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橋野鉄鉱山

橋野鉄鉱山 岩手県釜石市 独力で洋式高炉築く

釜石駅前に立つ大島高任の銅像

釜石駅前に立つ大島高任の銅像

 釜石駅を出ると、駅前広場に「近代製鉄の父」と呼ばれる大島高任(たかとう)(1826~1901年)の像が立つ。目の前には、新日鉄住金の釜石製鉄所の建物が広がる。

 「釜石が鉄のまち、と呼ばれるのはこの製鉄所があるから」と、釜石観光ボランティアガイド会会長の三浦達夫さん(80)がやや誇らしげに言った。三浦さんは製鉄所で18歳から働いた。高炉の火が消え、往時の活気は薄れたが、釜石のシンボルであることは変わらない。

花こう岩の石組みが残る橋野鉄鉱山の三番高炉跡。建設は大島高任が手がけた

花こう岩の石組みが残る橋野鉄鉱山の三番高炉跡。建設は大島高任が手がけた

 車で、約30キロ先の橋野鉄鉱山(橋野高炉跡)に向かう。国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産に登録された「明治日本の産業革命遺産」の構成資産の一つだ。

 山道を奥に入る。インフォメーションセンターで、盛岡藩士だった高任の功績や、のちの八幡製鉄所(福岡県)につながる日本の製鉄業発展に果たした役割などをビデオやパネル展示で知ることができる。

 蘭学を学んだ高任は、水戸藩で反射炉による大砲の鋳造をしたが、亀裂が入りやすく、砂鉄を原料とした従来のたたら製鉄ではなく、鉄鉱石を原料とする西洋の高炉による銑鉄(せんてつ)の製造が必要と考えた。盛岡藩領で豊富に産出していた磁鉄鉱に目をつけた。

 豪商の支援を得てオランダの技術書をもとに、独力で大橋(旧釜石鉱山事務所あたり)に洋式高炉を建設し、安政4(1857)年12月1日、日本で初めて安定出銑に成功した。日本鉄鋼連盟はこの日を「鉄の記念日」に定めている。

 この成功を受けて盛岡藩が58年に高任の指導で造ったのが橋野高炉である。高任が直接手掛けた仮高炉がのちに三番高炉となり、弟子によって造られたのが一番、二番高炉である。三基の高炉跡は、花こう岩の石組みだけが残っている。

 この日も団体客が訪れていた。世界遺産登録後、来場者が格段に増えた。「フイゴ座跡」などの表示がある。高任は西洋の技術をそのまま取り入れたわけではない。送風装置のフイゴは高熱を生み出すのに必要だが、当初の円筒形では十分な風量が得られず、高任は鍛冶屋の箱形フイゴを取り入れた。「西洋の技術に日本の伝統技術を組み合わせたのが橋野高炉」と三浦さん。このたゆまぬ創意工夫が日本の近代化の強さだろう。

 高炉跡から2.6キロほど先に鉄鉱石採掘場跡があり、運搬路跡とともに世界遺産の構成資産だが、残念ながら、遺跡保存のため非公開となっている。

鉄の歴史館にある三番高炉の再現模型(手前に立つのが岡崎貞夫館長)

鉄の歴史館にある三番高炉の再現模型(手前に立つのが岡崎貞夫館長)

 当時の高炉の大きさは、市立「鉄の歴史館」で目の当たりにできる。三番高炉が原寸大模型で再現され、高さ約7メートルと見上げるほど。岡崎貞夫館長(60)が「高炉の規模が実感できる。できれば現地へ行く前に見てほしい」と話す。先に見ておけば、橋野高炉跡で当時の姿がイメージしやすいだろう。

 釜石市は2019年ラグビー・ワールドカップ(W杯)の開催地の一つ。鵜住居(うのすまい)地区でスタジアム予定地の造成も進んでいる。三浦さんは、のちに日本選手権7連覇を果たし、「北の鉄人」と呼ばれた新日鉄釜石ラグビー部の初代主将を務めた。今回の日本代表の活躍に「19年に向けて大きな期待が膨らんだ」と喜ぶ。

釜石名物にと鉄鍋による「高炉鍋」を考案した宝来館の岩崎昭子さん=いずれも岩手県釜石市で

釜石名物にと鉄鍋による「高炉鍋」を考案した宝来館の岩崎昭子さん=いずれも岩手県釜石市で

 根浜海岸沿いの料理宿「宝来館」の女将(おかみ)、岩崎昭子さん(59)もW杯を心待ちにする一人。大槌湾に面した松林は「日本の白砂青松百選」に選ばれた名勝。11年の東日本大震災で津波禍に遭ったが、翌年1月に宿を再開した。

 以前から製鉄所の研修などに使われ、宿では釜石名物にと鉄鍋による「高炉鍋」を出す。ラグビー日本代表応援のため英国にも出かけた。19年開催に向け「1万人のボランティアで世界の人を迎えたい」と意欲を燃やしている。

 文・写真 朽木直文

(2015年11月13日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
釜石市へは、東北新幹線新花巻駅で釜石線に乗り換え、終点釜石まで快速で約1時間30分。
橋野鉄鉱山(橋野高炉跡)へは車で約45分。

◆問い合わせ
釜石観光物産協会=電0193(22)5835

おすすめ

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釜石ラーメン

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★釜石駅-橋野高炉跡往復シャトルバス運行
土日祝日、午前10時、午後1時発の1日2便。
各3時間。
釜石観光ボランティアガイド会会員が同乗して橋野高炉の歴史や魅力を説明する。
大人(高校生以上)2000円、子ども(小中学生)1000円、未就学児は無料。
年内は11月29日まで運行予定。
要予約。
岩手旅行社=電0193(31)1300

★三陸海宝漬
釜石市鈴子町の海鮮料理店、中村家が約30年前、三陸産のワカメのメカブ、アワビ、イクラのしょうゆ漬けを「三陸海宝漬」と名付けて販売を始めた。
今では釜石土産の定番。
東日本大震災後、一部北海道産などの素材を使用。
温かいご飯や酒のさかなに格好の一品。
冷凍で350グラム入りは3600円。
電0193(22)0629

★釜石ラーメン
釜石市大町の新華園本店が元祖といわれ、極細のちぢれ麺とあっさりしたスープが特徴。
台湾出身の先代店主が、3交代勤務だった製鉄所から押し寄せる客にこたえるため、ゆで時間が短くて済む細い麺にしたという。
530円。
火曜定休。
現在「釜石ラーメンのれん会」の24店舗で提供。
新華園本店=電0193(22)1888

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