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シュウェリン

シュウェリン ドイツ 湖上の城 優雅な眺め

湖上の島にそびえるシュウェリン城=ドイツ・シュウェリンで

湖上の島にそびえるシュウェリン城=ドイツ・シュウェリンで

 「天空の城」ならぬ「湖上の城」が、おとぎの国のロマンへと、いざなうかのようだ。

 シュウェリン城は、旧東ドイツ地域にあるため知名度は低いが、ロマンチック街道のノイシュバンシュタイン城と並ぶ名城だ。

 バルト海に面したメクレンブルク・フォアポンメルン州の州都シュウェリン。周囲には湖沼が点在し、「7つの湖の町」とも呼ばれる。

 シュウェリンは12世紀、神聖ローマ帝国下のザクセン公が町を開いたとされる。湖に浮かぶ島には城塞(じょうさい)が築かれ、19世紀半ばに現在の五角形に広がる建物に改築された。

 女性ガイドとともに城内を回った。653の部屋があるという。各部屋には絵画、彫刻、鉄砲、陶器などの収集品が飾られている。肖像画が並べられた部屋があった。「歴代の城主や家族たちです。すばらしい眺めを楽しんだのでしょう」。窓の外には湖が広がり、当時の優雅な気分に浸ることができた。

 
ライトアップで夜空に浮かび上がるシュウェリン城=ドイツ・シュウェリンで

ライトアップで夜空に浮かび上がるシュウェリン城=ドイツ・シュウェリンで

 第二次世界大戦時は野戦病院、東独時代は幼稚園教諭を養成する学校として活用され、現在、宮殿内に州議会も置かれている。

 そんな自然と歴史の町にも、時代の荒波が押し寄せていた。

 シリアなどからの難民だ。入国人数に上限を設けないドイツには昨年1年間に約110万人の難民申請者が殺到、人口約10万人のシュウェリン市も約3000人を受け入れた。

 アンドレアス・ルール副市長は「失業率は悪化するかもしれない」と心配するが、「500人もの市民ボランティアが集まったのには驚きました。ドイツの“歓迎文化”の表れです」と共存への自信を示した。

 
ウエルカムカフェで交流するドイツ人や難民たち

ウエルカムカフェで交流するドイツ人や難民たち

 難民との交流のため、市内6カ所に設けられた「ウエルカムカフェ」をのぞいた。地元住民が10人ほどの難民を招き、テーブルを囲んでいた。壁にはシリア、アフガニスタンなど難民の故郷や、ドイツの都市を示す地図が張られていた。

 男性住民(75)は「ここにいるのは、母国で困難な状況に見舞われ見通しを失った人たちだ。ドイツへの期待には応えなくてはいけない」と話した。

 旧東独地域のため開発が遅れていたシュウェリンだが、近年、ホテルやレストランなどの整備も進み、在住外国人や観光客も増えた。

 地元商工会議所職員は「外国人が増えたメリットを前向きに受け止めている。将来はこの町でシリア料理も食べられるようになるだろう」と語った。

町で見掛けた、ワイマール共和国時代、町の人気者だった清掃作業員の記念像

町で見掛けた、ワイマール共和国時代、町の人気者だった清掃作業員の記念像

 宮殿近くには州立歌劇場があった。コンサートやオペラ、バレエなど、ドイツならではのクラシック音楽の世界を、日本円に換算すれば数1000円程度で気軽に堪能できる。

 冬の湖は静まり返っていたが、ヨット、ランニング、サイクリングなど、景観を生かしたスポーツも盛んだという。

 木組みの家が並ぶ小路から大通りに出ると、ほうきを手にした男性の像があった。ワイマール共和国時代(1919~33年)、市民に愛された清掃作業員。律義に掃除をする一方、当意即妙のユーモアでみんなを笑わせたという。その後に続くナチス時代の暗さとの対照が、際立つ逸話だ。

 シュウェリン周辺の旧東独地域北部は、日本ではまだなじみが薄いが、バルト海沿いには砂浜が広がる保養地も多い。列車で約2時間の首都ベルリンと組み合わせたツアーもお薦めだ。

 文・写真 熊倉逸男

(2016年3月11日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
ドイツの玄関口フランクフルトへは羽田、成田、中部国際空港などから、ミュンヘンへは羽田から直行便がある。
両都市から空路ハンブルクへ乗り継ぎ、特急列車約1時間でシュウェリンに到着する。

◆問い合わせ
ドイツ観光局日本事務所=電03(3586)5046=に資料請求できる。
ホームページもある。

おすすめ

マルクト広場

マルクト広場

★庭園
宮殿を取り囲む庭園も見応えがある。
2009年、シュウェリンで全ドイツ庭園展覧会が開かれたのを機に、せせらぎや遊歩道が整備された。

★散策
他のドイツの都市と同様、市の中心のマルクト広場には、市庁舎と大聖堂があり、広場から広がる通りには木組みの家々が並ぶ。
食料品、本、スポーツ用品などが幅広く手に入るショッピングモールもある。
小腹がすいたら、焼きたてのソーセージをはさんだパンを屋台で買って食べるのが手軽。

★周辺観光
列車で片道約1時間、エルベ川沿いのハンブルクはドイツを代表する港町。
倉庫街や港を出入りする船に港の情緒を感じる。
ウナギスープなどシーフードも豊富だ。
ハンブルクから列車で約45分のリューベックは、中世の商業都市が独立を守るため団結した「ハンザ同盟」の盟主。
旧市街は、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産に指定されている。

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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