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教会群とキリスト教遺産

教会群とキリスト教遺産 長崎県 胸打つあつき信仰心

いけす網の修繕をする坂谷サチ子さん。向こうに瓦屋根の旧五輪教会堂が見える=久賀島の五輪地区で

いけす網の修繕をする坂谷サチ子さん。向こうに瓦屋根の旧五輪教会堂が見える=久賀島の五輪地区で

 「悪かこたーなか。こなして教会も残されたもんじゃし(悪いことはない。このように、教会も残されたことだし)」

 長崎県五島列島久賀(ひさか)島の五輪(ごりん)地区。海岸で漁師の坂谷秀雄さん(72)と妻サチ子さん(69)は、いけす網の修繕をしながら笑顔で話す。クリスチャンだという2人の向こうには、木造の旧五輪教会堂が見えた。

 「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」が2016年夏、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産登録の審査にかけられることが決まり、今県内ではその話題でもちきり。「世界遺産に選ばれたらうれしいですか」との質問に答えてくれたのだ。

 長崎県にはかくれキリシタンの悲しい歴史がある。教会群などを見て回る今回の旅は、長崎県平戸島から始まった。1550年、イエズス会の宣教師フランシスコ・ザビエルが布教を始めた地だ。長崎巡礼センターの入口仁志事務局長は「当時の領主はキリシタン嫌いだったが、布教を許した。貿易をしたかったのでしょう」と説明する。しかし、秀吉、家康らによって迫害され、信者たちは明治初期まで潜伏することになる。

海をバックに穏やかにたたずむ水ノ浦教会堂=福江島で

海をバックに穏やかにたたずむ水ノ浦教会堂=福江島で

 平戸の田平(たびら)天主堂の聖堂に入ると、静寂の中に美しいステンドグラスが浮かび上がる。自然に心が落ち着く。橋を渡った生月(いきつき)島には、山田教会が夕日に映えていた。両教会とも、日本人建築家鉄川与助が設計、施工した。鉄川は木造、石、れんが、コンクリートなどの資材に挑戦し、多くの教会建築に貢献したことで有名。彼の和洋折衷させたデザインは見ていて飽きない。

 生月島の平戸市生月町博物館「島の館」は、「捕鯨」「島のくらし」「かくれキリシタン」のゾーンに分かれて展示。学芸員の中園成生さん(51)は「江戸時代、ここは捕鯨の島で、かくれキリシタンも捕鯨を手伝っていた。大勢の人手がいるから、役人にはキリシタンの存在を知らせなかったようです」と解説してくれた。

信者たちが隠れていたといわれるキリシタン洞窟=長崎県五島列島の若松島で

信者たちが隠れていたといわれるキリシタン洞窟=長崎県五島列島の若松島で

 平戸からチャーターした船で五島列島・中通島の有川港に渡った。船は大いに揺れた。かつて、キリシタンが大村藩の外海(そとめ)地区などから五島列島に移住した歴史がある。その理由の一つを聞いて驚いた。「キリシタンは固まって住んでいた。人工中絶が許されていないので、人口が増え、新天地が必要になった」(ガイド)というのだ。

 港近くの「割烹(かっぽう)扇寿」で食べた名物の五島うどんでほっとひと息。海鮮丼もうれしい。

 海上タクシーで島々を回る。若松島のキリシタン洞窟に上陸。波風が強くてめったに船を着けられないが、当日は好天に恵まれた。信者たちは迫害から逃れて洞窟に隠れた。しかし、料理する煙が見つかり、捕まったという。洞窟の中を風が抜け、悲しい気分にさせる。信者の苦しみが伝わってくるようだ。

 頭ケ島(かしらがしま)の頭ケ島天主堂、奈留島の江上天主堂、福江島の水ノ浦教会堂など、いくつもの教会が木々の緑と、空と海の青色の中に浮かび上がる。人間の歴史遺産と自然を満喫できる。

静寂に包まれた大浦天主堂の内部=長崎市で

静寂に包まれた大浦天主堂の内部=長崎市で

 長崎市に戻り大浦天主堂を訪ねた。参道は外国人が目立つ。天主堂には「信徒発見」の記念碑があった。1865年、かくれキリシタン15人が天主堂にやってきて、神父にキリスト教を信仰していることを告白。神父は、厳しい禁教令の中、250年も信仰が受け継がれていたことに驚いた。そのニュースは世界を駆け巡った。今年は、「信徒発見150年」なのである。

 文・写真 吉岡逸夫

(2015年1月23日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
長崎空港へは羽田、中部空港から約1時間半~2時間。
空港からJR佐世保駅まではリムジンバスで約1時間半。
佐世保駅からたびら平戸口駅へは松浦鉄道で約1時間20分。
佐世保港から中通島の有川港は高速船で約1時間20分。
フェリーで約2時間半。

◆問い合わせ
長崎県観光連盟=電095(826)9407、
長崎巡礼センター=電095(893)8763

おすすめ

箱フグのみそ焼き

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★福田酒造
平戸市で日本酒だけでなく焼酎も製造。
日本酒「福鶴」、元祖じゃがいも焼酎「じゃがたらお春」、
秘酒「かぴたん」などが売れ筋。
博物館もあり、酒蔵見学もできる。電0950(27)1111

★松浦史料博物館
平戸市の旧平戸藩主松浦家と平戸の歴史に関する資料を収蔵している。
建物は「旧松浦家住宅」で県指定文化財。
松浦家歴代当主の画像、武具や茶道具や文書など3万点が保管されている。
電0950(22)2236

★五島コンカナ王国
福江島にあるリゾート施設。
温泉も緑も、宿泊施設も充実。
地元で捕れる箱フグのみそ焼き(特大サイズ2000円)や豊富な魚介などの食事もできる。
電0959(72)1348

★堂崎天主堂キリシタン資料館
布教時代から迫害を経て復活に至る信仰の歴史資料を展示している。
建物は、五島初の洋風建築とされ、福江島の静かな海のそばに立つ。電0959(73)0705

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