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襟裳岬

襟裳岬 北海道 岩礁に荒波「風極の地」

白く美しい襟裳岬灯台

白く美しい襟裳岬灯台

 岬へ向かう路線バス。車窓の先には青い海が広がり、手前の草地には、所々、黄色い花が咲いていた。真っすぐに延びる道路を進むと、陸地は徐々に細くなり、岬の突端が近いことを実感させられた。

 バスを降りると、青い空に映える白い襟裳岬灯台(高さ約14メートル)。その横を通り、柵を施した階段状の道を10分ほど歩くと、目指す襟裳岬に着いた。直下の断崖は高さ約60メートルもあり、荒波に洗われる岩礁が続く。空にはカモメが翼を広げ、おおらかに滑空していた。

 「北海道の背骨といわれる日高山脈が、太平洋に沈み込んでいるところが襟裳岬。岬の突端から沖合数キロにわたって岩礁が続いています」。岬にある、えりも町の施設「風の館」職員の外山愛郎さん(32)が教えてくれた。

 はるか、かなたには水平線。足元の海面は、強い風に吹かれてしわが寄ったよう。岩礁の浅瀬では、根が外れて漂うコンブを地元の漁師さんたちが拾い集めていた。

襟裳岬の突端から沖合に続く岩礁。ダイナミックな景観が目の前に広がる

襟裳岬の突端から沖合に続く岩礁。ダイナミックな景観が目の前に広がる

 「水平線を眺めていると、日常を忘れますね」。栃木県足利市からやって来た男性(29)がつぶやいた。仙台からフェリーで苫小牧まで来て、そのあとマイカーで10日間ほどの1人旅。システムエンジニアだったが退職し、今はアルバイトで暮らしているという。「この旅で、何かを見つけられたらいいなと思っています」。そう言って次の目的地の帯広に向かった。

 札幌市の団体職員の男性(62)は、研修を兼ねた実地視察の途中、同僚の女性2人と岬に立ち寄った。「森進一さんの歌では『何もない』とあるけど、実際はどうなのかなあと思って」

 「襟裳岬」と題した歌謡曲は、島倉千代子さんと森進一さんの2つがあり、突端の近くに歌碑が並んでいる。森さんの歌は「♪襟裳の春は 何もない春です」とうたわれる。

 「襟裳岬は風が強いね。やっぱり、何にもない・・・」。男性は、そこがいいんだとばかりに、親しみを込めて笑った。

岩礁に生息するゼニガタアザラシ(北海道えりも町提供)=いずれもえりも町で

岩礁に生息するゼニガタアザラシ(北海道えりも町提供)=いずれもえりも町で

 岬の突端から続く岩礁は、ゼニガタアザラシの国内最多の生息地でもある。愛らしい姿は町の観光パンフレットにも掲載され、マスコットのような存在。岩場に上陸している様子は「風の館」の望遠鏡などで観察できる。環境省えりも自然保護官事務所によると、近年の上陸推定数は500~600頭。1970年代には乱獲などにより一時、約150頭にまで減少した。98年には国の絶滅危惧種になり、捕獲禁止の措置などもあって、近年は上陸数が増えているという。

 ただ、漁業被害も指摘されている。「サケなどが好物で、定置網に入り込んだり、サケを追い掛け、網に近づけなくしたりすることがある。共存共栄が昔からのテーマです」と町職員の三国元大(もとお)さん(36)。

 同省は今年5月、岬周辺のゼニガタアザラシ保護管理計画を作り、繁殖状況や食性の調査に乗り出した。自然保護官の蔵本洋介さん(24)は「人間と共生するには、どうすればよいか。網に近づかない方法などを模索していきたい」と話す。

 日高山脈からの吹き下ろしで、風速10メートル以上の日が年間290日以上もある襟裳岬は、日本屈指の強風地帯で「風極の地」ともいわれる。

 突端では時折、吹き飛ばされそうな風を受けた。その中に身を置いていて、北の大地の自然の厳しさを実感した。

 文・写真 石川浩

(2014年9月5日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
襟裳岬へは、新千歳空港からJR千歳線、日高線を乗り継ぎ、様似駅まで約4時間、さらにジェイ・アール北海道バスに乗り換え約1時間。車は同空港から約4時間。

◆問い合わせ
えりも町産業振興課=電01466(2)4626

おすすめ 

風の館

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★襟裳岬「風の館」
岬の突端近くにある。風速10、15、25メートルが体験できるコーナーが人気。流木の工作や「海藻おしば」作りなどの体験も。入館料は一般300円、小中高校生200円。12~2月は休館(元日の朝を除く)。電01466(3)1133

★えりも漁協直売店
特産のサケやブリ、日高昆布の加工品、新鮮な貝の真ツブ、時季によってエビやカレイ、ウニ、毛ガニなど地元で取れた豊富な魚介がそろう。火曜定休。電01466(2)3939

★昆布ソフトクリーム
バニラアイスの上に日高昆布の粉末がかかっている。混ぜながら食べるとほんのりと潮の香りが。食べ進むと、容器の底からも日高昆布の粉末が現れる。1個300円。えりも岬観光センター=電01466(3)1666=で買える。

昆布ソフトクリーム

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※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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