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高野山、九度山

高野山、九度山 和歌山県 幸村しのび宿坊体験

真田昌幸、幸村父子が死罪を免れ蟄居した「蓮華定院」=和歌山県高野町で

真田昌幸、幸村父子が死罪を免れ蟄居した「蓮華定院」=和歌山県高野町で

 麓の和歌山県九度山町から上ってくると高野山(同県高野町)は、ひんやりとした空気に包まれていた。1200年前、弘法大師(空海)が開いた高野山真言宗の総本山。標高は約900メートル。森に囲まれた山上盆地の地形が、静かで穏やかな独特の空気感を醸し出しているのかもしれない。

 目指す「蓮華定院」は、117もの寺院があるこの高野山の一角にある。大河ドラマで人気の戦国武将真田幸村(信繁)ゆかりの宿坊寺院だ。

 天下を二分した関ケ原の戦い(1600年)で西軍(石田方)につき、敗軍の将となった真田昌幸と次男の幸村は、東軍(徳川方)についた長男の信之らの懸命の嘆願により死罪を免れ、高野山に蟄居(ちっきょ)を命じられる。その際、半年ほど身を寄せた寺院が蓮華定院だ。昌幸と幸村はその後、麓の九度山に移り、幸村は徳川、豊臣が争った大坂冬の陣(14年)に豊臣方として再起するまで、雌伏の時を過ごすことになる。

 蓮華定院の建物は江戸期の天保年間に一度焼失したが、その後ほぼ同じ間取りで再建され、今も宿坊となっている。真田家の家紋「六文銭」のちょうちんが下がった山門をくぐると風格ある玄関、左手に枯れ山水の庭と本堂が見える。

 真田父子がかつて眺めたかもしれない美しい中庭を見ながら廊下を通り、部屋に案内される。4畳と8畳の2間続きの和室は、趣のあるふすま絵もあり、落ち着く。

 午後5時半から本堂で「瞑想(めいそう)体験」ができると聞き、参加した。さほど広くない本堂はろうそくがともり、暗く厳かな雰囲気に包まれている。50人ほどの参加者の半数以上が外国人だ。「姿勢をただし、阿(あ)を呼吸に合わせて静かに唱えてください」。住職の添田隆昭さん(69)が、英語と日本語で説明してくれる。真言宗で宇宙、万物の本源とされる「阿」を唱えることで宇宙との一体感を得るという「阿息観」と呼ばれる瞑想法だ。静まり返った本堂で目を閉じ40分間ほど瞑想した。雑念が浮かんでは消えていく。終わると心なしかすっきりした気分になった。

真田幸村が焼酎を無心した書状を説明する住職の添田隆昭さん=蓮華定院で

真田幸村が焼酎を無心した書状を説明する住職の添田隆昭さん=蓮華定院で

 添田住職の案内で、昌幸、幸村父子の居室となっていた「上段の間」も見ることができた。控えの間、次の間などを合わせると28畳ほどの広さがある。幸村が国元の家臣に「焼酎を送ってほしい」と書き送った書状(複製)など、ゆかりの品も展示されている。「酒を飲むこともでき、蟄居といっても比較的自由に暮らしていたようです」と添田住職。

 夕食は精進料理を、若い僧たちが用意してくれる。酒は酒と言わず般若湯、ビールは麦般若と呼ぶが、飲むこともできる。

 翌朝、6時からの朝勤行に参加した。鐘の音に始まり声明の後、添田住職の法話がある。亡くなった人々は遠くに行ってしまうのではなく、いつも近くに居て見守ってくれている、という逸話を交え話してくれた。

真田昌幸、幸村父子が暮らした屋敷跡に立つ善名称院(真田庵)=同県九度山町で

真田昌幸、幸村父子が暮らした屋敷跡に立つ善名称院(真田庵)=同県九度山町で

 麓の九度山町には、昌幸、幸村父子が蟄居生活を送った屋敷跡に立つ寺「善名称院(真田庵(あん))」がありそこを訪ねた。近くを紀の川が流れのどかな里の風景が広がる。昌幸はここで亡くなるまでの11年間、幸村は天下にその名をとどろかせることになった大坂冬の陣まで、14年間を過ごした。暮らしぶりは困窮していたといわれ、信之に生活費を無心した書状などが史料として残されている。 文・写真 橋本節夫

 (2016年5月13日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
高野山へは、JR新大阪駅から地下鉄でなんば駅へ、
南海高野線に乗り換え極楽橋駅で下車、高野山ケーブルで山上へ。
所要時間は約2時間。

◆問い合わせ
高野山宿坊協会=電0736(56)2616。
九度山町産業振興課=電0736(54)2019

おすすめ

九度山・真田ミュージアム

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天野和み処(どころ)Cafe客殿

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★九度山・真田ミュージアム
NHK大河ドラマ「真田丸」の放送に合わせ3月にオープンした。
真田昌幸、幸村、大助の真田3代の九度山での生活をパネルやドラマ仕立ての映像で紹介。
出演者がドラマで着用した衣装や小道具も展示している。
大人500円、小中学生250円。
電0736(54)2727

★天野和み処(どころ)Cafe客殿
白洲正子が著書『かくれ里』で「こんなに閑(のどか)で、うっとりするような山村を私は知らない」と書いたかつらぎ町上天野にある古民家カフェ。
店は本の中に登場する民家を改装した。
オーナーの客殿ひかりさん手作りの天野米のお食事セット1300円など。
火、水、木曜休み。
電0736(26)0372

★奥之院参道
高野山の一の橋から弘法大師御廟(ごびょう)まで約2キロの参道。
両側に杉の巨木がそびえ20万基を超える墓碑や供養塔が並ぶ。
織田信長、明智光秀、豊臣秀吉など、戦国武将たちの墓碑や供養塔も。
高野山金剛峯寺=電0736(56)2011

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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