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三都物語

三都物語 京都、大阪、神戸 安らぎ、笑い・・・心を充電

三柱鳥居(中央)と琵琶湖疏水から引き込んだ滝(後方)、覆ったコケが不思議な雰囲気を醸し出す南禅寺・大寧軒の庭=京都市で

三柱鳥居(中央)と琵琶湖疏水から引き込んだ滝(後方)、覆ったコケが不思議な雰囲気を醸し出す南禅寺・大寧軒の庭=京都市で

 谷村新司の曲も懐かしい「三都物語」の言葉の響きに誘われ、京都、大阪、神戸と趣の異なる三つの都市を一度に訪ねた。

 まずは京都。南禅寺境内の大寧軒の庭園が特別公開中と聞いた。明治時代の茶人、藪内紹智(やぶのうちじょうち)が造った池泉回遊式庭園。琵琶湖疏水(そすい)から引き込んだ清流の中に、鳥居を3つ組み合わせた小さな「三柱(みはしら)鳥居」が立つ。太秦(うずまさ)の古社の鳥居を模したといわれる。公開は4年ぶりで、コケが美しく庭を覆っている。

 疏水の水を落とす高さ3メートルの作り滝がある。ボランティアガイドの小坂守さんが「滝の音を聞きながら庭を眺めていると心が休まりますよ」と言った。腰を下ろして目をつむると、滝の音が心地よく耳に響いた。

 南禅寺といえばやはり湯豆腐。参道沿いの京料理「八千代」に寄った。店の建物は築100年。安土桃山以来、中京(なかぎょう)で魚問屋と料理屋をしていた。戦後になって別荘にしていたこの地に移った。おかみの中西裕子さんが「老舗なんて言ったら、京都では笑われます。300年以上、その地で続けていないと老舗なんて言えません」と笑った。さすが京都。歴史の時間が違う。

霊源院住職の雲林院宗碩さんが自らお茶をたてる。器はいずれも名のある陶芸家の作品だ=京都市で

霊源院住職の雲林院宗碩さんが自らお茶をたてる。器はいずれも名のある陶芸家の作品だ=京都市で

 建仁寺塔頭(たっちゅう)(子院)、霊源院では住職の雲林院宗碩(そうせき)さん(39)自らのお点前による茶席。「甘茶の寺」として知られるだけに、一流陶芸家から茶わんの寄贈があるという。住職がその器でお茶を出してくれる。私の器は河井寛次郎作。名器を使うことには慎重な声もあったが、「使ってこその器」と住職が貫いた。千利休の和歌を引いて禅の心を説いた法話もありがたかった。

「神戸シューズの良さを知ってもらえたら」と話す青山哲夫社長(右)とデザイン部門を担当する妻の栄子さん=神戸市で

「神戸シューズの良さを知ってもらえたら」と話す青山哲夫社長(右)とデザイン部門を担当する妻の栄子さん=神戸市で

 翌日は神戸。長田区は1995年の阪神大震災で大きな被害に遭った。JR新長田駅のそばに復興の象徴の鉄人28号の像が立つ。再開発された商店街を抜け、シューズメーカーの青山に向かう。

 長田は国内のケミカルシューズ生産の約8割を占める。震災前に350社もあったメーカーが、現在は89社に減った。青山も事務所兼工場のビルが半壊した。安室奈美恵さんの厚底靴を手掛けたことも復活の後押しになったという。

 地域ブランドとして「神戸シューズ」を掲げる。青山は、観光プログラム「おとな旅・神戸」に参加してきた。生産工程を見学した。ベテランの従業員が手際良く、のり付けなどをしていく。おとな旅では職人によるセミオーダーの靴を1万円程度で提供した。青山哲夫社長(65)は「手間がかかって大変だったけれど、神戸シューズに親しんでもらえたのでは」と話す。

「落語家と行く なにわ探検クルーズ」で、桂佐ん吉さん(中央)の軽妙な語りを楽しみながら水都大阪を堪能=大阪市で

「落語家と行く なにわ探検クルーズ」で、桂佐ん吉さん(中央)の軽妙な語りを楽しみながら水都大阪を堪能=大阪市で

 3日目は大阪。豊臣家が滅びた大坂夏の陣から400年。大阪城天守閣内では、大坂の陣の徳川、豊臣両陣営の戦いの様子なども紹介している。

 内堀には、秀吉の川舟をモデルにしたとされる金箔(きんぱく)張りの「大阪城御座船」が9月末まで運航中。金ぴかの船に乗り込むと、つかの間の太閤気分に。女性ガイドの説明で、堀を巡る。石垣が間近に見え、見上げる天守閣は一段と威容を感じさせる。

 「水都大阪」を実感できるという「道頓堀クルージング」。その1つの「落語家と行く なにわ探検クルーズ」に乗る。この日は桂佐ん吉さん。道頓堀川の湊町リバープレイスを出て木津川、堂島川などを橋をくぐりながら回る。軽妙な語り口のガイドが楽しい。「大阪が世界一」というクイズの答えはつまようじの消費量だった。たこ焼きの街ならではだ。小話も挟んで約1時間30分。新装なった6代目というグリコの看板が見えたら元の船着き場に戻った。

 3日間の旅。「昨日今日明日」の三都物語のフレーズがかすかに耳に響いた。

 文・写真 朽木直文

メモ

地図

◆交通
南禅寺へは京都駅から地下鉄で蹴上駅、建仁寺霊源院は市バス清水道などで下車。
新長田駅はJR、または神戸市営地下鉄。
大阪城は地下鉄天満橋駅、湊町リバープレイスはJR難波駅など。

◆問い合わせ
京都市観光協会=電075(752)7070
神戸国際観光コンベンション協会=電078(303)1010
大阪観光局=電06(6282)5900

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※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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