【本文】

  1. トップ
  2. 旅だより
  3. 塩屋埼灯台
塩屋埼灯台

塩屋埼灯台 福島県いわき市 白と青が織りなす美

震災からほぼ3年ぶりに一般公開が再開された塩屋埼灯台=福島県いわき市で

震災からほぼ3年ぶりに一般公開が再開された塩屋埼灯台=福島県いわき市で

 青空を背景に真っ白な灯台がすっくと立つ。今年2月から一般公開が再開された塩屋埼灯台だ。灯台のある福島県いわき市は3・11のとき、地震、津波、原発事故と、苦難が続いた。

 映画やテレビドラマになった「喜びも悲しみも幾歳月」の原案は、塩屋埼灯台の台長だった田中績(いさお)さんの妻きよさんの手記だった。
 海岸のすぐ近くにある駐車場から断崖の上に立つ灯台を目指す。息が上がったころ、灯台が大きく、目の前に見えた。

 灯台から下りてきた男性が「いわき市のシンボルですね」と言う。地元の会社員(54)だが、上るのは何十年ぶりとか。近くの割には、意外に来ないものだなと思うと、「今日は津波で亡くなった人の冥福を祈ろうと思って。震災からずっと、海に来る気になれなかったんだ」と、寂しそうにほほ笑んだ。同僚が1人、津波で亡くなったという。

 灯台の中に入る。103段の階段を上り、ドアを開けると海抜約70メートルからの展望が開ける。青い太平洋。白波が立っている。灯台の北は薄磯、南は豊間。かつて海水浴場としてにぎわった。白い砂浜の奥に土台だけを残した住宅地が、褐色の砂浜のように広がっている。

 福島県会津若松市の進藤淳二さん(61)と妻優美子さん(59)は東京に住む娘と孫を連れて来ていた。「娘が小さいころ、海水浴に何度も来た」と言った。

ハンカチになった鈴木姫花さんの絵=福島県いわき市の灯台ミュージアムで

ハンカチになった鈴木姫花さんの絵=福島県いわき市の灯台ミュージアムで

 「塩屋埼灯台ミュージアム」に寄る。灯台は1899(明治32)年に完成したが、1938年の福島県沖地震で大破し、2年後に再建された。太平洋戦争でも被害に遭ったという。

 地元の子どもたちが描いた灯台の絵が5枚飾ってあった。真ん中の「わたしたちの灯台」の絵には、豊間小学校3年鈴木姫花(ひめか)さんの名があった。灯台への道を空から見下ろしている構図で、夕焼けの空が印象的だった。

 帰りに土産物店「山六観光」に寄った。先ほどの灯台の絵がハンカチになっていた。姫花さんは津波で亡くなっていた。

 ハンカチの説明文に「明るい色づかいで、見ている人を笑顔にする、幸せの黄色いハンカチ」「もしかしたら天国から見た景色なのかもしれない・・・お父さんはふと思ったそうです」と記してあった。

 石碑が見えた。レジの女性従業員が「津波はひばりさんの石碑のすぐ下で止まった」と言う。美空ひばりを記念した「雲雀乃苑(ひばりのその)」だった。顕彰碑も並ぶ。観光の目玉スポットだ。団体客が記念写真を撮っていた。人が近づくと自動的に、塩屋崎を舞台にした「みだれ髪」の歌が流れる。
 

 

ウニやヒトデに触ることができるタッチプール=福島県いわき市のアクアマリンふくしまで

ウニやヒトデに触ることができるタッチプール=福島県いわき市のアクアマリンふくしまで

 海岸沿いを南に下って、アクアマリンふくしまを訪ねた。館内は家族連れでにぎわっていた。親潮と黒潮がぶつかる福島沖を再現した大型水槽「潮目の海」が人気だ。同じフロアの水槽「ふくしまの海」ではサンマの群れが泳ぐ。広報担当の金成美枝(かなりよしえ)さんは「サンマはうろこが青く光ってきれいなんです」と言う。

 大型水槽の前に、すし店があった。泳ぐ魚を見ながら、すしが食べられる。施設内に釣り堀もあり、釣った魚を食べることもできる。次は、おなかをすかせて来よう。

 文・写真 井上能行

(2014年5月9日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
塩屋埼灯台へは、JR常磐線・いわき駅から江名経由小名浜行きバスで灯台入口下車、徒歩15分。車は常磐自動車道・いわき中央ICから約25キロ。アクアマリンふくしまへは、JR常磐線・泉駅から小名浜・江名方面行きバスで支所入口下車、徒歩10分。
 
◆問い合わせ
いわき観光まちづくりビューロー=電0246(44)6545。アクアマリンふくしま=電0246(73)2525

おすすめ

★勿来関(なこそのせき)
奥州三関の1つ。歌枕として知られ、勿来関跡の石碑がある。公園として整備され、詩歌の小径(こみち)に歌碑が並ぶ。勿来関文学歴史館は大人320円、中高大生220円、小学生160円、休館日は第3水曜日と元日。電0246(65)6166

フタバサウルス・スズキイなどの化石
フタバサウルス・スズキイなどの化石

★いわき市石炭・化石館
フラガールが誕生した常磐炭田125年の歴史が模擬坑道などで再現されている。高校生が市内で発見して話題になった首長竜フタバサウルス・スズキイなどの化石を展示。入館料は大人650円、中高大生430円、小学生320円。電0246(42)3155

★いわき・ら・ら・ミュウ
いわき市小名浜にある観光・物産センター。海産物を中心にした食事と買い物ができる。小名浜港の遊覧船乗り場もある。2階の「ライブいわきミュウじあむ」では「いわきの東日本大震災」をテーマに、震災直後の避難所を再現した展示やビデオ、写真を見ることができる。電0246(92)3701

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

旅コラム
国内
海外