【本文】

  1. トップ
  2. 旅だより
  3. 知恩院三門
知恩院三門

知恩院三門 京都市 堂々 400年の時を超え

楼上の二層部分が特別公開されている知恩院三門

楼上の二層部分が特別公開されている知恩院三門

 「極楽浄土へよくおいでくださいました」-。きしきしと音を立てる急勾配の木造階段を上がり楼上に入ると、暗闇の中で柔らかな観光ガイドの声に迎えられた。予想外に暗い。懐中電灯の光に照らされ、宝冠釈迦(しゃか)如来像が丸く浮かび上がってきた。

 京都市の洛東エリアにある知恩院は、浄土宗の総本山。徳川家康が永代菩提(ぼだい)所にしていたことから、長く将軍家に保護されてきた。2代将軍秀忠は1621年、高さ約24メートル、幅約50メートルの三門を建立した。木造の門としては世界最大級といわれ、国宝にも指定されている。三門は現在、3月18日までの期間限定で特別公開されている。普段は入ることのできない二層部分へ入れると聞いて訪れた。

 「お釈迦様は王子のまま、仏様になられたので王冠をかぶっています」。ガイド歴7年目という京都SKY観光ガイド協会の小坂守さん(70)は、如来像の冠に光を当てながら、よどみなく話し続ける。

楼上からは金閣寺や京都御苑などが一望できる

楼上からは金閣寺や京都御苑などが一望できる

 光の輪がゆっくりと、天井に描かれた麒麟(きりん)の上へ滑った。「こちらの麒麟は、動物園にいるのでなく、みなさまの冷蔵庫にいる麒麟です」。あちこちからくすくすと笑い声が上がり、闇の中で緊張していた周りの空気が、ふとゆるんだ気がした。

 「この羅漢様は、天井から滴る雨に当たり続け、色白になってしまいました」「この方はお釈迦様の息子で、正面を向かず、ずっとお父さんを見ています」。小坂さんがユーモラスに仏像を紹介していく。スポットライトを当てられた仏像は、光の加減か、静かな微笑の口元に恥ずかしげな表情を忍ばせているように見えて、何だかかわいらしい。

 目が慣れてくると、宝冠釈迦如来像の周りがとてもにぎやかなことに気付いた。両側には脇侍像、後ろには弟子の十六羅漢がはべっている。天井には、建物を火事から守る水神である飛龍(ひりゅう)。美しい鳴き声を持つ下半身が鳥の姿の迦陵頻伽(かりょうびんが)。金色の雲になまめかしい笑みをたたえた天女。柱には、しゃちほこの原型となったマカラという青い顔をした怪魚までいる。まさに極楽浄土だ。

 小坂さんに「特別公開なのに、どうして真っ暗な中で仏様や絵を見せるのですか」と尋ねてみた。暗闇も神秘的な雰囲気でいいが、明るければもっと楽しめるのに、と思ったからだ。だが、「光に当たると、絵が全部消えてしまうんですよ」と聞いてはっとした。こうした人々の心遣いで、この国宝は400年の時を超えて、今も拝観できるのだ。

嵐山の渡月橋や竹のトンネルなどを巡る人力車=いずれも京都市内で

嵐山の渡月橋や竹のトンネルなどを巡る人力車=いずれも京都市内で

 せっかく京都に来たのだから、好きな嵐山にも立ち寄ってみよう。渡月橋の前から30分間貸し切りのコースで人力車に乗った。このあたりは昨年、台風で洪水被害を受け、今もあふれた川の水の跡が飲食店などの壁に残っていた。しかし、洪水の5日後には従業員らの努力で店を再開し、観光客を受け入れたと聞いた。

 風よけや毛布があるので真冬でも寒くなく快適だ。人力車を引く俥夫(しゃふ)さんの案内を聞きながら、源氏物語の舞台にもなった、日本最古の様式の黒木鳥居がある野宮(ののみや)神社や竹のトンネル、地元の人たちの暮らしが垣間見える路地裏などを巡ってもらった。いつ来ても京都はいいなあと満足した。

 文・写真 平木友見子

(2014年2月28日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
知恩院へは、JR京都駅から市バスに乗り知恩院前で下車、徒歩約5分。タクシーだと京都駅から約15分。

◆問い合わせ
京都市観光協会=電075(752)7070

おすすめ

方丈前庭

方丈前庭

★第48回京の冬の旅 非公開文化財特別公開
知恩院三門、妙心寺龍泉菴(りょうせんあん)など15カ所を3月18日(一部を除く)まで特別公開中。場所、時間、拝観料など詳細は京都市観光協会のホームページで。京都市内の観光には市バス・市地下鉄などが1日乗り放題になる「京都フリーパス」が便利。

★知恩院
知恩院は午前9時~午後4時半(受け付け4時まで)だが、特別拝観の三門は午前10時~午後3時40分(受け付け終了)。特別拝観料800円。三門に上がるには、門の下にある受付に申し出る。知恩院については同院のホームページで。知恩院布教部=電075(531)2157

★妙心寺
右京区にある臨済宗妙心寺派の大本山。龍泉菴をはじめ、聖澤院(しょうたくいん)、大法院の3塔頭(たっちゅう)が特別公開中。龍泉菴は方丈前庭も見学できる。龍泉菴は特別公開期間中の2月28日、3月1、2日は拝観中止。

近畿の宿泊情報

一覧

    現在この情報はありません。

近畿のツアー情報

一覧

    現在この情報はありません。

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

旅コラム
国内
海外