【本文】

  1. トップ
  2. 旅だより
  3. 鍋ケ滝
鍋ケ滝

鍋ケ滝 熊本県小国町 水幕の裏側に“異空間”

「癒やしのカーテン」として人気を呼ぶ鍋ケ滝

「癒やしのカーテン」として人気を呼ぶ鍋ケ滝

 入り口で200円の入園料を払って、「くの字形」につながる歩道にしたがって渓谷を下りていく。ひんやりした空気が広がってきた。

 5、6分で今度は水音が聞こえ、目の前に大きな滝が見えてきた。ここが最近、新たなパワースポットとして人気の高い「鍋ケ滝」だ。

 杖立(つえたて)温泉をはじめ、有名な温泉地が数多くある熊本県小国町の中心から、山に向かって車で10分。さらに、車がようやくすれ違えるような山道を走ると、到着する。

 滝としては決して大きい方ではない。幅は約20メートル、高さは10メートル。最大の特色は、滝の裏に回って、豪快に流れ落ちる水を観賞できることだ。

 滝裏は奥行きが13メートル、幅45メートルと、数十人が入れるかなりの広さだ。頭上の岩からはひっきりなしに水滴が垂れて、たちまち髪の毛がぬれた。

 なぜ、このような見事な滝裏ができたのか。

 入場券とともに渡されたパンフレットによれば、阿蘇山で巨大な噴火が起きたことにさかのぼる。9万年前のことだ。

 この爆発で阿蘇山には、大きな火口が形成された。周囲にも広範囲に火山灰が降り積もり、長い年月をかけて、硬い岩石に変わった。

 その上に川が流れ、段差が生まれて滝になったが、水が流れ落ちる過程で、岩石の下にあった軟らかい地盤を徐々に削り取り、現在の形になった。

 「ここに滝があることは子供のころから知っていたけど、行く道も整備されておらず、地元の人も全く気に掛けていなかったんだ」と話すのは、地元で長年観光タクシーの運転手をしている菊池国義さん(61)だ。

古民家を使った坂本善三美術館

古民家を使った坂本善三美術館

 人気が出たのは実は10年ほど前のこと。ある飲料水メーカーが、この滝でお茶のCMを撮影し、テレビで放送したことがきっかけだった。

 穏やかな滝の流れ具合と、裏からも観賞できる意外さが手伝って「癒やしのカーテン」として、訪れる人が増えた。

 特に観光客が多い時には、駐車場がパンクするため、近くの小学校跡地の校庭が臨時駐車場となり、滝までシャトルバスが走っている。

 入園受付の久野由紀子さん(56)は、「パワーをもらえるというんで、若いカップルの姿も多い」と話す。

 やはり滝裏に立って、止めどもなく流れ落ちる水を見るのがいい。ダイナミックな水音と、豊かな水の流れが、心の中を洗ってくれるようだ。

 宮崎県から、愛用の一眼レフカメラを持ってきたアマチュアカメラマンの小松清春さん(69)は、「ずいぶん滝を撮影してきたけど、ここは写真になる」とシャッターを切っていた。

 
旧国鉄宮原線の遊歩道=いずれも熊本県小国町で

旧国鉄宮原線の遊歩道=いずれも熊本県小国町で

 歩道の整備や、案内板設置などのため、今年から入園料を取るようになったが、客足には影響はなかったという。問題は交通の不便さだ。マイカーかタクシーしかない。

 ただ、地元の観光協会が自転車のレンタルをしている。2時間300円。電動アシスト付きなので滝までの山道も快適に走れた。

 帰りに、地元出身の抽象画家坂本善三の美術館に寄った。坂本は亡くなるまで地元で制作を続け、熊本の美術界に大きな影響を与えた人だ。

 うっそうとした森の中にある古民家風の美術館で、中は畳敷きになっている。

 山を下って、今度は旧国鉄宮原(みやのはる)線遊歩道を歩いてみた。線路は既に撤去されているが、道はきれいに整備されており、トンネルや橋を当時の姿のまま楽しめる。

 自転車のおかげで、滝、美術館、廃線跡という意外な組み合わせを、短時間で見て回ることができた。

  文・写真 五味洋治

(2015年12月11日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
鍋ケ滝へは、熊本空港か福岡空港から路線バスが便利。
福岡空港からは黒川温泉行きで2時間半。
道の駅「小国」ゆうステーションで下車し、タクシーで10分。

◆問い合わせ
小国町役場情報課=電0967(46)2113

おすすめ

ゆうステーション

ゆうステーション
黒川温泉

黒川温泉

★ゆうステーション
バスステーションと小国ツーリズム協会などが入居しており、
地元の情報を入手したり、特産物の購入に便利。
電動自転車はツーリズム協会で借りられる。
独特な形が、地域のシンボルとなっている。
電0967(46)4111

★北里柴三郎記念館
世界的な医学者で、小国町で生まれた北里柴三郎の生家や
貴賓館が並び、北里の業績を知ることができる。
2014年にリニューアルされた。
電0967(46)5466

★温泉
小国町と隣の南小国町には、多くの特色のある温泉がある。
黒川温泉は年間100万人が訪れる。
黒で統一された旅館が、豊かな木々の間に散在、
1300円で入湯手形を購入すれば、
24ある温泉宿の中から、3つ選んで
露天風呂に入ることができる。
その他、1800年の歴史を誇り、
天然の蒸気を使った蒸し風呂で有名な杖立温泉や
川べりに湯船がある満願寺温泉も。
地面のあちこちから湯けむりが上り、蒸し料理が
名物のわいた温泉郷も知られている。
黒川温泉旅館組合=電0967(44)0076

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

旅コラム
国内
海外