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高野山

高野山 和歌山県高野町 聖域を巡り心安らぐ

奥之院(左後方)に通じる石畳の参道

奥之院(左後方)に通じる石畳の参道

 心安らぐ空間だった。来年、開創1200年を迎える高野山真言宗の修行道場、総本山金剛峯(こんごうぶ)寺(じ)(和歌山県高野町)。その中でも聖域とされる奥之院の石畳の参道を歩いた。
 
 ふもとは汗ばむほどだったが、標高約900メートルの高野山に上がると肌寒さを感じた。まずはお大師さまへのごあいさつ。奥之院入り口の「一の橋」から弘法大師御廟(ごびょう)へ向かった。約2キロの参道周辺には樹齢数100年、高さ数10メートルの杉の巨木が立ち並び、所々に木漏れ日が差していた。両脇に並ぶ20万基を超える供養塔に目をやり、野鳥のさえずりを聞きながら、ゆっくり歩く。静けさと、これまで目にしたこともない光景が、心を非日常へと誘(いざな)い、いつの間にか、穏やかな心持ちになっていた。

 奥之院には孝明天皇らの供養塔をはじめ、織田信長、上杉謙信といった名だたる武将や司馬遼太郎など、著名人の供養塔が所狭しと並ぶ。「それぞれ、ほかの場所にもお墓はあるようですが、数10億年先にお大師さまが弥勒菩薩(みろくぼさつ)と共に、この地に下生(げしょう)され、その説法を聞くと救われるという信仰から、供養塔はその時の場所取りという意味合いもあるようです」と金剛峯寺公認ガイドの瀧本順子さんが教えてくれた。

高野山のシンボル「根本大塔」(中央)などを擁する壇上伽藍

高野山のシンボル「根本大塔」(中央)などを擁する壇上伽藍

 ほかにも聖域がある。それはシンボルともいえる根本大塔(高さ48・5メートル)がある壇上伽藍(がらん)。広々とした空間、重厚な建物群が歴史の深さと霊場の風格を湛(たた)えている。

 金剛峯寺を中心とする高野山は、熊野三山、吉野・大峰とともに2004年7月、「紀伊山地の霊場と参詣道」として世界遺産に登録された。高野山への参詣道はいくつもあるが、ふもとの九度山町にある慈尊(じそん)院から登るのが正式とされている。高野山を女人禁制にしていた弘法大師が、慈尊院で晩年を過ごした母親を、月に九度は訪ねていたことが地名の由来となった。慈尊院境内から始まる町石道(ちょういしみち)は、根本大塔まで約20キロ続き、一町(約109メートル)ごとに案内の五輪塔が立っている。女人禁制は1872(明治5)年に解かれ、近年は女性だけでなく欧米からの観光客も増えているという。

 せっかくなので泊まりは宿坊にした。100余りあるお寺のうち、52寺院が宿坊だ。かなり歩き、へとへとだったので温泉付きの福智院へ。建物だけでなく立派な庭、調度品に驚かされた。飛鳥時代の仏像や、国内唯一という安土桃山時代の僧兵の鎧(よろい)などが、さりげなく置かれていた。客の世話もする修行僧が「1日3時間は掃除しています」と言うだけあって廊下も建具もピッカピカ。

「弘法大師は今も生きておられる」との信仰から朝夕の2回、食事が供えられている=和歌山県高野町の高野山で

「弘法大師は今も生きておられる」との信仰から朝夕の2回、食事が供えられている=和歌山県高野町の高野山で

 夕食は豆乳鍋、ごま豆腐など山菜、野菜、海藻だけで作った10品。肉や魚がないので、「うまい」とまではいかなかったが、上品な味付け。おなかいっぱい食べても胃もたれせず、2日間の滞在で体調が良くなった。

 修行道場は、参詣者にも開放され、伝統の瞑想(めいそう)法「阿字観(あじかん)」を金剛峯寺の道場で体験した。楽な座位を取り、かすかに目を開いて前方を見る。ここからが本番。お坊さんが、「無の境地になるのではなく、心を静め、それぞれが思うことを深く考えてください」「鳥の声が聞こえても、何の鳥かな?とは考えず、やり過ごして」と次々に助言してくれる。このあと「あるがままを受け入れて…」までは聞き取れたのだが、あまりの心地よさから、すーっと眠りの世界へ引き込まれた。
 
 文・写真 富永賢治

(2014年5月30日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
高野山へは、JR新大阪駅から地下鉄でなんば駅へ。南海高野線に乗り換え極楽橋駅で下車、高野山ケーブルで山上へ。所要時間は約2時間。車は西名阪・天理ICから一般道経由などで約2時間。

◆問い合わせ
高野山宿坊協会=電0736(56)2616、
九度山町観光協会=電0736(54)2019

おすすめ

精進料理

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★丹生都比売(にうつひめ)神社
日本書紀にも登場する古社で、九度山町から高野山まで続く町石道の中間にある。所在地は、かつらぎ町上天野。祭神は、高野山の守護神で、高野山との密接な関係から世界遺産になっている。電0736(26)0102

★高野山霊宝館
国宝21点をはじめ約5万点の文化財が収蔵されている。開館時間は午前8時半から午後5時半(11月から4月は5時)まで。拝観料は一般600円、高校・大学生350円、小・中学生250円。年末年始以外無休。電0736(56)2029

★精進料理
野菜を中心に肉や魚を使わない料理。焼き物、揚げ物、酢の物、豆腐、汁物などがあり、宿坊ごとに盛りつけや味は異なる。昼食は1人前2000円程度から。

★真田庵(あん)(正式名は善名称院)
九度山町にあり戦国時代の武将真田昌幸、幸村父子が暮らした屋敷跡として県指定史跡になっている。真田宝物資料館(有料)には武具などが展示されている。年末年始以外は無休。電0736(54)2218

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