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壱岐島

壱岐島 長崎県 神々を敬い神楽守る

舞人も楽人も神職だけが務める住吉神社の壱岐神楽

舞人も楽人も神職だけが務める住吉神社の壱岐神楽

 のびやかな笛と太鼓の音に乗って、舞人が踊る。繰り返す素朴な調べに、古(いにしえ)の世界に引き込まれていくようだ。

 九州北部の玄界灘に浮かぶ壱岐島。南北17キロ、東西15キロの島に、壱岐千社といわれるほど、大小さまざまな社があり、神々の島と呼ばれる。室町時代以来、約700年の歴史を持つという壱岐神楽は、その島で大事に守られてきた。

 壱岐神楽は、舞も、笛、太鼓を奏でる人もみな神職ばかり。「神楽を覚えなければ、壱岐の神職は務まらない」と、住吉神社禰宜(ねぎ)の川久保貴司さん(42)。笛は11年目。現在、約30人の神職が保存会を結成、島内の各神社の例祭などで神楽を奉納している。

 12月20日に同神社で1年の締めとして行われる「大大(だいだい)神楽」は、舞人・楽人が12人以上で7、8時間にも及ぶ。

壱岐のモンサンミシェル。干潮で地続きとなった小島神社(中央の島)

壱岐のモンサンミシェル。干潮で地続きとなった小島神社(中央の島)

 壱岐は古事記にも、いざなぎといざなみの2神が生み出す5番目の島として登場する。歴史が古く、由緒のある神社も多い。平安時代の延喜式神名(じんみょう)帳には、住吉神社をはじめ24社が記されている。九州全体で98社だから、約4分の1を占める。その一つ、月読神社は、京都の松尾大社の摂社、月読神社の元宮とされ、日本神道発祥の地ともいわれる。

 最近、「壱岐のモンサンミシェル」と話題なのが、内海湾の小島神社。潮が満ちているときは石の鳥居が海に浮かんでいるだけだが、潮がひけば、歩いて渡ることができる。干上がった浜で石笛を見つけることもあるとか。「見つけても吹くだけで持ち帰るのはだめですよ」と島のガイド、伊佐藤(いさふじ)由紀子さん(55)がくぎを刺した。

魏志倭人伝の世界に浸ることができる原の辻一支国王都復元公園

魏志倭人伝の世界に浸ることができる原の辻一支国王都復元公園

 壱岐は今年、「国境の島 壱岐・対馬~古代からの架け橋~」として文化庁の「日本遺産」の認定を受けた。3世紀の「魏志倭人伝」に登場する一支(いき)(壱岐)、対馬、さらに邪馬台国などの国で、王都が特定されるのは壱岐だけという。

 その都が「原(はる)の辻(つじ)」遺跡。弥生時代の王宮、高床式の倉などを復元した原の辻一支国王都復元公園が、特色である環濠(かんごう)などとともに整備されている。

 入り口にある原の辻遺跡ガイダンスでは発掘の歴史なども紹介。復元集落に向かう時、職員に「古代のロマンに浸ってきてください」と送り出された。

 公園を望む高台には故黒川紀章氏設計の一支国博物館がある。館内に入ると、魏志倭人伝の記述が大写しになっている。それによれば、当時の一支国は農耕や交易を主体に約3000世帯。「数字は誇張があるのでは」と学芸員の河合恭典さん(38)。

 当時の生活の様子を再現したジオラマがおもしろい。精巧なミニチュア人形は住民がモデルだ。ガイドの伊佐藤さんの姿もある。農耕や家造りなどを渡来人が教えている。当時の壱岐は文化の先進地だった。「人形一体が給料分くらいしますよ」と河合さんがやや真顔で言った。

「壱岐のあまちゃん」として話題の大川香菜さん=いずれも長崎県壱岐市で

「壱岐のあまちゃん」として話題の大川香菜さん=いずれも長崎県壱岐市で

 島東部の八幡半島周辺では、海女がおけを浮かべてウニ、アワビ、サザエなどの漁をしている。壱岐は古くから海女漁が盛んだ。男性の海士(あま)を含めて約300人。女性は約60人。乱獲を防ぐため、ウエットスーツは着用せず、みなレオタード姿だ。

 その中で、すっかり島のスターになっているのが「壱岐のあまちゃん」こと、大川香菜さん(30)だ。岩手県陸前高田市出身。東日本大震災の後、一家で長崎市に移った。早く亡くした父親が漁師だった。海女になりたくて、地域おこし協力隊として2年前に島に移住。昨年、島の漁師と結婚した。

 「壱岐は自然が豊かで食べ物がおいしい。口は悪いけど、親切な人ばかり。(結婚は)成り行きでなく運命です」と笑顔を見せた。 文・写真 朽木直文

(2015年8月7日 夕刊)

メモ

地図

◆交通 
壱岐へは、博多港(福岡市)から芦辺港まで高速船で1時間5分、フェリーで2時間10分。
郷ノ浦港へは高速船で1時間10分、フェリーで2時間20分。唐津東港(佐賀県唐津市)から印通寺港まではフェリーで1時間40分。
空路は、長崎空港から壱岐空港まで30分。

◆問い合わせ
佐渡汽船=ナビダイヤル(0570)200310、佐渡観光協会=電0259(27)5000

おすすめ

生うにぶっかけ丼の定食

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猿岩

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★生うにぶっかけ丼
壱岐の島でとれる新鮮なウニをたっぷり入れた丼。観光名所のはらほげ地蔵に近い「うにめし食堂はらほげ」では、5~10月、ムラサキウニ、バフンウニ、アカウニを漁期に合わせて提供。生うにぶっかけ丼は2200円、刺し身などを加えた定食は2700円。電0920(45)2153

★古墳群
壱岐島内には約270基もの古墳がある。6世紀中ごろに造られた双六(そうろく)古墳は全長91メートルで、県内最大の前方後円墳。

★猿岩
島西部の黒崎半島の先端にあり、海食でできた高さ45メートルの玄武岩の崖。横を向いた猿の姿にそっくり。壱岐では欠かせない観光スポット。

★湯ノ本温泉
壱岐島西部に位置する温泉郷。神功皇后が応神天皇の産湯に使われたとの伝説がある。鉄分が酸化した赤茶色の湯が特色。源泉数は17。温泉旅館6軒と湯治温泉4軒がある。

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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