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銭形砂絵

銭形砂絵 香川県 御利益で夢もかなう?

展望台からスマートフォンで銭形砂絵の写真を撮る観光客ら=いずれも香川県観音寺市で

展望台からスマートフォンで銭形砂絵の写真を撮る観光客ら

 穏やかな瀬戸内海に面した香川県の小さな都市には、青春時代の志をよみがえらせ、夢を旅人に与える力があった。

 観音寺(かんおんじ)市は人口約6万2000人の西讃地域の主要都市。日本の渚(なぎさ)100選に選ばれた有明海岸一帯に琴弾(ことひき)公園が広がり、松林の一角に江戸期の貨幣の寛永通宝がかたどられた巨大な「銭形砂絵」がある。海岸から見ると大きな砂山にしか見えないが、間近にある琴弾山の展望台(標高50メートル)に登ると、全容があらわになる。

 高さは2メートル。奥行き122メートル、横幅は90メートルの楕円(だえん)形。だが展望台から見下ろすと、ちゃんと円形に見えるようにしつらえてある。「見れば長生きでき、お金にも不自由せん」と言い伝えられている。和歌山市から来た久保あきさん(78)が「死ぬまでに見られてよかったわ」と笑い、瀬戸内に沈む夕日に彩られた砂絵に見入っていた。

 
16億円の当せん金が出た旧市街地の宝くじ売り場

16億円の当せん金が出た旧市街地の宝くじ売り場

 砂絵は江戸期に造られたとされ、時期は寛永10(1633)年など、3つほどの説があるが不明だ。「銭形の謎」を取り上げた本も出版され、今も分からないことが多い。信じれば御利益があるかもしれない。そんな思いに火を付けた出来事があった。2013年5月、砂絵を見た市民が直後に旧市街地にある小さな宝くじ売り場で買ったロト7に大当たりした。同じ数字の2本の当せん金は計16億円。県内外からの客が今でも窓口に列をつくる。

 砂絵は大きな砂山。雨風で形が崩れるが、市民らが原則4、11月の年2回、砂を盛る「砂ざらえ」という奉仕活動を行い、形を維持している。その1人、地元で料亭「一亭」を営む荻田哲也さん(54)は「中学時代最大の思い出は同じ学年の100数10人が総出でスコップを握って砂を掘り、とんぼで地ならししたこと」と語ってくれた。

 
財田川沿いに残っている「恋の1本松」

財田川沿いに残っている「恋の1本松」

 観音寺市を訪ねてから、ここが昔見た映画「青春デンデケデケデケ」の舞台だったと思い出した。ベンチャーズに魅せられた高校生ロックバンドを巡る友情物語。銭形砂絵もその舞台だった。琴弾公園から間近の財田(さいた)川の対岸にある、映画にも出てきた旧市街地を市観光協会の100円のレンタル自転車に乗ってふらついた。この日は、春一番のような生暖かい強風が吹いていた。昭和を感じさせる古い家並みは野ざらしの廃屋もあり、割れたガラス戸が揺り鳴らされていた。

 映画の主人公が通った高校のロケ地となった観音寺第一高校の校舎は建て替えられ、音楽練習場だったれんが工場や通学路にあった古いれんが住宅もなくなっていた。それでも、準主役の岡下巧と石川恵美子が出合い頭にぶつかり、“キス”した財田川沿いの「恋の1本松」は健在だった。このことを機に恋に目覚めた岡下に自分の高校時代を重ね、あらためて映画への思いがよみがえった。

琴弾公園内にある寺と神社が一緒になった札所を巡るお遍路さん

琴弾公園内にある寺と神社が一緒になった札所を巡るお遍路さん=いずれも香川県観音寺市で

 琴弾公園を5人のお遍路さんが歩いていた。公園内には四国88カ所の霊場で唯一、寺と神社が一緒になった札所がある。琴弾山を海辺の砂絵とは反対の内陸側から再び登り、5人と一緒に神恵(じんね)院・観音寺(68、69番)に入った。本堂に招き入れてくれた羽原清祇(せいき)住職(37)は法話で「縁の大切さ」を説いた。

 うるう年の今年は、88の札所を番号の逆回りに巡礼すると御利益が3倍になるという。「亡くなった妻を弔う」ために逆回りのお遍路を続けている兵庫県加古川市の大須賀康孝さん(74)から「若いころの志を持ち続け、いつまでも健康で」と声を掛けられた。

 文・写真 原誠司

(2016年4月8日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
観音寺市へはJR岡山駅まで新幹線。特急「しおかぜ」でJR観音寺駅まで約1時間。
空路では高松空港に到着後、バスでJR高松駅へ約45分。
特急「いしづち」に乗り換えて観音寺駅まで約50分。

◆問い合わせ 
観音寺市商工観光課=電0875(23)3933。
市観光協会=電0875(24)2150

おすすめ

天然アワビ

ちょうさ(山車)
天然アワビ

豊稔池ダム

★雲辺寺
四国霊場88カ所の中で最も高い標高911メートルにある難所。
本尊は空海(弘法大師)が刻んだ秘仏。
寺までは車や登山道を徒歩で。
高低差660メートルのロープウエーでも可。
運賃は大人(大学生以上)往復2060円。

★ちょうさ会館 
10月に観音寺市内全域で行われる「ちょうさ(山車)祭り」を本物のちょうさや映像で紹介。
原則月曜休館。大人300円。
電0875(52)5500

★豊稔池堰堤(ほうねんいけえんてい)
石積みの中世欧州の古城を思わせる堤長145メートルのダム。
1929年完成。
2006年に国の重要文化財に指定。

★満濃(まんのう)池 
まんのう町に8世紀初頭、造設された国内最大級のため池。
決壊した池を空海が821年に改修したという。
地元NPOが池畔に10年前から桜の植樹を続け、今年3月に3000本を突破した。
JR観音寺駅からはレンタカーが便利。所要約1時間。

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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