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境港市

境港市 鳥取県 鬼太郎がお出迎え

水木しげるロードを歩く鬼太郎のキャラクター。観光客にも大人気だった=鳥取県境港市で

 「鬼太郎だ!」「イケメン!」-。あちらこちらから、楽しげで弾むような観光客の声が聞こえてきた。ここは「ゲゲゲの鬼太郎」などの作品で知られる漫画家水木しげるさんの生まれ故郷、鳥取県境港市にある「水木しげるロード」。記念館もあり、一帯が「水木しげる」一色に染まっている。

 この辺りは昼間、水木さんが編み出したキャラクターの着ぐるみが動き回り、楽しげな雰囲気に包まれるが、夜はロードに並ぶ妖怪のモニュメントがおどろおどろしさを醸し出す。夜歩いていると「本物の妖怪が出るのでは…」とさえ、思えてくる。

 水木さんのふるさとを訪ねる旅は、JR境線からスタートした。起点となる米子駅のホームに立つと鬼太郎列車など、「ゲゲゲの鬼太郎」のキャラクターがラッピングされた派手な車両が出迎えてくれた。車窓から田舎の街並みを楽しみながら1時間足らずで境港駅に到着。駅を出て、真っすぐ道なりに進むと、大小さまざまな妖怪の銅像が並び、まるで歓迎を受けているかのような錯覚に陥った。総勢153体。水木さんにちなんだ施設や店がひしめいている。

水木しげるさんが収集した奇怪な仮面のコレクション=境港市の水木しげる記念館で

 水木しげる記念館は「河童(かっぱ)の三平」や「悪魔くん」などのヒット作や、生い立ち、漫画家として自立するまでの歩みが紹介されている。2階の展示スペースと中庭は写真撮影も可能。来場者は、鬼太郎やねこ娘のパネルの前で楽しそうに記念撮影していた。水木さんがアフリカなどを訪れて収集した先住民族の仮面も展示され、探検家、冒険家としての情熱も伝わってくる。

 展示の中で目を奪われたのは「水木しげる語録」。「自分の知恵を使わず、人の使った知恵を使おうとしているヤツは幸せにはなれん」-。この言葉にはハッとさせられた。戦争で片腕を失い、戦後は貧しさの中でも自らの志を見失わず、妖怪漫画の第一人者となった人物だけに、言葉の一つ一つが身に染みた。

 街中では鬼太郎やねずみ男、サラリーマン山田などのキャラクターにも出会える。カメラを向けると気軽にポーズを取ってくれ、記念写真にも応じてくれた。愛嬌(あいきょう)を振りまき疲れたのか、道路わきで休憩している“妖怪”もいて、ほほえましかった。

通称「ベタ踏み坂」と呼ばれる急勾配の江島大橋。境港市と松江市の江島を結ぶ=松江市で

 まさに“妖怪の街”なのだが2004年10月、新たな観光名所が誕生した。境港市と松江市の江島を結ぶ江島大橋、通称「ベタ踏み坂」である。

 全長1.4キロ。通過可能な中央径間は250メートル、海面からの高さは約45メートルもあり、プレストレスト・コンクリート・ラーメン構造の橋としては国内最大、世界でも第3位の規模を誇る。勾配は、松江市側6.1%、境港市側は5.1%。数字からすると大した坂ではないが、橋が長いため、実際に松江市側に立つと、坂は天に向かって突き進んでいるかのように見えた。重いリュックを背に、カメラ2台を提げて歩いていると次第に息が切れてきた。呼吸も乱れ、気が付くと自身の心臓のポンプ調整ペダルを「ベタ踏み」していた。

 この坂は、軽自動車のテレビコマーシャルで広く知られるようになったが、地元では、まだ江島大橋を観光名所として大々的に宣伝していない。境港市観光協会職員の福留康次さん(39)に「観光名所になるのでは?」と持ちかけると、「近年は橋目当ての観光客が増えており、これからはホームページなどで、もっと宣伝していきたい」と話した。

 水木しげるさんの生い立ちから、これまでの歩みが垣間見られる境港市。その足跡を訪ね歩いていると、どこからともなく「さあ思いっきり、楽しんでね」と水木さんのささやきが聞こえてくるようだった。

 文・写真 木戸佑

(2014年6月27日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
境港市へは、名古屋から新幹線で岡山駅まで約1時間40分、特急「やくも」に乗り換え米子駅まで2時間10分。さらにJR境線で45分。

◆問い合わせ
水木しげる記念館=電0859(42)2171、境港市観光案内所=電0859(47)0121

おすすめ 

特選海鮮丼

特選海鮮丼

★妖怪食品研究所
水木しげるロード沿いにあり松江市の和菓子店「彩雲堂」が作った「妖菓(ようか) 目玉おやじ」を販売している。クリ入りのこしあんは上品な甘さ。2個入り700円。年中無休。電0859(42)5210

★みづき屋
水木しげるロード沿いにあり、地元で水揚げされた新鮮な魚介料理がお手ごろに食べられる。旬の魚介をふんだんに載せた特選海鮮丼は1400円。「千代むすび」などの地酒も並ぶ。日曜夜、月曜定休。電0859(44)9489

★夢みなとタワー
地上43メートルの展望室は360度の大パノラマ。日本海や境港市街が一望できる。入館料は高校生以上300円、小中学生150円。第2水曜(祝日の場合は翌日)休館。電0859(47)3800

★水木しげる文庫
水木しげるロードの中ほどにある。「ゲゲゲの鬼太郎」など水木しげるさんの代表作品の復刻版や妖怪絵などを販売している。基本的には年中無休。電0859(42)3242

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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