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全州韓屋村

全州韓屋村 韓国・全羅北道 王朝ゆかりの味堪能

李成桂の肖像画が安置されている慶基殿。敷地内に全州史庫や博物館もある

李成桂の肖像画が安置されている慶基殿。敷地内に全州史庫や博物館もある

 初春の韓国。空港を出ると、吐く息が白かった。今回の旅は、ソウルを南下する。それでも、観光には、まだちょっとつらい時期。しかし、韓国はいつ来ても食べ物がおいしいのが、楽しみ。早速、空港近くで、昼食をいただいた。

 土鍋で運ばれ、熱々の参鶏湯(サムゲタン)。味付けは塩こしょうが基本でシンプルだが、丸ごとの鶏にショウガや高麗人参(にんじん)、もち米などが詰められ、滋味深い味わい。冷えた体もすっかり温まった。ちなみに、ガイドのアン・ギファさんいわく「参鶏湯は暑さ真っ盛りの時期に食べるもの」。夏バテ防止で、日本でいえば、ウナギに当たるそう。ぐつぐつ煮えたぎる鍋料理を真夏に・・・。考えただけで汗が出てきた。

 さて旅は、初日にソウルを回り、翌日、韓国高速鉄道(KTX)で韓国南西部の全羅北道を訪れた。オフシーズンの平日とあって、それまでは名所・旧跡も人がまばら。しかし、全州市の全州韓屋村に着くと、一転。人があふれていた。

 全州は、1392年から518年続いた朝鮮王朝の発祥地。韓屋村には初代国王・李成桂の肖像画を安置した慶基殿や、かつて「朝鮮王朝実録」を保管していた全州史庫などがある。

瓦屋根の伝統的家屋が立ち並ぶ韓屋村。建物は宿泊施設や食事どころ、土産物店などに活用されている

瓦屋根の伝統的家屋が立ち並ぶ韓屋村。建物は宿泊施設や食事どころ、土産物店などに活用されている

 「朝鮮王朝実録」は李成桂から続く25代の王の歴史を書きとめた膨大な資料。詳細で、優れた客観性も認められ、1997年、国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界記憶遺産に登録された。内容には、たとえ王といえども口出しできないようになっていたそうだ。市観光産業課のソ・ジヨンさん(29)によれば、「落馬をした王が、『これは書くな』と言いました」とか、火事から守るため、記録を一時、山に移したとき、「保管代を請求されました」といったことまで書かれているという。

 高台に登ると、ビルを背景に、韓屋村が一望できる。全州市によって町並み保存地区とされ、瓦屋根の連なる光景がくっきり。伝統家屋は700棟以上あり、車が入れない細い路地も多い。そぞろ歩きすると、王の祖先の家があったり、伝統工芸の工房があったり。あちこちで歴史を感じる。

伝統衣装の韓服姿で韓屋村を散策する女性たち=いずれも韓国・全州市で

伝統衣装の韓服姿で韓屋村を散策する女性たち=いずれも韓国・全州市で

 通りは観光客で大にぎわいで、若者の多くが、民族衣装の韓服を着ていた。これは数年前に、市民のアイデアで始まった「韓服の日」がきっかけ。韓服を着ていくと、割引などの特典があるというイベントだったが、今では、村内のレンタル店で安く借りられるとあって、男女を問わず人気だ。

 華やかな装いは、昔ながらのたたずまいを彩っていて、タイムスリップした気分になる。しかし、ギョーザや肉まん、串焼きやスイーツ…、B級グルメの店が並び、みんな韓服姿で食べ歩き。すぐに現代に引き戻される。

 散策後は、お楽しみの夕食。全州は「食の都」。韓国グルメといえば名が挙がる名物ビビンバも、ここが発祥地。韓国語ではピビン=混ぜる、パップ=ご飯。

 王朝時代から儒教の教えで親への孝行が尊ばれた全州では、供養の際にはありったけのものを供えた。ビビンバは、役目を済ませた総菜を、福をもらうという意味を込めて、家族や親戚一同で分け合って食べたのが始まりという。

 見目麗しいビビンバ。色とりどりの具材は一体、何種類あるのやら。これを崩してしまうのは、かなり気が引ける。しかし、「ピビン」するほどおいしいとのこと。よくかき混ぜ、王朝ゆかりの味をかみしめた。

 文・写真 大橋菜七子

(2016年4月22日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
韓国・仁川、金浦空港へは日本各地の空港から直行便がある。
全州市へは仁川、金浦各空港や、ソウルから高速バスが出ている。約3~4時間。
韓国高速鉄道(KTX)では、ソウル市内龍山駅から全州駅まで約1時間35分。
韓屋村には路線バスかタクシーを利用。

◆問い合わせ
韓国観光公社=電03(5369)1755
同名古屋支社=電052(223)3211
ホームページもある。

おすすめ

柱台

ビビンバ

★韓服レンタル
韓屋村内に多くの店舗があり、1時間5000ウォン(約475円)程度から借りられる。
数々の歴史ドラマや映画のロケ地として有名な慶基殿などで、韓服姿の若者らが登場人物になりきって、記念撮影をしている。

★伝統工芸
全州の特産品のひとつが韓紙。
王室への献上品として使われ、両班(ヤンバン)(高級官僚)も多く住んでいたため、貴重な紙を当時からよく使用していた。
現在も工房が残り、工芸品展示館などでは、小物の製作体験や土産物の販売をしている。

★味
名物のビビンバは、石焼きだと素材の味を損なうといわれ、全州では真ちゅうの器で出されるのが一般的。
また、全州は水質がよく、伝統酒マッコリも有名。
市内のマッコリタウンでは、やかん入りマッコリを頼むだけで、たくさんの料理も一緒に出てくる店が並ぶ。

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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