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気仙沼大島

気仙沼大島 宮城県 震災に耐えて輝く海

亀山からは360度見渡せる。養殖カキのイカダが並ぶ静かな海に、漁船が白い航跡を描いた

亀山からは360度見渡せる。養殖カキのイカダが並ぶ静かな海に、漁船が白い航跡を描いた

 海はいのちのみなもと 波はいのちのかがやき 大島よ 永遠にみどりの真珠であれ

 東北地方で有人離島としては最大級の宮城県気仙沼市の大島。詩人で児童文学者の水上不二(みずかみふじ)(1904~65年)は、故郷の大島を「緑の真珠」と呼んだ。

 その姿は、気仙沼港からの船が着く「浦の浜」の北、亀山(235メートル)で1望できる。島に着いた午後一番で、雪が残る山頂に立った。

 リアス式海岸の複雑な曲線でかたどられた海は、早春の日差しの強弱でさまざまな青に輝く。養殖ワカメの浮玉や養殖カキのイカダの脇を、漁船が白い航跡を描いていた。島を覆う深い緑には、3月末から4月にかけてツバキの赤が加わるという。

 だが、浦の浜と東側の田中浜を結ぶ平地の帯に、土色がむき出しになっているのもよく見えた。ちょうど3年前の東日本大震災。10メートルを超す大津波は、この帯を往復し島を分断。家々を流し去り、33人の命を奪った。

アツアツの鉄板でカキを蒸し焼きにする休暇村のスタッフ

アツアツの鉄板でカキを蒸し焼きにする休暇村のスタッフ

 島出身の村上正人さん(44)と島内を巡った。過去の津波の記録を刻んだ石碑を見つけた。明治三陸地震(1896年6月15日)と昭和三陸地震(1933年3月3日)の被害記録の横に「大地しん それ つなみ」と大きな字で彫ってあった。記録はないが、島が津波で3つに分断されたという話も伝わる。

 遠浅の美しい砂浜で「快水浴場百選」に選ばれた小田(こだ)の浜。地盤沈下で少し小さくなったが、宮城県でただ1つ、震災の翌夏に海水浴場が再開できた。がれきや小さなガラスの破片まで丁寧に取り除いた大勢のボランティアの功績という。「本当にありがたいこと」と、村上さんは何度も繰り返した。

 3カ所の仮設住宅で続く不自由な生活。なかなか決まらない高台への集団移転。震災の傷が深い緑の真珠を、今もボランティアなど全国からの来客が支える。宿泊した「休暇村気仙沼大島」はボランティアに来た新潟や東京の若者たちでにぎやかだった。

ワカメの天日干しをする人たち=いずれも宮城県気仙沼市の大島で

ワカメの天日干しをする人たち=いずれも宮城県気仙沼市の大島で

 島の自慢は海の幸だ。春の味といえばワカメ。しゃぶしゃぶの鍋でさっとゆがくと鮮やかな緑色になる。軟らかく、ほんのりと塩が香る。メカブも格別。食堂では、カキを殻ごと鉄板で蒸し焼きにしてくれた。ふっくらした身の軟らかさに驚く。フカヒレの軟骨空揚げ、カツオのハラス(腹部)あぶり焼き、メカジキねぎま鍋・・・。どれも気仙沼の食材だ。震災による壊滅的な打撃をはね返す、漁師たちの心意気が食卓にあふれる。

 毎週土曜日の夕食後、休暇村では近所のユズ農家小山(おやま)由紀子さん(63)が宿泊客に震災の話をしている。小山さんや息子らは津波から九死に一生を得たが、多くの友人や親類を亡くした。

 小山さんの体験談には、「何としても生きて」との訴えがこもっていた。昨日のことのようにも、遠い昔のことのようにも思えるという震災を、「もう3年 被災地の春 まだ3年」と詠む小山さん。「命ある者として、語り継ぐことが使命」と言った。既に何100人もの宿泊客が耳を傾けたという。

 島を離れる前に、ワカメの水揚げや天日干し作業を見せてもらった。日焼けした島の人たちの笑顔に、震災を生き抜く「いのち」を感じる。水上不二の詩が、心に響いた。

 文・写真 五十住和樹

(2014年3月14日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
気仙沼大島へは東北新幹線・一ノ関駅でJR大船渡線に乗り換え気仙沼駅へ。気仙沼港(エースポート)から大島汽船の旅客船、フェリーに乗り約25分で浦の浜港へ。島には旅館と民宿が約20軒ある。気仙沼へは仙台駅から高速バスもある。

◆問い合わせ
気仙沼大島観光協会=電0226(28)3000、大島汽船=電0226(23)3315

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漁師の「瓶玉」づくり

★十八鳴(くぐなり)浜
島名は大島だが、他の大島と区別するため、気仙沼大島と呼ばれることが多い。島北東部にある石英粒の砂浜「十八鳴浜」は国の天然記念物。砂を踏むと「キュッキュッ」と音が鳴る。

★観光協会主催の野外体験
カキやホタテなどの養殖を船から見学し、漁師から説明を受ける90分のツアーは、2人以上で1人2000円から。3月まではワカメのお土産付き。5~10月は地引き網体験、7~9月はシーカヤック体験なども。事前に気仙沼大島観光協会に申し込む。

★漁師の「瓶玉」づくり
マグロはえ縄漁や定置網で使っていたガラス製浮玉を包む縄を編む。玉の直径は約10センチ。漁場では今、ポリエチレン製を使っているが、講師を務める元漁師小松忠男さん(63)は「昔は遠洋へと出航した船の上で、コールタールに浸した縄を手際良く編んだものです」。2人以上、材料費込み1500円、約90分。問い合わせは気仙沼大島観光協会へ。

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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