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宗像大島

宗像大島 福岡県 沖に望む「神宿る島」

風車小屋のかなたに沖ノ島もぼんやり見える=福岡県宗像市の宗像大島で

風車小屋のかなたに沖ノ島もぼんやり見える=福岡県宗像市の宗像大島で

 大きく息を吸い込むと、磯の香りが腹の底まで染み込むようだ。ここは玄界灘を望む福岡県宗像(むなかた)市の神湊(こうのみなと)港渡船ターミナル。向かうは、6.5キロ沖の宗像大島。2017年の世界文化遺産登録を目指す国内候補に決まった「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」の一部だ。

 「神宿る島」と呼ばれる沖ノ島は、神湊から57キロの玄界灘に浮かぶ絶海の孤島。島そのものがご神体とされ、宗像大社の神職がたった1人、10日交代で派遣されている。島内に20数カ所の祭祀(さいし)遺跡があり、8万点にも上る宝物が発見され全てが国宝に指定されている。

 行ってみたいが、島は女人禁制で、男性でも一般の人が立ち入れるのは年に1日、5月27日だけ。大島を目指すのは、その沖ノ島をなるべく近くに感じようというわけだ。

 フェリーが玄界灘の荒波をかき分けて進む。港からそう離れていない割に、結構揺れる。この揺れと、この地域が栄えたこともつながりがありそうだ。

 古代、この一帯を治めた宗像(胸形)氏。荒海となることが少なくない玄界灘を渡る航海術を持っていた。大陸や朝鮮半島と交流を深めるには、この技術は不可欠。おのずと、日本の中央政権からも一目置かれた。大陸との距離だけでなくこの航海術が、この地を海外から文化を取り入れる窓口とした。

沖ノ島を望む沖津宮遥拝所=福岡県宗像市の宗像大島で

沖ノ島を望む沖津宮遥拝所=福岡県宗像市の宗像大島で

 大島の渡船ターミナルからは、島内を巡る無料バスも出ているが、ここは自転車を借りて回ってみよう、と思ったが、島内は坂だらけという。弱気になって電動アシスト付きを選んだ。

 まずは沖ノ島が見える高台「風車展望所」を目指す。坂を上って下って、また上る。海沿いの高台に、オレンジ色の風車小屋が見えた。老朽化が進んだとのことで風車の羽根はないが、青い海をバックに立つ姿はなかなかだ。水平線に目をやると、うっすらと沖ノ島。悪天候だと見えないというからラッキーだ。ぼんやりとだが、急峻(きゅうしゅん)な崖の白っぽい岩肌と、うっそうとした荘厳な森が見える。まさしく、神宿る島のおもむきだ。

 「4本脚の動物の肉は食べないとか、沖ノ島に渡っても見聞きしたことは一切話さない。昔ほどじゃないけれど、そういう風習は残っています」。大島で旅館を営む吉田又三郎さん(68)が教えてくれた。島の基幹産業は漁業。危険と隣り合わせの仕事が、あつい信仰心につながっているのかもしれない。

 沖ノ島に向かって手を合わせる場所といえば、沖津宮遥拝所(おきつぐうようはいじょ)。沖津宮とは、沖ノ島にあるお宮。大島にある中津宮(なかつぐう)、宗像市の陸地にある辺津宮(へつぐう)、これらの神社を全て合わせて宗像大社という。行くのが難しい沖ノ島を望むため、遥拝所が設けられている。こちらからもぼうっと見える島の姿は神秘的だった。

松が表面を覆う夢の小夜島=福岡県宗像市の宗像大島で

松が表面を覆う夢の小夜島=福岡県宗像市の宗像大島で

 島の南側に回る。室町時代の連歌師、宗祇が歌を詠んだという、夢の小夜島(さよじま)がある。こんもりした島が波打ち際の近くにある。表面を松が覆い、島の手前に赤い鳥居が立つ。海と松、鳥居の色の調和に見とれた。

3Dシアターで沖ノ島を見られる「海の道むなかた館」=福岡県宗像市で

3Dシアターで沖ノ島を見られる「海の道むなかた館」=福岡県宗像市で

 さて、やはり気になる沖ノ島。神湊に戻り、辺津宮近くの「海の道むなかた館」へ。3Dシアターで島の様子が見られる。映し出されるのは、祭祀遺跡の他、荒波に削られた白く険しい崖、驚くほど太くたくましい木の幹、本州では見ることのない鳥・・・。いつか、沖ノ島に渡ってみよう。そして、神そのものとされる島の空間をじかに感じてみよう。 文・写真 丸山崇志

(2015年12月18日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
宗像市の東郷駅までは、新幹線とJR在来線を組み合わせて名古屋から4時間ほど。
東京からは約5時間半。
東郷駅から神湊港渡船ターミナルまではバスで約20分。
神湊港から大島港はフェリーや旅客船で15~25分。

◆問い合わせ
大島観光売店・案内所=電0940(72)2226

おすすめ

旬の地魚を使った料理

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津屋崎(つやざき)古墳群

津屋崎(つやざき)古墳群

★レンタサイクル
大島港渡船ターミナル内の大島観光売店・案内所で貸し出している。
本州などでは珍しいシダ植物のオオタニワタリなど熱帯、亜熱帯植物を探しながら走るのがおすすめ。
料金は1日で、自転車600円、電動アシスト付き1100円。

★海の幸
大島内の旅館や民宿の多くが、日帰り客向けに昼食も提供。
ターミナル近くの三好屋旅館=電0940(72)2003=では、予算に応じて刺し身や煮物、揚げ物など、旬の地魚を使った料理が楽しめる。
予約が必要。

★宗像大社神宝館
沖ノ島の出土品を展示。
宗像大社辺津宮脇にある。
三角縁神獣鏡や「金製指輪」など、4~9世紀に奉納された国宝約8万点を含む10万点を収蔵。
拝観料は大人500円、大学・高校生300円、小・中学生200円、幼児無料。
年中無休。
電0940(62)1311

★津屋崎(つやざき)古墳群
新原(しんばる)・奴山(ぬやま)古墳群を中心とした5~7世紀に築造された古墳群。
前方後円墳や円墳、方墳が合計60基ある。
宗像氏一族の墳墓群とみられている。
福岡県福津市教委=電0940(52)4968

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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