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大沼国定公園

大沼国定公園 北海道 「千の風」感じる湖畔

北海道駒ケ岳の雪と紅葉のコントラストに観光客の歓声が上がる

北海道駒ケ岳の雪と紅葉のコントラストに観光客の歓声が上がる

 函館に冷たい雨が降った翌朝。郊外の大沼国定公園(北海道七飯町)から望む北海道駒ケ岳(1131メートル)の稜線(りょうせん)は、うっすらと白くなっていた。10月29日。ほぼ平年並みの初冠雪だった。

 とがった山頂と、馬の背を思わせるなだらかなライン。函館っ子たちが深い愛着を抱く山だ。しかし、優美な姿とは裏腹に、江戸時代からたびたび噴火。現在も山頂部への登山は禁止されている。もともとは富士山のような円すい形だったが、1640(寛永17)年の噴火で山体の3分の1が崩れ、標高も500メートル以上低くなった。土石流が海に流れ込んで大津波を引き起こしたほか、山麓の川がせき止められ、大沼、小沼、蓴菜(じゅんさい)沼の湖沼地帯が生まれた。

 周囲14キロの大沼を、遊覧船が行き交う。点在する大小の小島にも橋がかかり、遊歩道が設けられている。昼が近づき、雲間から光が差し込むと、その角度によって駒ケ岳の色が変わった。山頂のくすんだ白は純白に。紅葉が残る山麓は、濃い茶色からオレンジの帯に。観光客の歓声が上がる。台湾や中国からの団体客が多い。記念写真に納まる女性の1人は、現地語の「千の風になって」を、大きな手ぶりを付けて歌っていた。

「千の風になって」のモニュメント

「千の風になって」のモニュメント

 人の魂はお墓の中にはいない。大空を吹き渡る風になっている-。国際的なヒットとなったこの歌。作家の新井満氏は同公園近くの別荘で、山と湖の雄大な風景から曲想を練り、作者不詳の英語の詩「私の墓の前で泣かないで」を訳詞・作曲した。

 遊歩道の途中に、記念のモニュメントがある。「千の風になって 名曲誕生の地 大沼国定公園」の銘板が埋め込まれた円盤状の造り。地面にへばりついて目立たないが、きっと歌の世界観を意識したのだろう。人工物が、風の通り道を妨げてはいけないと-。

森の植物、動物の営みを解説する小泉真さん=いずれも北海道の大沼国定公園で

森の植物、動物の営みを解説する小泉真さん=いずれも北海道の大沼国定公園で

 近くのホテル「クロフォード・イン大沼」の企画で、早朝の森を散策した。めったに観光客が来ないというコースを、地元のネーチャーガイドの小泉真さん(53)の先導で回った。

 「この前、氷点下になった朝に、紅葉が全部しおれてしまいました」と小泉さんは残念そうだが、赤や黄色に彩られた森は、まだまだ見事な美しさ。小さな沼をマガモがゆったり進む。コケがはがれた跡を見つけ、小泉さんが土を掘り返すと10個ほどのドングリが出てきた。冬場に備えてのエゾリスの貯蔵庫だという。「作業の途中に人が来て、放棄したんでしょうね」

 この秋は、ドングリやヤマブドウなど草木の実が当たり年だったという。イチイの赤くて甘い実は、鳥たちが食べ尽くした。一時は地面を埋めるほどだったドングリも野ネズミ、エゾリスたちが持ち去った。その野ネズミはキタキツネの主食。生き物の営みを知ることで、自然のささやきに耳を澄ませるようになる。「これからの季節は、木の葉がすべて落ちて、キツツキを至近距離で観察できますよ」

 カメラマンで遊覧船会社も経営する小泉さん。祖父が、ウサギ狩りのマタギで、子どものころは一緒に山野を歩き、わなを仕掛けたりしたという。

 真冬になると、氷上スノーモービルやソリツアー、氷に穴を開けてのワカサギ釣り。雪が解けるころには、水鳥の群れ、ミズバショウ、キタコブシ。夏場はカヌー。大沼公園の魅力は、四季それぞれに違う。「何度も来てほしいです」と小泉さんは力を込めた。

 文・写真 安藤明夫

(2014年11月28日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
函館空港へは、東京、名古屋、大阪、札幌などからの直行便がある。
JR大沼公園駅へは、空港からは大沼交通のシャトルバスで約80分。
電車は、函館駅から大沼公園駅まで特急で約20分。

◆問い合わせ
大沼交通=電0138(67)3500

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※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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