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マニラ

マニラ フィリピン 多文化に育まれた笑顔

世界遺産のサン・アグスティン教会。第2次世界大戦の爆撃からも難を逃れた=フィリピン・マニラ市で

世界遺産のサン・アグスティン教会。第2次世界大戦の爆撃からも難を逃れた=フィリピン・マニラ市で

 夕日で、淡い色合いになった姿は、どこか優しげだ。マニラ市中心部にあるサン・アグスティン教会。肌を刺す日差しが和らいだ日曜日の午後6時、ミサを知らせる教会の鐘が鳴り響いた。多くの家族連れがおしゃべりしながら、重厚な石造りの門をくぐっていく。手をつないだ子どもの未来を祈るのだろうか。

 フィリピンの語源は、この地を植民地にしたスペイン王、フェリペ2世(1527~98年)に由来する。マゼランの来航以来、侵略や戦争に翻弄(ほんろう)されながらも、アジア唯一のカトリックの国として歩んできた。人々は笑顔を絶やさず、温かく迎えてくれた。

 17世紀初めに完成したこの教会は、格調高いバロック様式。壁画やシャンデリアが敬虔(けいけん)な信者を明るく出迎える一方、幾度もの大地震に耐えた頑丈な造りだ。歴史的地区「イントラムロス」にある。地区の名前はスペイン語で「壁の内側で」という意味だそうだ。日本軍が支配していた第二次世界大戦中、米軍による爆撃で多くの建物は壊滅したが、主に1980年代に修復された。サン・アグスティン教会は、かろうじて戦禍から逃れ、93年、世界文化遺産に登録された。

 地区の最北にあるサンティアゴ要塞(ようさい)の後方にはパッシグ川が流れ、対岸にはスラム街が広がる。教会の周りで物乞いをする子どもや、土産品を押しつける物売り。戦後70年を迎えた今なお残る貧しさに、胸が締め付けられた。

 「この国の経済発展は、進化の途上です」。観光省に勤めるルイサ・リアーベさんの言葉には熱がこもっていた。イントラムロスから5キロほど南の埋め立て地区は、カジノ特区になり数多くのホテルが建設中。日本人シェフの松久信幸氏が監修した「ノブ ホテル マニラ」はことし2月に開業した。日光を浴びてガラス一面が金色に輝く外観は、圧倒される豪華さ。隣の草ぼうぼうのホテル予定地が、急速な成長を物語る。

食の祭典「マドリード・フュージョン」の会場

食の祭典「マドリード・フュージョン」の会場

 フィリピンでは、ことしを「観光年」と位置付け、さまざまな挑戦をしている。スペインで10年以上続く国際的な食の祭典「マドリード・フュージョン」をマニラに招致した観光省の取り組みもその一つ。レセプションでベニグノ・アキノ大統領は両国のつながりを強調。「世界に友好の輪を広げ、皆さんを歓迎したい」との言葉に、会場からは盛大な拍手が起こった。

 ミシュラン三つ星シェフが調理技術を披露する一方、ミンダナオ島の港町・サンボアンガのブースではカニやアサリを使った郷土食が並んだ。将来を支える料理人の卵たちが、熱心に試食していた。

 この日は真夏のマニラとしても猛暑の気温35度。涼を求めて標高約700メートル、南へ約60キロ離れた避暑地・タガイタイへ逃れた。東京で日本語を学んだという通訳のノベン・サントスさんが「軽井沢みたいでしょ」と話すように高級別荘地だった。高台では、さわやかな風が吹き抜け、青色に輝くタール湖の中央には、今も活動する小さな火山が顔を出していた。

タガイタイの高台からは、青く輝くタール湖や火山が望める

タガイタイの高台からは、青く輝くタール湖や火山が望める

 この絶景を一望できる人気のレストラン「ジョセフィン」は満席だった。4、5の両月は学校の夏休み。慌ただしい日常から逃れ、ささやかなぜいたくを味わいに来たのだろうか。旅行者らしい家族連れが、テーブルいっぱいに並んだ大皿に手を伸ばしていた。

 食事を終え、ゆったりしていると日本でも知られるデザート「ハロハロ」が運ばれてきた。タガログ語では「まぜこぜ」の意味だ。日本から渡った遊女・からゆきさんが、明治期に始めたともいわれる。アイスクリームやウベ芋のあんなど何種も具が載ったかき氷。つらい歴史を抱えながらも、日本やスペイン、米国の文化を取り込んだ味わい深いデザートだった。穏やかな甘さに癒やされながら、「この地の人の笑顔が、さらに輝くように」と願わずにはいられなかった。

 文・写真 宮崎裕子

(2015年5月22日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
マニラへは中部、成田、羽田などの各国際空港から直行便が就航している。
マニラ中心部からタガイタイへは車で約2時間。
バスの利用は不便なので、タクシーがお勧め。

◆問い合わせ
フィリピン政府観光省東京支局=電03(5562)1583

おすすめ

シニガン(写真手前)

シニガン(写真手前)

★買い物
マニラ首都圏で、いろいろな商業施設が集積しているマカティ地区が便利。
ショッピングモールのグロリエッタやグリーンベルトでは、高級ブランドの商品が割安で購入できる。
おしゃれなレストランやスパもある。

★フィリピンの味
東南アジア料理は辛いイメージだが、ココナツオイルやナッツなどを使った料理は、いずれも甘めで食べやすい。
代表的なシニガンは360ペソ(1フィリピンペソ=約2.67円)。
厚切りの豚肉などが入った野菜たっぷりのスープで、酸味が食欲をそそる。
グリーンマンゴーのシェーク(110ペソ)は青リンゴのような味。

★ジプニー
駐留米軍払い下げのジープを改造したのが始まり。
乗り合いタクシーで、料金が安く庶民の足にもなっている。
車体に書かれた行き先を確認して乗る。
路線内なら、どこでも乗り降りできる。

ジプニー

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