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天台三総本山

天台三総本山 大津市 開祖しのぶ母なる山

比叡山のふもとと、延暦寺境内を結ぶ坂本ケーブル。しゃれたデザインが印象的

比叡山のふもとと、延暦寺境内を結ぶ坂本ケーブル。しゃれたデザインが印象的

 琵琶湖のほとり、大津市には仏教で天台の名がつく3つの総本山がある。世界文化遺産で天台宗の比叡山延暦寺、天台真盛宗の西教寺、天台寺門宗の三井寺(みいでら)(正式名、園城(おんじょう)寺)だ。

 まずは延暦寺へ。比叡山のふもとと延暦寺境内を結ぶ比叡山鉄道坂本ケーブルに乗り込む。杉木立を抜けると琵琶湖が一望でき、乗客から歓声があがる。

 788(延暦7)年に、伝教大師最澄(767~822年)が開いた延暦寺。境内の広さが東京ドーム約350個分もあるが、境内にも比叡山にも延暦寺という名の堂塔はない。比叡山そのものが延暦寺を表す。境内に入ると、うっそうとした古木と点在する数々のお堂。

 延暦寺で最も有名なのが、寺と対立した織田信長による1571年の全山焼き打ちだろう。最盛期には3000のお堂があったと伝わるが、ことごとく灰燼(かいじん)と化した。

 果たした役割も大きい。延暦寺参拝部の小林福一事務長(57)は「親鸞(浄土真宗)は20年、日蓮(日蓮宗)も十数年ここで修行しました」と話す。さらに浄土宗の法然、臨済宗の栄西、曹洞宗の道元など、身近に接する仏教各宗の開祖の多くは比叡山で学んだ。比叡山が「日本仏教の母なる山」と呼ばれる由縁だ。「今でいえば、仏教の総合大学のようだったんでしょうね」と小林事務長。

滋賀県内最大級の木造建築、国宝の根本中堂。1200年以上消えることのない「不滅の法灯」がともり、開山以来続く朝事もここで行われる

滋賀県内最大級の木造建築、国宝の根本中堂。1200年以上消えることのない「不滅の法灯」がともり、開山以来続く朝事もここで行われる

 国宝で総本堂の根本中堂(こんぽんちゅうどう)で開山以来1200年以上続く朝事(あさじ)に参拝した。午前6時30分、広い堂内はろうそくと、やはり1200年以上ともし続けられた「不滅の法灯」のみで薄暗く、香の香りが漂う。護摩壇の前に座る御導師の読経と鉦(かね)の音だけが響き渡る。厳粛な儀式だ。

 観光ホテル顔負けの宿坊・延暦寺会館など近代化した部分もあるが、「十二年籠山(ろうざん)」、7年間で地球一周相当の約4万キロを歩く「千日回峰(かいほう)行」など厳しい修行が今なお受け継がれる。少しあやかろうと会館での坐禅(ざぜん)体験に参加した。

 続いて、信長を討った明智光秀との縁が深い西教寺へ。開基は飛鳥時代の618年、聖徳太子によると伝わる。1486年、比叡山で学んだ真盛上人(1443~95年)が再興した。

 信長の比叡山焼き打ちの災禍に遭ったが、その後、坂本城主光秀が檀徒(だんと)となり復興。光秀、妻煕子(ひろこ)をはじめ一族の墓があるほか、総門は坂本城の城門を移築、鐘楼も陣鐘だ。

 本堂からは上人の教えを守り、500年以上鉦の音が絶えることがない。客殿は伏見城の旧殿を移築した物で、襖(ふすま)や壁には狩野派の見事な絵が描かれ、庭園も心が休まる。

 寺内にある坊の中島敬瑞住職(45)は「光秀は、妻の葬儀に当主は立ち会わないという当時のタブーを破ったといいます。謀反人という負のイメージが強いのですが、本当は心優しい愛妻家だったんでしょうね」と、光秀の人柄をしのぶ。

延暦寺会館では坐禅体験もできる=いずれも大津市で

延暦寺会館では坐禅体験もできる=いずれも大津市で

 三井寺も見どころの多い寺だ。奈良時代前期に建立され、比叡山で修行した智証大師円珍(814~891年)が開祖。

 仁王門をくぐると本堂で国宝の金堂がある。寺内に自坊を持つ福家紀明住職(55)によると「本尊の弥勒菩薩(みろくぼさつ)が安置されているが、秘仏のため、本尊の扉は開けてはいけないと言い伝えられている」という。

 近くには荘厳な音色で日本三銘鐘に数えられる「三井の晩鐘」、天智天皇らの産湯に用いられたと伝わる霊泉「閼伽井屋(あかいや)」。正面上部には左甚五郎の竜の彫刻が見える。少し進むと、比叡山の荒法師・武蔵坊弁慶が奪って比叡山まで引きずったと伝わる「弁慶の引き摺(ず)り鐘」(約2.2トン)がある。

 3寺を回り、葬祭などでしか接点がなかった仏教の奥深さを垣間見たような気がした。

 文・写真 植木幹雄

(2014年12月5日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
大津市へは、新幹線・京都駅でJR東海道線に乗り換え、大津駅まで約10分。

◆問い合わせ
びわ湖大津観光協会=電077(528)2772

おすすめ

まぜちゃい菜

まぜちゃい菜

★坂本ケーブル
全長2025メートルと日本一長い。
高低差484メートル、最大傾斜18度の線路をゆっくりと登っていく。
車両は窓の大きなヨーロピアンデザイン。
1927年の開業で、駅舎は25年に建てられた、しゃれた洋風建築。
片道大人860円、子ども430円。電077(578)0531

★延暦寺会館
根本中堂の近くにある。宿坊だが、れっきとした国際観光旅館。
坐禅や写経体験のほか、精進料理が楽しめる。
早朝、比叡山に登る交通手段がなく、朝事の参拝には、ここに泊まる必要がある。
電077(578)0047

★まぜちゃい菜
日本一の漬物を決めるT-1グランプリ受賞商品。
地元伝統野菜の日野菜の葉を主体に、青トマト、青唐辛子などを刻み、しょうゆで漬け込む。
ご飯に載せたり、混ぜたりするほか、スパゲティなどにも使う。
110グラム360円、145グラム500円。
丸長食品=電077(524)5055

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