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五箇山相倉集落周辺

五箇山相倉集落周辺 富山県南砺市 受け継いだ互助の精神

静寂な雰囲気が漂う五箇山の相倉合掌造り集落

静寂な雰囲気が漂う五箇山の相倉合掌造り集落

 JR城端(じょうはな)駅前から車で約20分。相倉口バス停を過ぎると昔話に出てくるような風景が目前に広がる。手を合わせたような形の合掌造り家屋群だ。1995年、世界文化遺産に登録された南砺(なんと)市の五箇山相倉(ごかやまあいのくら)集落だ。現存する合掌造り家屋は23棟。遺産的な記念物ではない。今も17世帯が生活している。

 五箇山は標高1500メートル級の山々に囲まれているから降雪も多い。合掌造りの切り妻屋根の角度が60度の急勾配に保たれ、雪が落ちやすい構造になっているのもこのためだ。歩いてみると下から見上げる正三角形のような急な屋根には驚かされる。すぐにも雪が落ちてきそうだ。犬小屋も合掌造りを模して作られているのはほほ笑ましい。

 五箇山の案内もする南砺市観光協会の山崎友紀恵さん(40)は「雪上を歩けるのも五箇山ならではの雪遊び。2~3月の夜から朝にかけて放射冷却で雪の表面が固まるため、かんじきを履かなくても雪の上を歩けます」という。

 合掌造りの屋根裏は2層から3層になっている。天井は細い竹のすのこなどで隙間をあけ、いろりの熱が届く構造になっている。「かやぶきの屋根もススが付くほど腐らない。10年以上もたすには熱が大事」(山崎さん)という。屋根裏では養蚕。江戸時代には加賀藩の密命を受けて床下で火薬の原料となる塩硝を作った。土間では和紙をすく。合掌造りは住居であるとともに家内制工場でもあったようだ。

担当の女性の指導で卓上機を体験する観光客

担当の女性の指導で卓上機を体験する観光客

 この生活を支えたのが室町時代にこの地に伝えられたという住民同士の互助組織「結(ゆい)」だ。助け合う伝統は今も残る。合掌造りのかやぶき屋根のふき替えも、昔から村民総出で行った。今はボランティアも加わり、数日から1週間でふき替える。集落内の飲食店「まつや」で山菜うどんを食べると心底温まる。合掌造りの民宿も6軒。いずれも互助の精神から来る「おもてなしの心」を感じさせる。

 五箇山で育てた蚕の繭から生糸を取り出し、質のよい絹織物を生産してきたのが城端だ。江戸時代から「加賀絹」として江戸、京都、大坂に大きな需要を生み出した。絹業発展を象徴する建物が「城端織物組合事務棟」。現在は「じょうはな織館(おりやかた)」として当時の雰囲気を伝える。

 れんがの外壁を横目に中に入ると、吹き抜けの階段、高い天井から下げられた照明が大正時代の建物を感じさせる。ここでは「卓上機」と、足踏み式手織り機「高機(たかばた)」による絹の機織り体験が人気だ。観光ガイドグループ「機(はた)の声じょうはな」の長田久美さんは「難しい作業ではありません。専属担当者が指導します。絹糸が織りなす美しい世界を体験してください」と目を輝かせる。

福光美術館で棟方志功の「二菩薩釈迦十大弟子」の屏風に見入る来館者=いずれも富山県南砺市で

福光美術館で棟方志功の「二菩薩釈迦十大弟子」の屏風に見入る来館者=いずれも富山県南砺市で

 JR城端線の福光駅で下車すると版画家棟方志功の作品を展示した南砺市立「福光美術館」がある。棟方志功は45年から6年8カ月間、南砺市(旧福光町)に疎開して作品を制作していた。展示作品では大きな「二菩薩釈迦(ぼさつしゃか)十大弟子」の屏風(びょうぶ)が目を引く。副館長で学芸員の渡辺一美さん(58)は「福光時代は思想の形成過程で、仏に帰依して魅力が大きく開花した」と解説してくれた。

 近くには棟方志功記念館「愛染苑(あいぜんえん)」と、志功の旧居を移築した「鯉雨画斎(りうがさい)」もある。青森市の実家が焼失して棟方の暮らしぶりを示す施設は南砺市にしかない。3月14日に北陸新幹線が開業すると、JRで東京と南砺市間の所要時間は3時間40分に短縮。この記念館も南砺観光の目玉になりそうだ。

  文・写真 尾崎行雄

(2015年2月6日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
南砺市へは、JR高岡駅でJR城端線に乗り換え、城端駅まで約1時間。
北陸新幹線開業後は新高岡駅で乗り換える。
車は東海北陸道・福光ICから城端まで約5分。

◆問い合わせ
南砺市観光協会=電0763(62)1201

おすすめ

まつや定食

まつや定食

★世界遺産バス
JR高岡駅-五箇山は毎日4往復運行している。
「五箇山フリーきっぷ」(2500円)が便利。
加越能バス=電0766(21)0950

★お休み処・茶店「まつや」
五箇山で採れた山菜の天ぷらや堅豆腐などの郷土料理を盛った「まつや定食」(1650円)が人気。
電0763(66)2631

★じょうはな織館
体験プログラムは卓上機コースが織初(おりはじめ)(30分、1100円)から織伝(おりつたえ)(5時間、8200円)までの4種類。高機コースは絹初(きぬはじめ)(30分、1600円)から絹習(きぬならい)(3時間、6200円)までの3種類。入館無料。
水曜(祝日を除く)休館。電0763(62)8880

★福光美術館
棟方志功の主な所蔵作品は「二菩薩釈迦十大弟子」のほか「瞞着川板画巻(だましがわはんがかん)」(画帳39柵)「流離抄板画柵(りゅうりしょうはんがさく)」(額装31柵)など。
JR福光駅から車で約7分。
火曜、祝日の翌平日休館。
電0763(52)7576

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