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「韓方」をめぐる旅

「韓方」をめぐる旅 韓国 施術と食で心身軽く

立派な門構えの薬令市韓医薬博物館(右後方)=韓国の大邱市で

立派な門構えの薬令市韓医薬博物館(右後方)=韓国の大邱市で

 東洋医学のカンポウと聞けば、たいていの人は「漢方」を思い浮かべるのでは。しかし韓国では「韓方」なのだ。韓国式漢方医学「韓方」(現地読みではハンバン)は市民に身近で、暮らしに根付いているという。体験のため、飛行機で1時間半の隣国に出掛けた。

 韓方薬の流通拠点となっている韓国南部の大邱(テグ)市。人口約250万人、韓国第3の都市である。韓方薬の歴史は1658年にまでさかのぼる。当時の王が薬材市を大邱市に開くことを命令したのが起源という。以来、春と秋のそれぞれ1カ月、取引が行われ、国内各地はもちろん中国や日本にも薬材を供給してきた。

韓国各地から100種類を超える韓方薬材が集まる韓方薬材卸売市場=大邱市で

韓国各地から100種類を超える韓方薬材が集まる韓方薬材卸売市場=大邱市で

 現在は、大邱市の中心部に位置する市場で月6回競りがある。名称は「韓方薬材卸売市場」。中に入ると、腐葉土のような独特の匂いが漂い、木の皮や植物の根などが詰まった袋が床に所狭しと並んでいた。

 ここには国内各地から100種を超える薬材が集まる。「市場で扱っているのは全て国産。農薬を使っていないものばかりです。韓国内では近年、安い中国産が増えているけど、国産がこれだけ集まるのは韓国でもここだけ」。卸売市場の総務部長楊永純(ヤンヨンスン)さん(63)が説明してくれた。

 市場は、薬令市韓医薬博物館の1階にある。博物館では、昔の薬材市の様子や薬の効能、種類について学ぶことができる。足湯体験コーナーでは、韓方薬の湯に入り、温かい韓方茶を味わった。体の内と外から温まり、うとうとしてしまう。

 博物館正面には、高さ10メートル近い立派な門と韓方薬を作る様子を表した像が飾られている。近くの通り600メートル区間には、薬局や韓方医院など約350軒が並ぶ。店頭の薬材の効能を店主に聞くと「これは夏バテ防止になるよ。お茶にして味わって」と教えてくれた。
 

はり治療をする韓方医の辛東勲さん(左)=韓国の釜山市で

はり治療をする韓方医の辛東勲さん(左)=韓国の釜山市で

 釜山市では、「韓医院 神通(シントン)」を訪れた。「西洋医学は現れた病気を治療する。韓医学は病気への免疫力を高めて予防する。もちろん病気になってから治療に来る方もいます」。辛東勲(シンドンフン)院長(52)はこう説明する。

 韓方は公的な健康保険が適用されるなど、国としての制度も整っている。このため韓方医は西洋医学の医師と同様、大学の専門学部で6年の教育を受け、国家試験に合格しなければならない。

 それならばと韓医院で韓方を体験した。少し不安はあったが身長、体重、血圧を測り、問診を受けるのは西洋医学と同じだった。辛院長が静かに手首の上に指を当て、じっと耳を澄ませた。

 「特に問題はありませんよ。ただ冷えやすい体質なので体を温かくするようにしてください。夏でも冷たい飲み物ばかりはいけません」との診断だった。きゅうとはりもしてもらった。辛院長は、2002年の日韓ワールドカップで韓国代表選手のケアもした人物。治療を終えると、心身ともにすっきりした。

 うまい具合におなかが減ってきたので、釜山市内の飲食店「貞林(チョンリム)」で韓方薬膳を味わった。高麗人参(にんじん)やキキョウの根の天ぷら。29種類の薬草と煮込んだ豚肉、100種類の薬草とともに漬けたキムチなど20皿ほどの料理が出てきた。店は薬草研究家の鄭英淑(チョンヨンスク)さん(58)が25年前に始めた。

 「食は人格を形成し運命を左右するほど大事だと考えます。だから、味付けには厳選した植物原料を発酵させた自家製のみそや、コチュジャンだけを使っています」。おいしさだけではない優しい味。鄭さんのオモニ(お母さん)のような愛情が、韓方薬以上に体を整えてくれるような気がした。

 文・写真 寺本康弘
 
(2014年8月8日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
大邱へは、釜山にある最寄りの金海(キメ)国際空港まで中部国際空港や成田空港から直行便がある。大邱の薬令市韓医薬博物館へは、釜山駅から高速鉄道(KTX)で東大邱駅まで約45分、地下鉄で半月堂駅、もしくは中央路駅で下車し、徒歩5~7分。

◆問い合わせ
韓国観光公社名古屋支社=電052(223)3211

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韓方せっけん作り体験

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★薬令市韓医薬博物館
開館時間は午前9時から午後6時。月曜休館。入館無料。足湯は5000ウォン(1ウォン=約0.1円)。

★韓方せっけん作り体験
「ハヌルホス 大邱東城路店」では、韓方薬から抽出した成分で、せっけんやシャンプーを作る体験ができる。料金は1万5000ウォン。ホームページを参考に前日までにメールでの予約が必要。

★薬膳料理店「貞林」
営業時間は正午から午後9時50分(入店は8時半までに)。コース料理は2万
5000ウォンから5万ウォンまでの3コースがある。

コース料理

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★ツアー
釜山で韓方や薬膳料理を体験し、大邱を訪れる「韓国式漢方医学“韓方(ハンバン)”と薬膳を体験する旅」。9月10日、中部国際空港出発で3泊4日。問い合わせは、中日ツアーズ=電052(231)0800=へ。

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