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多文化の国

多文化の国 シンガポール 輝く大樹 融合を象徴

人工の大樹がさまざまな色を発する。奥のビルはマリーナ・ベイ・サンズ

人工の大樹がさまざまな色を発する。奥のビルはマリーナ・ベイ・サンズ

 青くなったと思えば、緑を帯びてくる。やがて妖しい赤茶の色をともす。マリーナ湾そばの植物園「ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ」で夜のショーが始まった。最高50メートルもの人工の大樹が林立し、情緒のある音楽に合わせ、さまざまな色の顔を見せる。蒸し暑さを忘れるほど幻想的な眺めだった。

 以前、アイドルグループ・SMAPのテレビCMで話題を呼んだ総合リゾートホテル「マリーナ・ベイ・サンズ」からも近い。観光名所づくりにたけた都市国家のシンガポール。駐在する日本人の観光関係者は「常に先のことを考えて次の手を打っている」と、いたく感心している。

 国土面積は710平方キロで東京23区よりやや広い程度。そこに多民族、多国籍の人々が暮らす。それぞれ息づいている文化があり、見どころは多い。

さまざまな土産物の店が軒を連ねるチャイナタウン。品定めするだけで時間が過ぎる

さまざまな土産物の店が軒を連ねるチャイナタウン。品定めするだけで時間が過ぎる

 その代表格はチャイナタウンだろう。地下鉄駅から続く通りには雑貨や衣料を扱う店が軒を連ね、露店もひしめく。海外からの旅行者でにぎわい、土産物の市場のよう。金色の招き猫や着物風チャイナドレスを店頭で見つけ、遊び心をくすぐられた。

 そうかと思えば、博物館を兼ねた仏牙寺(ぶつがじ)では、金色に輝く仏像の足元を色とりどりのろうそくが囲んでいた。近くでは、お年寄りがゆるりと将棋を指し、暮らしの場でもあると気付かされる。

 この辺りの一角には、シンガポール最古のヒンズー教の寺院、スリ・マリアマン寺院もある。1827年に南インドからの移民が建て、病気を治す女神をまつる。信者が花を入れた銀器を頭に載せ、屋内に入る列をつくっていた。カメラを向ける旅行者には、若い女の子が気さくに笑みを返していた。

 チャイナタウンを南西に進むと、しゃれた店舗がたたずむように点在する。古い建物を改装して個性を出しており、デザイナーズホテル「ニュー・マジェスティック・ホテル」は、どの客室も同じデザインがない。

 次に訪れたリトル・インディアは趣が異なった。日曜日だったからか、買い物に来たインド系の人が多く、歩道をすれちがうのが大変。スマートフォンなどの電子機器を扱う店に人だかりができ、衣料店の店員は客の求めに応じて軒先のミシンでズボンを仕立てていた。香辛料のにおいも伝わり、生活感がにじむ。
 

アラブ・ストリートを象徴するイスラム寺院のサルタン・モスク=いずれもシンガポールで

アラブ・ストリートを象徴するイスラム寺院のサルタン・モスク=いずれもシンガポールで

 リトル・インディアの南東には、アラブ・ストリートが広がる。5000人を収容するというイスラム寺院「サルタン・モスク」が厳かに立ち、辺りに民族衣装やじゅうたんの店が並ぶ。

 シンガポールに住む民族は、中国系、マレー系、インド系の順に多い。ただし、民族構成だけでは歴史を語れない。東南アジア独特の「プラナカン」という文化がある。17世紀ごろから移住した中国系男性と地元のマレー系女性の子孫たちが、東西の文化を融合させてきた。居住していたカトン地区に並ぶ棟続き住宅の装飾が文化の融合を象徴しており、一見の価値がある。

 ガイドのディノさん(50)は「そこに行けば、その場所の魅力に触れられる」と語る。祖父が英国軍で働き、独立後もこの地に残ったというインド系3世。シンガポーリアン(シンガポール人)として、観光地の魅力を発信する仕事に誇らしげだった。

 マリーナ湾の植物園の大樹がともす色の移ろいは、この国の多様さを表すように見えてきた。

 文・写真 後藤隆行
 
(2014年8月1日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
羽田、成田、中部国際空港から、シンガポール航空などが毎日直行便を運航している。所要時間は約6時間。同航空は9、13日に名古屋就航25周年記念の特別便(2階建てA380)を中部発着で運航する。

◆問い合わせ
シンガポール政府観光局の東京オフィス=電03(3593)3388。現地情報は同政府観光局の公式サイトが詳しい。

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★セントーサ島
島全体が行楽地。10万匹以上の海洋生物を飼育する水族館「シー・アクアリウム」があれば、遊園地「ユニバーサル・スタジオ・シンガポール」も。小高い丘から砂浜まで450メートルをロープで下る「メガジップ」など冒険体験まで楽しめる。
 
★マーライオン
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★地元料理
朝食の定番「バクテー」は豚のリブをこしょうなどのスパイスで煮込んであり、ご飯や揚げパンと食べる。チリソースのカニ料理「チリ・クラブ」や、魚の頭が丸ごと入った「フィッシュ・ヘッド・カレー」など、食文化は多様。座席共有のフードコートが多くあり、好みの料理を味わえる。

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