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砂金掘り

砂金掘り 北海道浜頓別町 “山吹色”に胸躍らせて

川のせせらぎをBGMに昔ながらの道具で砂金掘りが体験できるウソタンナイ砂金採掘公園

川のせせらぎをBGMに昔ながらの道具で砂金掘りが体験できるウソタンナイ砂金採掘公園

 じっと目を凝らす。真っ黒な砂鉄の中に金の粒が1つ、2つ。人さし指の先で押さえて、赤い布に優しく包む。川に落とさぬよう、そっと、慎重に-。

 オホーツク海に面する人口約4000人の北海道浜頓別町。かつて空前のゴールドラッシュに沸いたウソタンナイ川では今も砂金が採れる。この夏、金で一山当てようと思い立ち、川のほとりにある「ウソタンナイ砂金採掘公園」を訪ねた。

 ゴールドハウスと呼ばれる公園事務所で川の砂利をすくう「カッチャ」と水中で揺らして砂利を流す「ゆり板」、それに砂金を収める赤い布を借りた。川は大人のすねほどだが、水は夏でもひんやり。膝上までのゴム長靴も用意してもらった。

 この日のインストラクターは清野喜久男さん(69)。砂金掘り歴30年という大ベテランだ。砂金はカーブした川の内側や岩盤の上などにたまりやすい。くわのようなカッチャを使って、川底を掘り下げる。砂利をすくい、ゆり板に載せていく。

 「昔から10カッチャより1カッチャと言われていて-」。隣にいた砂金掘り師の藤樫陽子さん(49)が教えてくれた。1回の作業に魂を込めろ、という先人の戒めだ。まさに金言。砂金掘り師の言葉はすべて名言に聞こえるから不思議だ。

ゴールドハウスでは写真パネルや模型でウソタンナイ川の砂金の歴史が分かる

ゴールドハウスでは写真パネルや模型でウソタンナイ川の砂金の歴史が分かる

 自分との闘いが始まる。中腰姿勢で、約5キロの砂利を載せたゆり板を水面近くで揺すり続けなければならない。重い砂金を沈ませるためだ。体がすぐに悲鳴を上げる。やがて砂金がキラリと姿を現す。

 砂金掘りは思ったよりも地味で過酷だ。でも手だけは止まらない。砂金掘りの3代目となる半沢幸夫さん(70)がその理由を教えてくれた。「山吹色の輝きに血が騒ぐからね」

 夕方、手からゆり板が落ちた。体力と集中力が切れた。何粒かあったはず-。だが残ったのは小さな1粒だけ。「うそ…足んない…」。過去に何人がこの川で砂金を逃し、ぼやいただろう。「きっとサケのように大きくなって戻ってくるよ」。隣で清野さんが目を細めた。

 この日の成果は合計約20粒で、初心者にしては上出来だった。大きいのは長さ4ミリほど。砂金は採った分だけ持ち帰れる。

 町史などによると、ウソタンナイはアイヌ語で「互いに滝が掘り合う川」の意味。1898年、この川の上流で砂金が見つかると人々が殺到した。その数は5000人とも1万人以上ともいわれている。国内最大とされる768グラムの金塊は近くの支流で見つかった。これらの歴史はゴールドハウスの写真パネルでじっくりと学べる。

熟練の技が披露された「ウソタン砂金フェスティバル」=いずれも北海道浜頓別町で

熟練の技が披露された「ウソタン砂金フェスティバル」=いずれも北海道浜頓別町で

 翌日、町最大の砂金イベント「ウソタン砂金フェスティバル」を見学するために再び公園へ向かった。全国から集まった約50人がバケツの土から砂金を探し、速さと正確さを競った。砂金の選別にはゆり板のほか、現在主流のパンと呼ばれる皿を使う。常連の手にかかると20キロの土がわずか数分で消え、砂金だけが残る。その手際の良さに目を奪われた。

 欧米では砂金掘り競技はスポーツに近く、趣味として人気が高いという。世界大会も毎年開かれている。世界を渡り歩く砂金掘り師の広瀬義朗さん(43)=神奈川県二宮町=に競技の魅力を尋ねると、「いかに川掘りで砂金を採りこぼしていたか分かるんです」と返された。納得。たくさん採るには流さなければいい。でもきっとそれが1番難しい。

 この町に来てよかった。まずはゴールドラッシュが起きても、金が掘れるだけの筋力を付けよう。今回のように10日以上も筋肉痛を引きずらないためにも。

 文・写真 美細津仁志

(2015年9月11日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
浜頓別町へは羽田空港(東京)から稚内空港まで飛行機で約2時間。
稚内空港からレンタカーで1時間半。

◆問い合わせ
浜頓別町観光協会=電01634(2)2346

おすすめ

夕食のジンギスカン食べ放題

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エサヌカ線

エサヌカ線

★ウソタンナイ砂金採掘公園
営業期間は6~9月の午前9時~午後5時。
砂金掘りは川掘りが1人1日500円、水槽掘りは1人30分500円(大人、子ども共通)。
月曜休み。電01634(5)6313

★クッチャロ湖
多くのハクチョウが飛来する湖。水鳥観察館周辺からの夕日が美しい。

★宿
「はまとんべつ温泉ウイング」の温泉はとろりとしたお湯。
「美人の湯」として評判。
電01634(5)4141。
旅人向けの「トシカの宿」は吉沼光子さん(66)が作る夕食のジンギスカン食べ放題が人気。
電01634(2)2836

★エサヌカ線
浜頓別町と猿払村を結ぶ全長18キロの道路。
途中8キロの直線道路は広大な北海道のイメージにぴったり。
入り口はともに国道238号にある。

★道の駅さるふつ公園
ホタテの水揚げ量日本一を誇る猿払村。
レストランではホタテの貝柱が入ったカレーなどホタテメニューが味わえる。不定休。

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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