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三国湊

三国湊 福井県 北前船が商人文化育む

日本海の荒波が打ち寄せる東尋坊の岸壁

日本海の荒波が打ち寄せる東尋坊の岸壁

 北陸特有の冬ざれた曇り空が頭上を覆う。目の前に、格子戸の古い家並みが続く。

 福井県坂井市三国町。古くは三国湊(みなと)。県内を貫く九頭竜(くずりゅう)川の河口の港町として、江戸時代から明治初めにかけては北前船の寄港地として大いに栄えた。今も街の随所に華やかな商人文化の面影を残している。

 訪れたのは初雪が降る前だった。市民団体「三國會所(みくにかいしょ)」の専務理事、中田幸男さん(71)の案内で街を歩いた。中田さんたちは「三国湊の歴史と文化を生かした街づくりをしたい」と町家の改修、活用などに取り組む。

 まずは三国湊のシンボル、三国神社へ。毎年5月の例大祭、三国祭には巨大な武者人形を載せた山車(やま)が街を練る。参道正面の随身門が風格を感じさせ、敷石、石段は青みがかった笏谷石(しゃくだにいし)だ。福井市の足羽山(あすわやま)で採掘され、旧福井藩時代には九頭竜川を船で下り、三国湊から北前船で全国各地に搬出された。

北前船が盛んだったころの面影を残す料理茶屋「魚志楼」

北前船が盛んだったころの面影を残す料理茶屋「魚志楼」

 山車の巡行路に沿って進む。「帯の幅ほど」といわれる狭い町並みのところどころに山車蔵がある。中にはガラス張りの扉もあり、迫力たっぷりの武者人形をのぞくことができる。

 「宮太旅館」の看板が出た古い建物があった。2軒を足したようなかぐら建てという三国独特の建築。旅館は休業中だが、声を掛けると当主の宮本忍さん(71)が快く入れてくれた。中庭があり、思いのほか広い。奥の間の掛け軸は幕末の福井藩主、松平春嶽の書だという。「せっかくの建物だから大事にしないと」と話した。

 通りには廻船(かいせん)問屋だった豪商、森田家が明治になって銀行業を始め、1920(大正9)年に建てた旧森田銀行本店。現存する県内最古の鉄筋コンクリート造りだ。材木商の町家を復元した旧岸名家住宅などもあり、観光客に人気のエリアだ。

 「思案橋」という石橋に出合う。旧福井藩と旧丸岡藩の境で、この先に旧丸岡藩時代の流れをくむ遊郭があった。井原西鶴は「北国にまれな色里あり」と称した。江戸期の俳人、哥川(かせん)はここの遊女だった。橋の名は遊郭に行こうか戻ろうか思案したことからつけられたという。

 芸者の置き屋だった料理茶屋「魚志楼(うおしろう)」に寄る。明治初めの創業で、かぐら建ての建物は国の登録有形文化財。「創業当初は北前船、その後は漁業関係者と時代に合わせてやってきた。文人、作家も多く来られたと聞いている」とおかみの松崎真理子さん。甘えび天丼がこの店の自慢料理だ。

九頭竜川(右後方)を望む高台に立つみくに龍翔館=いずれも福井県坂井市で

九頭竜川(右後方)を望む高台に立つみくに龍翔館=いずれも福井県坂井市で

 街中から高台に見えていた白亜五層八角形の「みくに龍翔館」に車で向かう。1879(明治12)年に建設された木造の龍翔小学校が原型で、設計はオランダ人技師エッセル。当時では珍しい洋風建築。特異な形も“だまし絵”で知られるエッシャーの父と聞けば納得する。建設費は三国商人らが出し合った。三国湊の繁栄ぶりをほうふつとさせる。

 1914(大正3)年に壊されたが、81年に外観を忠実に鉄筋コンクリートで復元された。館内には5分の1の大きさの北前船の模型も。学芸員の角明浩(かどあきひろ)さん(36)が「北前船の船大工技術から仏壇、たんすなどの三国の工芸文化が生まれた」と説明した。

 鉄道網の発達で商港としての役割を失い、漁港となった。三国港はいま越前ガニ漁のさなか。このカニも冬の三国を訪ねる大きな楽しみとなっている。

 車で10分も走れば名勝・東尋坊へ。日本海の荒波が20メートルを超す柱状節理の岸壁に激しく打ち寄せていた。

 厳しい風土の中で育まれた三国の文化。ライトアップされ、夜空に白く輝く龍翔館の姿に、伝統文化を引き継いでいこうとする三国の人々の心意気を感じた。

 文・写真 朽木直文

(2015年1月9日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
坂井市三国町へは、JR福井駅から、えちぜん鉄道三国芦原線で三国駅まで約50分。車は北陸道・丸岡ICから約30分、または金津ICから約25分。

◆問い合わせ
坂井市観光連盟=電0776(43)0753、三國會所=電0776(82)8392

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三国バーガー

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★三国湊町家館
かぐら建ての旧家を改装した三国湊の歴史や散策の情報拠点。
解説員も常駐。レンタサイクルや小型の電気自動車(EV)の貸し出しも。
電0776(82)8552

★三國湊座
食事、喫茶、土産物販売を兼ねるツーリストセンター。
福井県産ビーフと国産ポーク、三国産ラッキョウを米パンで挟んだ三国バーガー(580円)が名物。
電0776(81)3921

★江戸小唄 竹よし
三國湊座向かいの町家で三味線奏者の長沼慶江さんが「三国の伝統を継承したい」と開いている。
お茶菓子付き3曲1000円。演奏の合間の長沼さんの話も楽しい。
電0776(82)0120

★丸岡城
三国町から車で約30分。現存する日本最古の天守閣とされる。日本100名城。
有名な「一筆啓上 火の用心 お仙泣かすな 馬肥やせ」のお仙は丸岡城6代目城主、
本多成重の幼名仙千代のこと。敷地内にこの石碑がある。
石碑が縁で日本一短い手紙文の一筆啓上賞が始まった。
入場料は大人300円、小中学生150円。電0776(66)0303

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