【本文】

  1. トップ
  2. 旅だより
  3. 吾妻渓谷
吾妻渓谷

吾妻渓谷 群馬県 名残惜しい上流の紅葉

吾妻渓谷の最上流部にある国道145号旧道の八ツ場大橋から下流方向を望む。滝見橋や白糸の滝(中央)など一帯は八ツ場ダム湖に水没してしまう=群馬県長野原町で

吾妻渓谷の最上流部にある国道145号旧道の八ツ場大橋から下流方向を望む。滝見橋や白糸の滝(中央)など一帯は八ツ場ダム湖に水没してしまう=群馬県長野原町で

 「あの紅葉は今秋が見納めだろうな」。そう思って、群馬県北西部にある吾妻(あがつま)渓谷の最上流部、取材などで何度も訪れたことのある紅葉のポイントに車を走らせた。

 吾妻川は西から東に下って利根川に合流する。上流の長野原町から下流側の東吾妻町に至る約3.5キロメートルの渓谷が吾妻渓谷だ。10月下旬から11月中旬にはカエデ、クヌギ、イヌシデなどが赤黄の色に染まる。

 目的地は長野原町側の吾妻渓谷に架かる滝見橋だ。橋から国道145号旧道の八ツ場(やんば)大橋、旧JR吾妻線の第2吾妻川橋梁(きょうりょう)を見上げる。2つの橋は「渓谷美に一段と光彩を添えている」(長野原町誌)と評されてきた。両岸の紅葉、細く白く3段に流れ落ちる白糸の滝が美しい。

八ツ場大橋と旧JR吾妻線の第2吾妻川橋梁。奥に見えるのはダム湖をまたぐ予定の新しい八ツ場大橋=長野原町で

八ツ場大橋と旧JR吾妻線の第2吾妻川橋梁。奥に見えるのはダム湖をまたぐ予定の新しい八ツ場大橋=長野原町で

 紆余(うよ)曲折を経た八ツ場ダム問題。滝見橋は建設予定地の上流側にあるため、数年後には一帯がダム湖の底に沈む。

 「ダム本体工事のための現地測量が始まった」とのニュースが伝えられたのは10月中旬。

 「吾妻川に沿って走るJR吾妻線は、山の中腹に付け替えられ、10月1日に新線に移った。測量は1カ月ほどかかるらしい。終わって本体工事となれば、川と並行している国道145号旧道も、ダム建設予定地から上流側は通行止めになるはずです」と長野原町役場の萩原喜隆さん。

 だから、上流側の滝見橋から見る紅葉は「今秋が見納め」と思った。現地に着くと、滝見橋に下る遊歩道は冬場の閉鎖に続き通行止めとなっていた。

 145号旧道の八ツ場大橋の上に立ってみる。見慣れた景色とは逆の風景だ。紅葉は七分ほどだが、滝見橋、白糸の滝が目に飛び込んできた。その向こう側に重機の黄色い姿もあった。

 眼前に広がるのは消えゆく景色・・・。「歴史はそんなことの繰り返しか」と考えながら橋を渡り左岸の145号旧道を下る。ダム予定地を過ぎると東吾妻町になる。川幅が狭く吾妻峡と呼ばれている辺りの小さな駐車場に車を止め、歩道を歩きながらカメラを構える人がいた。

 「草津温泉へ行く途中、旧道を走って寄ったのですが、ここも水没するんですか」と千葉県からの親子連れ。

 「この辺から下流の渓谷は残ります。おそらくずっと」と答えに希望を込めた。

中之条ダムの建設でできた四万湖で、カヌーを楽しむ行楽客=群馬県中之条町で

中之条ダムの建設でできた四万湖で、カヌーを楽しむ行楽客=群馬県中之条町で

 東吾妻町から渓谷を上る遊歩道は、ダム予定地のすぐ手前まで続く。吾妻渓谷は今後も春は新緑、秋は紅葉を楽しませ続けてくれるだろう。

 ダムを造れば湖ができる。中之条町を流れ、吾妻川に合流する四万(しま)川に建設された中之条ダムのダム湖(四万湖)は、いつも静かで、水面が鏡のような日も少なくないという。カヌーを浮かべ、見よう見まねでこぐもよし、湖面に浮かぶ癒やし感覚を楽しむもよし。

 「四万湖は山あいの湖で、風の影響を受けることが少なく、子どもでもカヌーを楽しめる。高齢者の方々には、温泉成分が混じり深い青色となった湖水に映える秋の紅葉の中、湖面散歩を楽しんでほしい」と主催するレイクウォークの担当者。長靴やレインウエアなどの装備も借りられ、背広姿で出かけても気軽にカヌーに乗れる。

 数年後、八ツ場ダム建設で新しいダム湖ができる。名湯の川原湯温泉はそっくり高台に移り存続する。八ツ場ダムのダム湖は、紅葉や温泉で知られるこの地に、新たな魅力を付け加えてくれるのだろうか。

 文・写真 若松篤

(2014年11月7日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
国道145号旧道の八ツ場大橋へは、
ダム建設地の旧道が閉鎖されるまでは、
JR吾妻線の移設で新設された川原湯温泉駅から徒歩20分。
吾妻渓谷へは、吾妻線の群馬原町駅から巡回バス、タクシー。
車は関越道・渋川伊香保ICから国道353号、
東吾妻町で145号の旧道に入り、約1時間。

◆問い合わせ
東吾妻町観光協会=電0279(70)2110、
川原湯温泉協会=電0279(83)2591

おすすめ

真田三代の関連イベント

真田三代の関連イベント

★川原湯温泉割引
4人以上の団体で八ツ場ダムの工事現場を見学するか、
事業説明会に参加すると川原湯温泉旅館の宿泊料が1人3000円引きに。
期間は来年3月末(年末年始などを除く)まで。
宿泊予定日の2週間前までに群馬県八ツ場ダム水源地域対策事務所
=電0279(68)5511=へ申し込む。

★県立ぐんま天文台
大型の反射望遠鏡で星を観察できる。
一般観望は土日祝日で予約不要。悪天候の日は、天体写真などを大型映像で紹介する。
日によっては天文台ボランティアが屋外で星座の探し方などを説明してくれる。
電0279(70)5300

★岩櫃(いわびつ)城跡
武田信玄の家臣・真田幸隆が吾妻郡の守護となり、
沼田城に至る上州進出の拠点とした東吾妻町北東の山城。
JR郷原駅から徒歩約40分。
2016年のNHK大河ドラマが「真田丸」と決まったのを受け、
沼田市に至る「真田道」沿いの町村で真田三代の関連イベントを展開。

首都圏・関東の宿泊情報

一覧

    現在この情報はありません。

首都圏・関東のツアー情報

一覧

    現在この情報はありません。

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

旅コラム
国内
海外