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トップエンド

トップエンド オーストラリア 大自然息づく伝統文化

岩陰に残る先住民族のロックアート=オーストラリアのカカドゥ国立公園・ノーランジーロックで

岩陰に残る先住民族のロックアート=オーストラリアのカカドゥ国立公園・ノーランジーロックで

 雨期が終わり乾期に入ったばかりのオーストラリア・ノーザンテリトリー準州の北部地域、トップエンドの空は青く、風は湿り気を帯びていた。雨期、乾期の2つの季節と、1年を6つに分ける先住民族アボリジニの季節を一緒に記したカレンダーを街で見かけ、「多様さ」という言葉が頭に浮かんだ。

 州都ダーウィンから東へ260キロ、ほとんど信号のない道を車で進み、カカドゥ国立公園へ。この国の原風景を残すという約2万平方キロメートル、四国ほどの広大な面積を誇る。ユーカリや幹の白い高木と背の高い草の熱帯性の疎林が続き、時折、川や湿地、岩山や絶壁などが顔を出す。18世紀に英国人が入植し、1970年代に先住民族に返還された土地なのだが、土地を所有するという概念は先住民族に元来なく、代わりに国が管理しているという成り立ち。自然と文化を備えた「世界複合遺産」に登録されている。

 先住民族が岩に描いた壁画(ロックアート)を見た。古くは2万年前に記され、同じ技法で描き継いできたという。巨岩のへこみに、赤茶色や白色の線がおおらかに躍る。1.5メートルほどの大きな魚や首の長い亀、男女のダンス、漁への戒めや「雷男」と妻…文字を持たない彼らが伝えた食料や部族のルール、天地創造。狩猟をし、移動をし、大地の霊を大事にして暮らすという彼らが感じていたものはなんだろうと、見つめるしかない。公園内にはこうした壁画が5000もある。

ハスの葉の上を跳びはねるジャカナ=カカドゥ国立公園・イエローウォーターで

ハスの葉の上を跳びはねるジャカナ=カカドゥ国立公園・イエローウォーターで

 午後、林のあちこちで火が放たれた。草の芽吹きを誘う野焼き。雨期の名残の湿気で翌朝には自然に消える。先住民族の習慣だったが、今は公園がコンピューターで管理していると聞いて、おもしろかった。ウビルロックという岩山に登ったら360度の眺望が開け、緑が美しかった。とにかく広い。園内には元ウラン鉱山もあり、かつて東京電力福島第一原発でも燃料に使われた。先住民族は採掘に反対していた。3.11の後、彼らの長老は「私たちは、うちひしがれている」と国連事務総長に手紙を送った、という話も聞いた。

 夕方、イエローウォーターという湿原をクルーズ船で回った。静まり返って野鳥の鳴き声しか聞こえない。白サギが羽ばたき、マガモが群れ、カワセミが水面近くを鋭く横切る。ハスがピンクの花を咲かせ、葉の上をジャカナという頭の赤い鳥が跳びはねる。290種の鳥が確認されたラムサール条約登録湿地。夕日に照らされワニが1頭、背中をくねらせて泳いでいった。

 野生の動物はたくさん見た。ワラビーや犬に似たディンゴ。高さが5メートルもあるアリ塚が墓標のように立ち並んでもいた。雨期に水没しないよう地上につくった巣。アリがおなかにためた液を吸ったら酸っぱかった。南下して、ニトミルク国立公園で渓谷を船から見たり、リッチフィールド国立公園の滝つぼで遊んだりと、水辺でくつろぐ観光客や地元っ子にも会った。

 キャサリンという町で先住民族に絵を教えてもらいにギャラリー「Top(トップ) Didj(ディジー)」に寄った。草原で生まれ、狩りで生活したという推定52歳のマニュエルさんは「子どものころ初めて白人を見たときはびっくりして友達と逃げたよ」などと、にこにこして話しながら、祖父から教わった描き方を見せる。今は町で現代的な暮らしをするが、子や孫には昔の話を伝えている。狩りのやり投げも実演してくれて、その軽やかな足取りを見ていたら、湿原の静けさを思い出した。

湿原の水路に木の影を落とす夕日=カカドゥ国立公園・イエローウォーターで

湿原の水路に木の影を落とす夕日=カカドゥ国立公園・イエローウォーターで

 「ボウボウ」と彼らのあいさつをして去った。また会いましょう、という意味だ。

  文・写真 鈴木久美子

(2015年7月10日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
ダーウィンへはマレーシア航空を利用の場合、成田、関西の両国際空港からクアラルンプール経由で。
成田からは17時間15分(うち乗り継ぎ4時間50分)。

◆問い合わせ
ノーザンテリトリー政府観光局日本事務所=電03(3225)0008

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★現地ツアー
日本語ツアーをシドニーの「AATKings」が組んでいる。

★バラマンディ料理
白身魚のバラマンディはソテーやフィッシュ・アンド・チップスなどにしてよく食べられる。先住民族の壁画にもあった。

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