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板門店

板門店 韓国、北朝鮮 「休戦中」の現実を体感

北朝鮮の「板門閣」(正面奥)に体を向けて立つ韓国側の3人の兵士。水色の二つの施設の間を通るコンクリート製の仕切りが軍事境界線=韓国、北朝鮮の軍事境界線上の板門店で

北朝鮮の「板門閣」(正面奥)に体を向けて立つ韓国側の3人の兵士。水色の二つの施設の間を通るコンクリート製の仕切りが軍事境界線=韓国、北朝鮮の軍事境界線上の板門店で

 北の方角を向いて微動だにしない3人の兵士。1人は建物に半身を隠し、残る2人は存在を誇示するように立つ。北側にそびえる灰色の建物の前では、カーキ色の軍服を着た兵士が南を向いて様子をうかがっている。ふとした弾みで壊れてしまいそうな緊迫した空気が覆っていた。

 韓国のソウル市から北西へ約50キロ。北朝鮮との軍事境界線上にある「板門店」を訪れた。いまだ軍事的な緊張が続いている国の兵士同士が至近距離で向き合う場。旅前に見た板門店を舞台にした韓国映画「JSA」を思い出した。親しげに語らい合う北朝鮮と韓国の兵士が秘密の交流がばれたとたん、互いに銃口を向け合うシーン。あくまでフィクションの話だが、映画のモデルとなった地に足を踏み入れると現実と非現実の区別が付かない感覚に陥る。

 板門店は直径800メートルの円形状の区域を指し、南北会談が開かれる施設や国連管轄の施設がある。南北双方と国連軍の兵士が警備にあたり、共同警備区域(JSA)とも呼ばれる。

 訪問客が撮影できる場所は決められている。韓国側から入った場合は、手前に水色の国連施設が3棟並び、奥に北朝鮮の事務所「板門閣」が見える位置が唯一、屋外で撮影できるポイントだ。

 観光客がこぞって記念撮影する中、突然、「指をささないで」とガイドの声が飛んだ。板門店では兵士たちを挑発するような大声や指さし行為は固く禁じられている。観光客の一人が慌てて、上げた手を下ろした。

国連が管轄する施設内で兵士と記念撮影する観光客=板門店で

国連が管轄する施設内で兵士と記念撮影する観光客=板門店で

 米軍の軍服を着た白人兵士に誘導され、水色の施設の中へ。部屋の中央には国連旗が飾られたテーブルが置かれていた。部屋の北半分は北朝鮮、南半分は韓国。西洋人の観光客が兵士の横に並んで記念撮影するが、兵士は動じる気配もない。窓の外をのぞくと、東西にコンクリート製の仕切りが通り、この部屋が軍事境界線上にあることを示していた。「あの線は国境ではありません。戦争は終わっていませんし、互いに国として認めていませんから。あくまで休戦ラインなのです」。ツアーガイドのキム・キョンミさんが説明する。気になったのは韓国側の兵士が皆、サングラスを掛けていたことだ。表情が分からないことが余計に緊張感をかき立てる。北朝鮮の兵士と目が合って、いざこざを生じさせないためだという。

 国連施設の見学後、ツアーバスは、南北が朝鮮戦争の捕虜を交換した「帰らざる橋」の近くを通り掛かった。1953年に交わされた休戦協定により、解放された捕虜たちは南北どちらの国に行くか選ぶことができた。だが橋を渡れば二度と引き返すことができなかった。それが名前の由来になっているのだという。

烏頭山統一展望台から望む臨津江(手前)対岸の北朝鮮の風景=韓国・坡州市で

烏頭山統一展望台から望む臨津江(手前)対岸の北朝鮮の風景=韓国・坡州市で

 ソウルから板門店に向かう途中、高台にある「烏頭山(オドゥサン)統一展望台」に立ち寄った。そこでツアー会社に雇われた脱北者の女性の話を聞くことができた。女性は4年前、夫に内緒で一人娘を連れて中国に逃れ、韓国にたどり着いた。ブローカーに高額な金を支払い、危険を冒してまで母国から逃れた理由は「北朝鮮で暮らしていては娘に良い教育と将来を与えることができないから」。だが女性は故郷への思いを捨て切れずにいる。

 「私たちのありのままを話すことが南北統一への準備になると信じている」。展望台の眼下に広がる臨津江(イムジンガン)。対岸は北朝鮮の地だ。“帰らざる橋”を渡った女性の顔が悲しげに見えた。

 文・写真 細井卓也

(2016年2月5日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
ソウル市の金浦空港、仁川国際空港へは羽田、中部などの各空港から直行便がある。
板門店へは、個人の単独訪問が許されていないため、旅行会社による団体ツアーに参加する必要がある。
ツアーを取り扱う会社は数社あり、今回参加した「板門店トラベルセンター」のツアーはソウル市のロッテホテルソウル出発。
服装や年齢などの制限事項が多く、申込時に確認が必要。
一般の立ち入りが制限された非武装中立地帯に入るため、検問所でパスポートチェックを受ける。

◆情報 韓国観光公社の日本語ホームページなどで得られる。

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アーティストのパネル写真を展示したコーナー

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