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松江城

松江城 松江市 国宝の天守 市街一望

国宝に指定され観光客でにぎわう松江城天守

国宝に指定され観光客でにぎわう松江城天守

  東京から松江まで、新幹線と在来線を乗り継ぎ、久しぶりに列車の旅をした。昨年7月に天守が国宝に指定された松江城を見るためだ。現存する天守の国宝指定は5例目。さて、どんな城なのか。

 松江城は江戸時代初めに築城された。周囲を堀に囲まれた天守は一部白いしっくいだが、窓回りの木部は黒く塗られている。

 「国宝になった後、お客さんが増えたね。私らには同じ景色だけど、国宝ってすごいね」とタクシーの運転手さんはうれしそうに話す。

 国宝指定にはちょっとしたエピソードがある。指定に不可欠な城の完成時期を示す歴史的資料が見つからず、松江市は懸賞金をかけて捜した。2012年に天守近くの神社内から、完成時期を示す祈祷(きとう)札が見つかった。慶長16(1611)年であることが記され、決め手となった。

 大手門跡から城内に入る。松江城下の観光案内を務める着物姿の「ちどり娘」、渡辺由佳子さん(26)が説明する。「この石段の左側にある石垣の中には、ハートの形をしているものや、石工が入れた刻印が入っているものがあります」。じっくり石垣を眺める。作業に携わった者たちが、自分たちの仕事であることを示すさまざまな印がある。

 石段を上り、一ノ門をくぐると、天守を見上げる本丸のエリアに出る。天守は四重五階建てで、地下1階部分には、敵に攻め込まれたときの持久戦に備え、なんと井戸が掘ってある。

 天守には大人560円の料金を払って入る。急傾斜の木製階段を何度も上ると最上階に出る。高台に立つ天守からの眺めは素晴らしく、松江市街が見渡せる。南西方向には宍道(しんじ)湖も見える。

観光客を乗せ堀川を進む遊覧船

観光客を乗せ堀川を進む遊覧船

  城の周囲には堀がめぐらされている。城の北西に位置する「ふれあい広場乗船場」から「堀川遊覧船」に乗る。全長8メートル、幅2メートルの小さい船。後部でエンジンを操作する船頭さんは、この道まだ3年の木村智志さん(57)だ。

 「昔は堀の水が汚れていて、誰も見向きもしなかった。いろんな人が水質浄化に取り組み、整備されたから、このような船も運航できるようになったんです」

 大人なら10人も乗ったらいっぱいの船。気温が低い日が多い4月10日までは、こたつの中に足を入れて遊覧する。水面(みなも)のカモを眺めていると木村さんが「みなさん、前方の橋見えますか。さあ、この船は通れるでしょうか」と言いだす。「ええ~っ、そんな」と乗客がつぶやく。

 江戸時代からある堀の周囲に市街地が発展した。そのため現在、島根県警本部などがある市中心部の道路の下を何度も通る。観光を目的に1997年に始まった遊覧船の運航は、これら堀の構造をそのまま生かしているため、一部の橋は水面から橋桁までの高さが低く、可動式の船の屋根を下げる必要がある。「さあ、下げますよ、みなさん」という木村さんの掛け声で、乗船者全員がこたつの上に頭を伏せる。屋根は電動で低くなる仕掛けだ。「なんか、楽しい」。乗り合わせた女性グループの一人がそう言った。

 
嫁ケ島の後方に沈む宍道湖の夕日。日没30分前ごろから大勢の見物客が湖岸に集まる=いずれも松江市で

嫁ケ島の後方に沈む宍道湖の夕日。日没30分前ごろから大勢の見物客が湖岸に集まる=いずれも松江市で

 「日本の夕陽百選」にも選ばれた宍道湖の夕日を見に向かう。明治時代に英語教師として松江に暮らし、後に日本国籍を取得した小泉八雲も好んで訪れた、という。松江市の国道9号、松江警察署の西側付近が夕日を見るスポットとして有名だ。夕日の沈む方角は出雲大社のある方向で、ビルなど大きな人工構造物がほとんど見えない。湖面を赤く染める夕日に、「嫁ケ島」という小さな島のシルエットが浮かび上がる時が絶好のシャッターチャンスだ。

  文・写真 長久保宏美

(2016年2月19日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
松江には、岡山駅まで新幹線で行き、「特急やくも」に乗り換え。
岡山から松江駅まで約2時間40分。
空路の場合は、羽田空港、県営名古屋空港から出雲空港まで行き、
バスでJR松江駅まで約30分。

◆問い合わせ
松江観光協会=電0852(27)5843。
松江市観光文化課=電0852(55)5214

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★松江堀川地ビール館
宍道湖産のシジミを使った「しじみ汁」や「出雲そば」、「しまね和牛」の
焼き肉などが味わえるレストラン。
地ビールはスタウトなど各種。お土産に瓶や缶も。
団体客の状況により個人客が利用できない場合もあるので事前に確認を。
電0852(55)8877

★堀川めぐり
定時便の乗り場は「ふれあい広場」か「大手前広場」。
遊覧の所要約50分。1日乗船券は大人(中学生以上)1230円。
堀川遊覧船管理事務所=電0852(27)0417

★小泉八雲旧居
1890(明治23)年に来日したギリシャ生まれのジャーナリストで文学者、
パトリック・ラフカディオ・ハーンの住居跡。
松江には文部省(当時)などの紹介で英語教師として赴任。
滞在中に日本人女性と結婚した。松江や出雲の風土と精神性を愛し、
「雪女」や「耳なし芳一」などの怪談の作者として知られる。
入場料は大人300円。電0852(23)0714

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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