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南九州の小京都・飫肥

南九州の小京都・飫肥 宮崎県日南市 時空を超えた城下町

JR日南線を走るJR九州のリゾート特急「海幸山幸」

JR日南線を走るJR九州のリゾート特急「海幸山幸」

  「飫肥」と書いて「おび」と読む。「南九州の小京都」といわれることもあって、ずっと気にかかっていたのだが、ようやく訪れる機会を得た。

 宮崎駅から、JR九州のリゾート特急「海幸山幸」に乗り込む。日南市特産の「飫肥杉」を、内外装にふんだんに使った特別仕様の列車だ。発車してほどなく、特大の車窓には「鬼の洗濯板」をはじめ日南海岸の景勝地が広がる。車内では、女性の客室乗務員が、手作りの「海幸山幸伝説」の紙芝居を披露したり、家族連れやカップルの記念撮影をアシストしたり、記念乗車証にスタンプを押したり、たっぷりのサービス。1時間ほどで飫肥駅に到着した。

 
復元された飫肥城大手門付近は城下町の風情が漂う

復元された飫肥城大手門付近は城下町の風情が漂う

 「飫肥」は、江戸時代を通じて伊東氏5万1000石の拠点として栄えた城下町。大きく蛇行する酒谷川の湾曲部にあり、西・南・東を川に囲まれ、北は山が迫る要衝の地だ。

 町中へ歩きだして驚いた。

 江戸時代の町割りや道筋が当時のまま残り、石垣や生け垣で囲まれた武家屋敷が並ぶ。旧藩主の居館「豫章(よしょう)館」、藩校の「振徳堂」、関税自主権の回復に貢献した小村寿太郎元外相の生家もある。電柱や電線は見当たらず、道端の水路には大きなコイが泳ぐ。目抜き通りの商人町通りには、東西1キロメートルにわたって当時の雰囲気を醸し出す商家が軒を連ねる。往時のたたずまいが町全体から伝わってくるのだ。

 
飫肥杉が林立し、こけむす地面が広がる飫肥城本丸跡

飫肥杉が林立し、こけむす地面が広がる飫肥城本丸跡

 そして、町の北辺に位置する飫肥城址(じょうし)。復元された大手門をくぐって、また驚いた。広々とした城内は、来訪前に抱いていた小さな城のイメージとは大違い。石垣や白壁は手入れが行き届き、敷き詰められた砂利が足になじむ。やはり復元された御殿「松尾の丸」に入れば、当時の上級武士の暮らしぶりが思い浮かぶ。高台の本丸跡に上がると、高さ15メートルを超す飫肥杉の巨木が林立し、こけむす地面が広がっていた。静寂の中に深遠な気が満ち、「ここは異空間か」と見まがいそうだ。

 それもそのはず。「1977年に九州で初めて重要伝統的建造物群保存地区に選定され、少しずつ整備を進めてきたんです」と、飫肥城下町保存会の郡司均・飫肥城歴史資料館長。「飫肥は武士の時代が現代に息づく時空を超えた町なのです」

 町を一歩出ると、山は飫肥杉一色。江戸時代初め、藩の財政を補おうと造林が始まったという。日南市観光協会の河野良則事務局長が「とっておきの場所」と案内してくれたのが「三ツ岩林木遺伝資源保存林」。

 天に向かって伸びる飫肥杉が立ち並び、遊歩道をゆっくりひと回りすれば30分ほど。美林を堪能するには、もってこいだ。県道沿いに大きな道標があり、駐車場もあって、いつでもだれでも入れるのだが、観光案内の地図には載っていない。まさに知る人ぞ知るスポットなのだ。

岩窟の中に建てられた鵜戸神宮本殿

岩窟の中に建てられた鵜戸神宮本殿

 日南地域は神話の宝庫でもある。広域観光ルート「ひむか神話街道」を代表する鵜戸神宮に足を延ばした。「海幸山幸伝説」の舞台で、朱塗りの本殿は、日向灘に突き出した大きな岩窟の中。拝観するだけで御利益がありそうだ。社殿前から海を見下ろすと、「亀石」が目に飛び込んでくる。岩の上のくぼみに「運玉」を投げ入れることができれば、願いがかなうという。早速試してみたが、5回投げても的中せず。「幸運」のプレゼントは、次回にとっておくことにした。
 文・写真 水野泰志

(2016年3月18日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
宮崎空港までは羽田から約1時間50分、中部国際空港から約1時間30分。
JRでは宮崎駅から飫肥駅まで約1時間10分。
リゾート特急「海幸山幸」は土日休日など特定日に運行。
車なら、宮崎空港から飫肥まで約1時間、鵜戸神宮は飫肥から約30分。

◆問い合わせ 
日南市観光協会=電0987(31)1134

おすすめ

厚焼き卵

厚焼き卵

★飫肥城下町食べあるき・町あるきMAP 
町内40店超の商店で、地元の名物や土産品と交換できる引換券(5枚)付きの観光地図。
主要施設や町内各所で販売。1部600円。
すべての有料施設の入館料込みマップは一般1100円など。

★厚焼き卵 
江戸時代に献上品として焼き始めたと伝えられる。
食感は、卵焼きというよりスイーツに近く「和製プリン」とも。おびの茶屋=電0987(25)1240=はじめ専門店は多数あるが、製法は秘伝とされ店ごとに微妙に味が異なる。
冷蔵で1週間ほど保存可能。大きさによって数百円から数千円まで。

★道の駅なんごう 
日南市南端に位置し、日向灘を望み眼前には大小の島々が点在する景勝地。
亜熱帯ムードにあふれ、マンゴーソフトクリーム(300円)やマンゴーパフェ(650円)を味わえる。
5月下旬から6月中旬には、日本では珍しいジャカランダの群生林が青紫の花をつける。
電0987(64)3055

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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