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マクタン島・セブ島

マクタン島・セブ島 フィリピン 溶け合う多様な文化

フラメンコを披露するプランテーションベイのダンサー=フィリピン・マクタン島で

フラメンコを披露するプランテーションベイのダンサー=フィリピン・マクタン島で

 未明の雷で目を覚ました。金だらいをたたくようなごう音。雨が地を打つ。フィリピンの中部・セブ島に寄り添うマクタン島の海辺のホテルで、熱帯の夜明けを迎えた。

 しかし、午前7時になると、青い空が広がった。「朝夕の雨は、日常です」と従業員。部屋の入り口に、さりげなく置かれた傘の意味に気付いた。

 11月中旬というのに日が昇れば気温は30度を超え、猛烈な湿度。汗が噴き出す。水着に着替え、部屋の前から海水をホテルの敷地内に引き込んで造った人工のラグーンに飛び込む。熱した体を海風がなでる。

 ほかの宿泊施設とは少し離れた場所にある、このホテル「プランテーションベイ」の自慢は、従業員が自ら演じるダンスの舞台だ。演目の一つが「スペイン」。フラメンコなど10曲を男女20人が踊る。サービス精神いっぱいの笑顔と躍動的な振り付けが大きな拍手を浴びる。

 かつてフィリピンを統治したスペインの文化は、島の人々にも身近で親しみやすい。“自前公演”の出演者には特別手当が支給される一方、希望しても社内オーディションで厳選される。「私もうまく踊れたら、あの舞台に立てるのに」。女性従業員がつぶやいた。

バナナや色鮮やかな果物が並ぶマンダウェイ市場

バナナや色鮮やかな果物が並ぶマンダウェイ市場

 ポルトガルの航海者マゼランがセブ島に上陸したのが1521年。マクタン島民との戦いで負傷し、命を落とすが、その後、宗主国となったスペインの文化は土地に深く根付いた。

 フィリピンはその後、米国の統治を経て独立する。こうした歴史をたどり、東南アジアでは珍しく、国民の9割がキリスト教徒。公用語は英語とタガログ語だが、スペイン文化は言葉にも残り、バナナや魚介類が並ぶ街角の市場を「メルカード」と呼ぶ人もいる。

フィリピン最古のサントニーニョ教会の礼拝堂は丸い天井が特徴

フィリピン最古のサントニーニョ教会の礼拝堂は丸い天井が特徴

 900メートルの長い橋を渡り、隣のセブ島へ向かう。

 市の中心部にある、サントニーニョ教会で、島民のあつい信仰心を目の当たりにした。幼いイエス像を礼拝するための長い行列ができ、聖人の像をなでて祈りをつぶやく人たち。

 マゼランが立てたとされる木の十字架を保存した「マジェラン・クロス」の周りには、色とりどりのろうそくを1本10ペソ(約27円)で売り、その数と色に合わせて祈りをささげる中年女性たちがいる。赤いろうそくが愛、黄は健康、緑は成功-。フィリピン最古、1565年建造の教会のたたずまいは、ビーチリゾートで知られるこの島の、もう一つの顔だ。

 教会から南東へ歩いて10分、これもフィリピン最古の歴史を誇るサンペドロ要塞(ようさい)がある。1565年にスペインが建て始め、第二次世界大戦中は日本軍が捕虜収容所にも使った頑強な造り。今は観光名所になっている。

八角形の天井画とマゼランが立てた大きな十字架が残るマジェラン・クロス=いずれもセブ島で

八角形の天井画とマゼランが立てた大きな十字架が残るマジェラン・クロス=いずれもセブ島で

 ギギギィ。突然、木と石がこすれ合う音がした。観光ガイドのベビー・エスクヨスさん(43)が、要塞入り口の重厚な扉を、力任せに引いたのだ。「まだまだ頑丈だわ」。この音が、きっと昔も響いたのだろう。文化財だが、警備員もとがめずにほほ笑む。おおらかな国。

 マクタン島で、4カ月前からホテルマンとして働き始めた川原明さん(22)は神戸市出身。父親が日本人と米国人から生まれ、母親がフィリピン人とスペイン人から生まれた。

 日本語はもちろん、英語とタガログ語に加え、セブ地域のビサヤ語も話せる川原さん。「スペインの言葉も混じって人種もいろいろ。文化の多様性が、フィリピンの魅力です」

  文 ・福田要 
  写真・野村和宏

(2014年12月12日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
セブ島へは成田国際空港からフィリピン航空が1日2便運航しているほか、
中部国際空港からの直行便(週3便)も今月20日に就航する。
マクタン・セブ国際空港から市中心部まではタクシーで約40分。
島内の観光での移動はツアーかガイド、ホテルで呼んだタクシーの利用が安心できる。

◆問い合わせ
フィリピン政府観光省東京支局=電03(5562)1583=へ。
同省日本語ホームページも情報が充実。

おすすめ

マンゴーバンゴ

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★マンゴーバンゴ
セブ島のホテル「マルコポーロプラザ・セブ」が夕食時間帯に提供する、
マンゴーづくしのコース料理。2日前までの予約が必要。
事前に料金支払いが必要なため、旅行会社を通じて申し込む。
注文は2人前から。1人分1720ペソ(1ペソ=約2.7円換算で約4600円)。

★海水浴
セブ島での海水浴は、マクタン島東海岸に集中するリゾートホテルが、
それぞれ整備したプライベートビーチを利用するのが一般的。
写真は「シャングリラ・マクタン・リゾート・アンド・スパ」のビーチ。

★スパ
マクタン島やセブ市内ではホテルなどがマッサージ、エステ、入浴の施設を営み、人気を集める。
バナナの葉やココナツミルクを使ったフィリピン式のマッサージも。

「シャングリラ・マクタン・リゾート・アンド・スパ」のビーチ

「シャングリラ・マクタン・リゾート・アンド・スパ」のビーチ

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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