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ボドルム/ダルヤン

ボドルム/ダルヤン トルコ 泥風呂で肌しっとり

大きなマストの豪華なクルーザーが大量に並ぶボドルムの港=トルコ・ボドルムで

大きなマストの豪華なクルーザーが大量に並ぶボドルムの港=トルコ・ボドルムで

 エメラルド色の海とホワイトビーチ、歴史ある街並みに、おいしい食べ物。人気観光地の要素が全部そろっているのに、日本人らしき旅行者をぜんぜん見かけない。こんな場所もあるのだと思った。トルコ南西部、エーゲ海と地中海が出合うあたりにあるムーラ県。実は、ヨーロッパの人たちが、こぞって長いバカンスを過ごす世界有数のリゾートだという。訪れたのは、日本では秋の気配を感じるころだったが、現地に着くとまだ強い夏の日差しが照り付けていた。

 この辺で最も人気の街が、西端の海沿いにあるボドルム。ガイドのナムック・テミズソイさん(38)が「トルコの人の憧れの場所ですよ」と説明する。十字軍の騎士団が拠点にしたという古城を囲むように、真っ白い壁の低層のコテージが並ぶ。ここ30年ほどで一大リゾートに成長し、芸能人たちが休暇を過ごす場所として定着しているのだという。広大なプライベートビーチを備えた豪華なホテルもあちこちに立ち、湾には大型のクルーザーが数え切れないほど停泊している。

 
石造りの建物が美しいダッチャの街。小さな雑貨店やカフェがあちこちにある=トルコ・ダッチャで

石造りの建物が美しいダッチャの街。小さな雑貨店やカフェがあちこちにある=トルコ・ダッチャで

 私も船に揺られてみたくなり、観光用のフェリーに乗船した。多様な髪、肌の色のグループが客席を埋め、楽しそうに話しながら海を眺めている。1時間半ほどで半島の対岸、ダッチャに着いた。紀元前11世紀ごろから栄え、ローマとイスラムの文化を融合させながら発展した街。1920年代に住民交換が行われるまでは、ギリシャの人も多く暮らしていたという。

 石畳の道に、白いしっくい壁の家並みが続く。ブーゲンビリアの花がトンネルのように茂る路地を進むと、雑貨店やカフェがあった。この地で景観の保存活動をしているブルチン・デブリンアクンさん(46)は「のんびり静かに過ごせるでしょう。歴史をそのまま守っているからです」と誇らしそうに話す。

観光ボートでダルヤン川を上る。山の中腹に、カウノス遺跡の岩窟墓が見える=トルコ・ダルヤンで

観光ボートでダルヤン川を上る。山の中腹に、カウノス遺跡の岩窟墓が見える=トルコ・ダルヤンで

 さらに東にある港町ダルヤンまで足を延ばした。ここは美肌に効く「泥風呂」で知られる。トルコは浴場文化の国でもあるのだ。

 「これに乗りましょう」。ダルヤン川の河口。ボートの乗船場で、ナムックさんが立ち止まった。川沿いにある名所を見ながら温泉に行くことができるという。見渡すと大小さまざまな観光船が、次から次に出発してゆく。川の向こう、山肌の崖に寺院を模した巨大な岩窟墓「カウノス遺跡」が目に入った。

 ボートが着くと、すぐ横に温泉施設の入り口がある。日本の温泉と同じ硫黄の匂い。中に広い露天風呂がある。大勢の人が、灰色の湯にももの辺りまでつかりながら、顔や体に泥を塗りたくっている。色鮮やかなビキニを着た女性たち。土偶のような体つきの中年のおじさん・・・。みんな全身泥だらけだ。

 
美肌に効くという泥風呂。温泉の底の泥を体に塗りつける=トルコ・ダルヤンで

美肌に効くという泥風呂。温泉の底の泥を体に塗りつける=トルコ・ダルヤンで

 気後れしながらも、短パンとタンクトップに着替え、温泉に入った。ねっとりした泥を底からすくい、頬から少しずつ塗り付ける。自分の腹や脚のだぶつきも、どうでもよく思えてくる。ここでは誰も、そんなことを気にしていない・・・。35度を超す日差しの下で、泥はあっという間に乾く。シャワーで流すと、パックされた肌が予想以上にしっとりしていた。「まず健康になる。そして美人になりますよ」。施設のマネジャーの女性(43)が自信ありげに笑う。

 帰りは行きよりさらに多くの船が一斉に川を下る。隣を進む船の突端で、頭にスカーフを巻いたアラブの女性が、こちらを見てにっこりしながら手を振っていた。

 文・写真 中村陽子

(2015年11月27日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
イスタンブールでトルコの国内線へ飛行機を乗り継ぎ、ボドルム空港へ。
ボドルム市街までは車で約30分。
成田-イスタンブール間は直行便で約12時間、国内線は1時間15分。

◆問い合わせ
トルコ共和国大使館文化広報参事官室=電03(3470)6380。
旅行代理店エルグヴァンツーリズム日本支社が現地の情報に詳しい。
電03(3406)0606

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トルコ風のピザ「ピデ」

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クニドス遺跡

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★トルコ料理
巨大な肉の塊を回転させながら焼くドネルケバブが有名。
羊肉が多いが牛肉や鶏肉もある。外側からそいで提供される。
下味が付いていて、軟らかくおいしい。
気軽な食堂では、トルコ風のピザ「ピデ」も人気。
生地の周りを内側に折り込んだ舟形をしている。
街にはトルコアイス「ドンドゥルマ」の屋台も点在する。

★クニドス遺跡
ダッチャ半島の突端にあり、紀元前7世紀から栄えた古代都市の遺跡。
彫刻や石柱などが発見され、研究が進んでいる。
周辺はトレッキングコースになっており、海を眺めながら自然散策が楽しめる。

★イズトゥズ・ビーチ
ダルヤン川の河口近く、全長5キロほどの広い砂浜。
遺跡などを巡る半日のボートツアーで立ち寄ることができる。
アカウミガメの産卵地として有名で「タートル・ビーチ」とも呼ばれる。
遠浅で海水浴客も多い。

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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