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用水かいわい散歩

用水かいわい散歩 金沢市 先人の“遺産”大切に

明るい日ざしが水面に反射して輝く「鞍月用水」

明るい日ざしが水面に反射して輝く「鞍月用水」

 金沢市のガイドブックは見どころでいっぱいだ。日本三名園の一つで、観光バスが次々に訪れる「兼六園」。日本海の新鮮な魚介を扱う店が並び、連日にぎわう「近江町市場」。だが今日は、そうした名所を離れて小さな旅に出てみたい。地元の人が「男川、女川」と呼んで親しむ犀川と浅野川の流れる金沢はまた、この2つの清流を水源とする美しい用水のまちでもある。用水は大小合わせて55本。総延長は150キロに達するというその流れを眺め、ゆったり散歩しよう。

 歩く前に、用水の歴史や特徴に詳しい中屋彦十郎さん(73)を訪ねた。16世紀から続く薬屋「中屋彦十郎薬舗」の15代当主で子どものころから用水を見て育ち、用水を自身で探査した結果を紹介するホームページまで作っている人だからだ。

 「金沢の良さは?」と尋ねると「歴史性でしょうね。史跡が方々にあり、緑があり、水の流れがあり、先祖が残してくれたもののおかげで、われわれが心豊かに暮らせる」と返ってきた。

 その言葉を胸に、まずは犀川を水源とする辰巳用水のほとりを歩いた。1630年代に造られ、東京の玉川上水などとともに「日本四大用水」とされる。まちの中心部を流れているが、水には濁りがなく、ごみはほとんど流れていない。金沢の人は先人が残した用水を大切にしていて、次代へと守り継ぐための市条例さえある。用水に入って掃除をする人も見かけた。

中古レコードがびっしり並ぶ「ビーチパーティ」の店内

中古レコードがびっしり並ぶ「ビーチパーティ」の店内

 その辰巳用水は市役所の近くで、別の方向から流れてきた鞍月(くらつき)用水と合流する。そのそばに「レコード ビーチパーティ」の看板を見かけた。CDショップさえ次々に消えるこの時代にレコード店か。いいなあ。

 つい立ち寄ると、店内には3万枚もの中古レコードが。店長の稲垣雄志さんは1970年生まれで、自分より年を重ねたレコードを扱うこともしばしば。「アナログレコードってすごいと思います。50年以上前のものが今でもちゃんと生きて、流通しているんですから」

 大通りで用水は暗渠(あんきょ)となり、再び顔を出す先には「せせらぎ通り商店街」がある。用水の両側に個性的な店が並んでいて、見て歩くだけでも楽しい。

 その一つが古書店「オヨヨ書林 せせらぎ通り店」。店長の佐々木奈津さんによると、店の建物は17(大正6)年の建築で、最初は鉄工所、その後はクリーニング店だった。もうすぐ100年になる古さだが、きちんと手入れされて現役だ。裸電球に照らされた詩集や美術書が実に美しい。ここも先人の遺産を丁寧に受け継ぐお店だ。

 よく晴れた休日の午後。外国からの観光客は陽気に歩く。地元の高校生のカップルはちょっと照れて歩きながら「向こうに行くと、縁結びの貴船神社があるよ」と教えてくれた。

彩りも鮮やかな「ル マルス」の「豚足と豚耳、タンのテリーヌ」=いずれも金沢市で

彩りも鮮やかな「ル マルス」の「豚足と豚耳、タンのテリーヌ」=いずれも金沢市で

 おなかがすいて、近くの欧風食堂「ル マルス」へ。フランス・アルザス地方の料理が中心の気さくなビストロだ。でもなぜアルザス? ここはやはり日本海の魚では?

 オーナーシェフの中野昭宏さんに聞くと「それは他の店がやるんで・・・。逆に言えば、金沢らしくない店をやりたいと」。なるほど。

 《金沢=魚がうまい》という昔からの名声があってこそ、そこから離れた新しい道も開けるんだ。「豚足と豚耳、タンのテリーヌ」、おいしいです。

 中野さんも佐々木さんも、金沢で暮らす楽しみを「散歩」と言った。よく分かる。辺りが暗くなり、お店に明かりがともり始めた。今日はここまで。明日はどこを歩こうか。そう思う間も用水は流れ、このまちで生きる人を見守っている。

文・写真 三品信

(2014年10月3日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
金沢へは首都圏からなら羽田空港からの小松便、
もしくは上越新幹線の越後湯沢駅から特急「はくたか」が便利。
2015年春には北陸新幹線が開通する。
東海地方からは米原か富山経由のJRで、名古屋からは高速バスも。
せせらぎ通り商店街は、金沢駅からバスで「香林坊」下車。

◆問い合わせ
金沢市観光協会=電076(232)5555。
協会のウェブサイト「金沢旅物語」は、散策のモデルコースや観光スポット、
グルメ、お土産、イベント情報が盛りだくさん。

おすすめ 

ニコロン

ニコロン

★ニコロン
せせらぎ通り商店街にあるチョコレートの名店
「ル・ポン・ド・ショコラ サンニコラ」の人気商品。
マカロンを薄いチョコでくるんだ宝石のようなお菓子。
ベルギーの有名な「ピエール・マルコリーニ」で活躍したオーナーパティシエの
藤田雅秋さんが、加賀棒茶や能登栗(ぐり)など特産の味わいを生かした逸品だ。
1個248円。

★混元丹(こんげんたん)練りあめ
「中屋彦十郎薬舗」秘伝のあめ=写真中央。
豚のプラセンタ(胎盤の粉末)やカンゾウ、ナルコユリなど漢方の多彩な素材を配合。
200グラム入りで4320円。
粒タイプの「混元丹飴(あめ)」=同右、歴史ファンが喜びそうな
「前田利家公飴」(ともに972円)もある。

混元丹(こんげんたん)練りあめ

混元丹(こんげんたん)練りあめ

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