連山最高峰の韓国岳(からくにだけ)(1700メートル)を望むアングルが、ずっと見たかった景色だ。しかし、韓国岳には厚い雲がかかったまま。風の流れは速いけれど、なかなかすっきり姿を見せてくれない。霧氷も、まだ湖までは下りていなかった。

 「願いは届かなかったか・・・」とがっかりしていると、東京から来たご夫婦が「桜島はきれいに見えますよ」と声をかけてくれた。2人は悪天候で韓国岳への登山を諦めたそうだ。「また来る楽しみをもらったと思えば」と穏やかな笑顔に、霧島神宮のご神木がふと頭に浮かんだ。ものは考えようだ。「でも・・・」と諦めきれず1時間ほど粘ったが、結局、振られたままだった。降る雪に太陽の光が反射して、キラキラと黄金色に輝く。憧れていた眺めではなかったものの、壮大な景色は十分、楽しめた。

渓流を眺めながら楽しむ露天風呂=いずれも鹿児島県霧島市で

渓流を眺めながら楽しむ露天風呂=いずれも鹿児島県霧島市で

 冷えきった体を温めようと、妙見温泉にある妙見石原荘の立ち寄り湯へ。渓流沿いの露天風呂にゆっくりつかり、約1時間の軽いトレッキングでもつらかった、運動不足の体をいたわった。お湯は敷地内で自噴していて、わき出る湯を空気に触れさせず浴槽まで引いているそうだ。おかげで体の芯までぽっかぽかになった。

 お風呂のあとは、黒豚、黒酢、黒砂糖など、地元の食材にこだわった食事も堪能。昨年4月からワーキングホリデーに来ているという台湾人の陳盈臻(ちんえいしん)さん(24)が、サービスを担当してくれた。「霧島は四季折々の自然が本当にすばらしい。紅葉もすてきですよ。また来てください」と言う陳さんの笑顔に見送られ、もう一度、霧島神宮に向かった。まずは旅の無事のお礼を伝え、「次は、次こそは・・・」といろいろ欲張りなお願いもしてしまった。

 文・写真 伊藤章子

(2014年1月31日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
大浪池登山口へは、JR霧島神宮駅からバスで約1時間。霧島神宮駅へは、鹿児島中央駅から約1時間。鹿児島空港から霧島神宮駅へは、バスを利用。国分駅で乗り換え約1時間10分。

◆問い合わせ
霧島市観光協会=電0995(78)2115、妙見石原荘=電0995(77)2111

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※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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