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室戸岬

室戸岬 高知県 自然の不思議集積

海底の地層が隆起し、ごつごつとした岩場が連なる室戸岬。室戸岬灯台は、後方の山の上にある

海底の地層が隆起し、ごつごつとした岩場が連なる室戸岬。室戸岬灯台は、後方の山の上にある

 隆起してむき出しになった海底の地層、強風が創り出した奇形植物-。2011年、市内全域が自然に親しむ公園「世界ジオパーク」に認定された高知県室戸市を訪ねると、至る所で自然の驚異、不思議に出合える。その集積地ともいえるのが室戸岬だ。

 四国の東南部に突き出た室戸岬は、日本本土に上陸した台風としては観測史上最も中心気圧が低く、甚大な被害をもたらした室戸台風(1934年、911.6ヘクトパスカル)でも知られる。幕末の志士・中岡慎太郎の銅像がそびえる岬の先端には、荒波に浸食された巨岩が点在していた。

 幾重にもなった海底の地層は、地殻変動で持ち上げられ、垂直になっている所も。泥の層にはシオギクなどの希少植物が根付いている。強い風をしのぐため、背丈を低くした林は、亜熱帯性植物のクワズイモが所々に生え、ジャングルの様相。しばらく歩くと、アコウの巨木が大きな岩に気根を巻き付けていた。樹高は6メートルほどだが、枝はタコ足のように、くねくねと十数メートル四方に広がっている。年輪がないので樹齢は分からないそうだが、地元の女性が「40年ほど前まで木の下に喫茶店があったきぃー、それ以上は間違いないです」と土佐弁交じりで教えてくれた。

亜熱帯植物のアコウが気根を岩に巻き付け、大きな枝を張っていた

亜熱帯植物のアコウが気根を岩に巻き付け、大きな枝を張っていた

 ここから1キロほど徳島県寄りに行くと、およそ1200年前、若き日の弘法大師が修行したとされる神明窟(しんめいくつ)が海岸沿いにあった。波の浸食でできた神明窟は、現在は修行当時よりも隆起し海面から10メートルほど上にある。間口7~8メートル、奥行き10メートルほどの窟から外を眺めると、どこまでも続いていそうな青い空と海が広がり、「空海」と名乗った訳が分かったような気がした。

 標高約155メートルの高台にある室戸岬灯台と、さらにその上の高岡園地展望台では、300度以上の超広大パノラマが待っていた。「地球は丸いことが分かるでしょう」。そばにいた女性のささやき通り、はるかかなたの水平線は、緩やかな弧を描いていた。

若者の働き場づくりを目指して土佐備長炭を焼く黒岩辰徳さん=いずれも高知県室戸市で

若者の働き場づくりを目指して土佐備長炭を焼く黒岩辰徳さん=いずれも高知県室戸市で

 漁業以外に、これといった産業のない室戸市だが、近年、若い世代の奮闘で盛り返している地場産業がある。市内吉良川町にあるリーダー黒岩辰徳さん(34)の土佐備長炭作業場を訪ねた。黒岩さんは「働き場がなく、ふるさとに残りたくても残れない若者の受け皿をつくりたかった」と会社員を辞め、2年間修業した後、7年前から本格的に炭作りをしている。

 若い弟子6人とともに周辺の山々からウバメガシとカシの木を切り出し、3基の窯で焼いている。窯に入れてから、およそ20日間がかりで作る備長炭は、飲食業界からの注文が相次ぎ、生産が追い付かない状況という。「自立した弟子は、まだ一人だけ。もっと仲間を増やし、伝統ある土佐備長炭の生産地にしたい」と“夢の炎”を燃やし続ける。

 高知県(土佐)といえば、坂本龍馬や三菱財閥の創始者・岩崎弥太郎らの名前が浮かぶ。その足跡も訪ねたかったのだが、それよりも会いたい人がいた。それは、男勝(おとこまさ)りで負けん気が強く、きっぷのいい「はちきん」と呼ばれる女性。大衆食堂で、隣に居合わせた60代の女性に話し掛けると、まさしくそうだった。どんな話題もOKで口達者。いきなり「土佐は共稼ぎが多いから、男は掃除、洗濯もしないと捨てられるよ」と水を向けてきた。「ごみ出しは今でも・・・。洗濯もたまにはしています」と答えると、「土佐に来たら、拍手もの」とお褒めをいただいた。気を良くして話し込んでいたのだが、気がつくと、すっかり「はちきん」のペースに乗せられていた。

 文・写真 富永賢治

(2014年3月7日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
高知県へは、名古屋小牧空港から、高知龍馬空港へフジ・ドリーム・エアラインズ(FDA)の直行便がある。所要時間は約1時間。早期予約すると料金は片道7000円程度。申し込みはFDAのホームページ。FDAコールセンター(午前7時から午後8時まで、年中無休)=電(0570)550489。羽田空港からの直行便もある。室戸岬へは、空港から車で約1時間50分。電車は、JR高知駅で土佐くろしお鉄道に乗り換え、奈半利駅まで約1時間30分、さらにバスに乗り換え約30分。

◆問い合わせ
室戸市観光協会=電0887(22)0574、高知県観光コンベンション協会=電088(823)1434

おすすめ

和風そば・中日(ちゅうにち)

★シレストむろと
海洋深層水100%の温浴施設。サウナやレストランもある。入館料1300円。第2水曜(祝日の場合は翌日)休館。電0887(22)6610

★和風そば・中日(ちゅうにち)
シラスのゆで汁を、酒、みりん、かつおだしで調味。中華麺と和風だしを使うことから、この名が付いた。高知市から室戸市へ向かう途中の香南市赤岡町を中心に提供する店がある。シラス、さつま揚げ、とろろ昆布、すまき(なると)などが具として載せてあり、300~600円程度で食べられる。味は、あっさり。

★中岡慎太郎館
室戸市に隣接する北川村にある。坂本龍馬とともに取り組んだ薩長同盟や生きざまを紹介。再現された生家もある。入館料は一般500円、小中学生300円。火曜(祝日の場合は翌日)休館。電0887(38)8600

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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