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名護屋城跡

名護屋城跡 佐賀県 天守の姿に思いはせ

名護屋城跡の大手口にそびえる石垣。破壊された石も転がったまま残る

名護屋城跡の大手口にそびえる石垣。破壊された石も転がったまま残る

 見上げるほど高く積み上がった玄武岩。到着してすぐ目に飛び込んできたのは、確かにこの地に城があったことを証明する堅固な石垣だった。

 玄界灘に突き出た九州北部・東松浦半島の北端。今から420年前、大坂城に次ぐ規模を誇る名護屋城が築かれた。東京ドーム3.5個分もの広大な敷地は国の特別史跡に指定され、多くの歴史ファンをいざなう。

 江戸時代初期の一国一城令などで城はことごとく壊され、天守閣はおろか御殿もやぐらも残っていない。あるのは縦横に張り巡らされた石垣ばかり。「城がないからこそ、見る人の想像がかき立てられる。そんな観光もいいでしょう」。名護屋城跡観光案内所に詰める城跡ガイド藤崎美和さん(47)が楽しみ方を教えてくれた。

 城は国内統一を果たした豊臣秀吉が海外進出をもくろみ、朝鮮出兵に向けて整備した軍事拠点。昨年のNHK大河ドラマになった黒田官兵衛や加藤清正らに築かせ、全国の諸大名を動員して朝鮮半島へ突き進んだ。後に無謀と評される計画は失敗に終わり、城は「夢の跡」となった。

 藤崎さんのガイドで城跡を進んでいく。高々と石垣が連なり、足元にはごつごつした石が無造作に転がる。破壊された石垣がそのまま残されているのだという。順路に沿って東出丸、木々が茂る三ノ丸を抜け、石段を駆け上がればもう本丸だ。

 天守閣があった場所はやはり何も残っておらず、今では展望台といった趣。晴れた日には遠く対馬まで望める海の景色を楽しんだ後は、目を閉じて往時に思いをはせてみる。豪華な金箔(きんぱく)瓦をふいた5層7階もの天守閣。そんな建物がこの場所にあったことを想像すると、実物を1度見てみたいとの思いに駆られた。

名護屋城博物館に展示されている城と城下町の復元模型

名護屋城博物館に展示されている城と城下町の復元模型

 城跡近くの佐賀県立名護屋城博物館に、その願いを少しかなえてくれる展示があった。

 かつての姿を記録した絵図に基づき、広大な城を復元した300分の1の立体模型。高くそびえる天守閣や城内に立ち並ぶ多数の建物、そして周りに広がる城下町が表現されている。「豊臣政権の粋を集めた城だった」と久野哲矢学芸員(34)。不幸な歴史として語られる朝鮮出兵の是非はともかく、スケールの大きな城が失われてしまったことが残念に思えて仕方ない。

 城を中心とする半径3キロには、朝鮮出兵で全国から呼び寄せられた諸大名の陣跡が約130カ所も確認されている。徳川家康、前田利家、伊達政宗、黒田長政…。当時の名だたる武将たちが、これほど一堂に集結した場所はあまりないだろう。城跡から近い家康と利家の陣跡を訪ねてみると、建物はなくとも、状態の良い石垣がかつての面影をたたえていた。

港町に活気をもたらす呼子朝市。にぎやかな会話があちこちから聞こえる=いずれも佐賀県唐津市で

港町に活気をもたらす呼子朝市。にぎやかな会話があちこちから聞こえる=いずれも佐賀県唐津市で

 城跡から車を10分ほど走らせれば、イカで有名な呼子港。海岸通りから1本入った路地で、元日を除いて毎朝開かれている日本三大朝市の1つといわれる「呼子朝市」をのぞいた。

 「寄っていかんね」「ちょっと味見ばしてんね」。200メートルの通り沿いに陣取る年配の女性たちから威勢の良い声が掛かる。イカの一夜干しにアジのみりん干し、生きた根魚、ナマコ、ウニ。近海で育った海の幸がところ狭しと並ぶ。

 リヤカーで販売する浜中ひろこさん(81)は、朝市に出て40年。お薦めという手製のアジのみりん干しを味見させてもらうと、口いっぱいに優しいうまみが広がった。「蜂蜜とかいろいろ使っとるけれど、詳しいことは秘密よ」。作り方は教えてくれなかった。

 そんなたわいもない会話をいくつも重ね、通りを歩いていく。帰路に就くころには、思いがけず買い物袋で両手がいっぱいになっていた。

  文・写真 河北彬光

(2015年2月27日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
名護屋城跡へは、福岡空港から地下鉄・JR筑肥線で唐津駅へ。
駅からタクシーで30分。路線バスもあるが本数が限られる。

◆問い合わせ
名護屋城跡観光案内所=電0955(82)5774。
周辺も含めた観光情報は唐津観光協会=電0955(74)3355

おすすめ

通称「くるくる」

通称「くるくる」

★城跡ガイド
大手口から天守台を目指す40分コースが一般的。
無料だが協力金100円が必要。要予約。
名護屋城跡観光案内所で受け付けている。

★名護屋城博物館
日本と朝鮮の交流史、名護屋城と陣跡の概要を展示紹介する。
午前9時~午後5時。月曜休館。無料。
電0955(82)4905

★呼子地区
港付近の料理店約20軒で名物のイカ活(い)き造りが味わえる。
定食1人前2700~3000円。げそは天ぷらや塩焼きにしてもらえる。
港ではイカを回して干す通称「くるくる」も見もの。
呼子朝市は午前7時半~正午。

七ツ釜

七ツ釜

★七ツ釜
玄界灘の荒波で浸食された玄武岩の景勝地で7つの洞窟がある。
呼子港から1時間おきに出る遊覧船「イカ丸」で往復40分。
中学生以上1500円、小学生750円。陸地からも見物できる。

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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