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南リアス線をたどる

南リアス線をたどる 岩手県 希望運ぶ復興の“三鉄”

1両編成のかわいい列車が行き交う三陸鉄道南リアス線の三陸駅=岩手県大船渡市で

1両編成のかわいい列車が行き交う三陸鉄道南リアス線の三陸駅=岩手県大船渡市で

 鉄道は人や荷物を運ぶだけでなく、夢と希望を与えてくれる。東日本大震災の被災地・岩手を旅して、あらためて思い知った。
 
 震災から丸3年が経過した、ことしの4月5日、三陸鉄道南リアス線の全線で運行が再開した。“三鉄”と呼ばれ住民に愛される鉄道だが、経営状況は厳しい。利用者を増やすことが第一なのだが、沿線の人口は減少、多くの住民は駅から遠い高台に転居している。赤字路線を応援するためにも、鉄道に乗って旅を楽しみたい。
 
 南リアス線の起点、岩手県釜石市は日本の鉄産業をリードしてきた土地であり、サケ、ラグビーの街としても知られる。釜石駅に降り立つと広大な土地にデーンと構える工場が見えた。新日鉄住金・釜石製鉄所だ。製鉄業が隆盛だった時代を思い起こさせるほどの大きな建物。地元では「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域」(8県11市)として2015年の世界遺産登録を目指している。
 

釜石駅構内に設置されたラグビーボールのモニュメント=岩手県釜石市で

釜石駅構内に設置されたラグビーボールのモニュメント=岩手県釜石市で

 製鉄の街、釜石には大きな思い入れがある。それは日本選手権7連覇を達成した伝説のチーム「新日鉄釜石ラグビー部」があったからだ。1970~80年代、重厚感と土くささが魅力のチームはまさに「北の鉄人」だった。その歴史と誇りは01年4月、新しいクラブチーム「釜石シーウェイブスRFC」に引き継がれた。現在のメンバーは新日鉄社員以外にも門戸は開かれている。

 「仕事も住居もみんな釜石。地元に支えられているという思いは同じ」とチームの事務所で出会ったゼネラルマネジャー小原崇志さんが話してくれた。彼もまた明治大時代から新日鉄釜石にあこがれていた一人だ。
 
 南リアス線が復旧した日、釜石駅構内に巨大なラグビーボールのモニュメントが誕生した。ユニホームを着た猫たちは釜石シーウェイブスRFCの選手にどことなく似ていて、かわいらしい。駅にやってきた大人も子どもも触っていく。心和む場所ができあがったようだ。
 

 

仮設店舗で焼き鳥などを調理する千葉健児さん=大船渡市で

仮設店舗で焼き鳥などを調理する千葉健児さん=大船渡市で

 釜石市から南下して、大船渡市に入った。震災の被害は大きかったが、自然豊かな景勝地の美しさは今も変わらない。三陸復興国立公園にある碁石海岸は、切り立った岩壁と、3つの穴が開いた穴通磯(あなとおしいそ)が見もの。海岸の石は真ん丸でつるつる、“碁石”そのものだった。
 夜、大船渡港近くのホテルから歩いて夕食に向かったが、ネオンの光はなかった。電柱の小さな明かりを頼りに整地が進む街を歩くこと数分、「大船渡屋台村」に着いた。屋台村には仮設の店が約20軒並ぶ。沖縄料理、田舎料理、ラーメン、焼き鳥。看板を眺めながら「焼鳥処(どころ)おや爺(じ)」に決めた。店の中はカウンターだけで詰めて座っても7、8人の小さな店だ。すでに店主、千葉健児さん(50)の高校時代の後輩がビールを飲んでいた。忙しい千葉さんに代わって、後輩が現地の状況を説明してくれた。
 
 千葉さんは震災前まで大船渡駅の近くで居酒屋を開いていた。「鍋がうまかったんだよ。でもこの店じゃ、鍋ができるスペースがないよ」。今は焼き鳥、自家製ポテトコロッケ、豚の角煮、鶏の空揚げなどが主。焼き鳥は1本100円。皮、鶏軟骨、せせり、ねぎまも。おいしさから、ついつい食べ過ぎてしまった。
 
 千葉さんは震災直後、土砂の取り除き作業などに従事。体重は20キロも落ちた。そして2年半前、焼き鳥店で再出発した。「物資は整ってきたけど、心のケアが必要な時期かもしれない」。その言葉には、寂しさと無念さがにじんでいた。

 文・写真 神納美桜子

(2014年5月2日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
釜石市へは、東北新幹線・新花巻駅からJR釜石線快速で94分。車は東北自動車道・盛岡ICから遠野経由で約115分。飛行機はFDAの愛知県営名古屋空港発、いわて花巻空港着が便利。三陸鉄道南リアス線は釜石駅から盛(さかり)駅まで57分。乗車料金は大人1080円。
 
◆問い合わせ
岩手県名古屋事務所=電052(252)2412

おすすめ

三陸海宝漬の乗った丼

三陸海宝漬の乗った丼

★まんぷく食堂
釜石駅前の海鮮市場「サン・フィッシュ釜石」の2階にあるレストランで、海宝漬(づけ)で知られる海鮮料理店「中村家」の姉妹店。
焼きウニとホタテのコロコロ丼(1850円)、イクラのしょうゆ漬けとホタテのシコシコ丼(1850円)が人気。軟らかく煮たアワビ、イクラ、メカブを使った三陸海宝漬を丼にのせて味わう定食は刺し身、煮物付きで2500円。
開店の午前11時半には行列ができる。
電0193(22)2255

★貝殻の絵馬
ホタテの産地、小石浜をPRし地域と三陸鉄道を盛り上げたいという住民の願いを受けて、三陸鉄道の無人駅・小石浜駅は2009年7月、「恋し浜駅」に改称された。
駅を訪れた人は誰でも絵馬(ホタテの貝殻)に願いを書いてつるすことができる。
三陸鉄道=電0193(62)8900

絵馬(ホタテの貝殻)

絵馬(ホタテの貝殻)

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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