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小浜島

小浜島 沖縄県竹富町 「おばぁ」のもてなし温か

防災の鐘として再利用しているロケット弾を指さす大盛キヨさん

防災の鐘として再利用しているロケット弾を指さす大盛キヨさん

 小浜(こはま)公民館の前でピンクの傘を手に「おばぁ」が立っていた。近くの大盛(おおもり)キヨさん(84)。集落の観光ガイドだ。大通りわきにつり下げられている長さ1メートルの鉄の塊を指して「アメリカが島に落としたロケット弾さ」と教えてくれた。戦後、安全な状態にして防災用の鐘として火事や災害を知らせている。「砲弾の平和利用さ」

 八重山諸島のほぼ中央に位置する沖縄県竹富町、小浜島を巡る午前のバス観光に参加した。案内は、島が最も盛り上がる秋の結願祭にもふれ、「北と南の集落が笛、太鼓、三線(さんしん)、踊りを競い合うさ」。独特の面などが特徴の島の芸能は一括して国の重要無形民俗文化財に指定されている。

NHK朝の連続ドラマ「ちゅらさん」のロケ地にもなった赤瓦の古民家。垣根はサンゴ石灰岩でできている

NHK朝の連続ドラマ「ちゅらさん」のロケ地にもなった赤瓦の古民家。垣根はサンゴ石灰岩でできている

 赤瓦の古民家が見えてきた。NHK朝の連続ドラマ「ちゅらさん」のロケ地となった建物だ。垣根はサンゴ石灰岩でできている。撮影で付けたシーサーの屋根飾りは今もそのまま。「ここは夫(85)の実家。私も患者役でドラマに出たよ」。背筋は伸び、はきはきと話す大盛さんは6月に沖縄県石垣市で開かれる八重山諸島の言葉を披露し合う「方言大会」に島代表で出るという。

 少し歩くと大盛さん宅に着いた。居間で「ゆんたく(おしゃべり)」を聞く。お茶と手づくりの菓子「サーターアンダギー」でもてなしてくれた。深い藍染めの着物や反物などを広げ、「ほとんどの家に機織り機があり、女性が家族の着物を織るさ」。着物作りは母から娘へと代々受け継がれ、男たちは正装として祭りや祝い事で着ている。

 小学校まで小浜島で過ごし、夫の定年を機に石垣島から故郷に戻った大盛さんは4人の子ども、10人の孫に恵まれる。島のいいところは「年寄りを大事にすること」。

 集落の案内は5年ほど前からしているが、長男の畑を手伝うためサトウキビ収穫期の1~3月は断っているとか。

 一周約17キロ、人口約600人の小浜島のバス観光。運転手の新垣智(さとし)さん(40)は「島には信号はないので」と細心の注意を払う。ちゅらさんにも出てきた一本道のシュガーロードに来た。「撮影のときは両側にサトウキビが生い茂っていたが、今は、割のいい畜産の牧草に変わってきている」。新垣さんは交差点横の大きな一本松を見上げ、「1771年の明和の大津波では、ここまで波が押し寄せてきた」と説明した。

細崎の漁港の隣にあるマンタの形をした展望台からは、西表島や黒島が見渡せる=いずれも沖縄県竹富町小浜で

細崎の漁港の隣にあるマンタの形をした展望台からは、西表島や黒島が見渡せる=いずれも沖縄県竹富町小浜で

 漁港がある細崎(くばざき)海岸も訪れた。周辺はマンタに遭遇できるスポットだ。マンタの形をした展望台もあり、前に西表島、黒島が広がる。島の中央にそびえるのは大岳(うふだき)(99メートル)。「晴れた日は山頂から八重山のほとんどの島々が見渡せる」

 町史によると、先の大戦では空襲やマラリアで島民約190人が犠牲に。薩摩藩が実質支配していた琉球王国時代は、米や布の重税を強いられ、台風や干ばつにも苦しめられた。苦難の歴史からか、島を代表する民謡「小浜節」は愛と信頼を基に島の繁栄と幸福、平和を謡う。

 雨が上がり、夜になると、雲の切れ間から北斗七星が浮かび上がった。島のホテルによると、八重山諸島は大気が安定し、赤道に近いことから南十字星を含む国内最多の84の星座が観測できる。空を見て「ぬちぐすいやっさー」とつぶやきたくなった。沖縄で「命の薬」を意味し、美しい風景や優しさにふれ、心がいやされたときに口にする言葉だ。

 文・写真 沢田一朗

(2014年5月23日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
小浜島へは沖縄・石垣島の新石垣空港からバス・タクシーで石垣港離島ターミナルへ
(バスの場合40~45分)。高速フェリーに乗り継いで約25分。島は起伏が多く、移動には観光バス、レンタカー、レンタバイクなどがお勧め。

◆問い合わせ
竹富町観光協会=電0980(82)5445

おすすめ

小浜バーガー

小浜バーガー

★バス観光ゆったり2時間コース
午前10時小浜港出発、シュガーロードや細崎、大岳を回る。途中、おばぁと集落を散策し、自宅で話を聞く。大人2500円、6~11歳1500円。予約が必要。1時間コースもある。コハマ交通=電0980(85)3830

★小浜バーガー
テリヤキソースに黒糖を加えた独特のおいしさ。5年前、島にハンバーガー店がなかったことから店主の酒井浩さんが特産の黒糖をヒントに発案。ボリュームたっぷり。500円。ボブズカフェ=電0980(85)3970

★ナイトツアー
リゾートホテル「はいむるぶし(沖縄で南十字星の意味)」内で、スタッフの解説で八重山諸島の星を見る。コウモリやオカガニなど小動物も観察できる。60分。大人1100円、6~11歳600円。季節により、出発時間変更。夕日と星が楽しめるサンセットクルーズも人気。はいむるぶし=電0980(85)3111

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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