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青函をゆく

青函をゆく 青森県・北海道 海峡渡る現代の竜馬

津軽海峡に面した竜飛崎で帯島(中央)について話す工藤さつきさん。後方に対岸の北海道が見える=青森県外ケ浜町で

津軽海峡に面した竜飛崎で帯島(中央)について話す工藤さつきさん。後方に対岸の北海道が見える=青森県外ケ浜町で

 気がついたら、すでに新幹線が海の下を走っていた。

 初めて体験する青函トンネル。全長53.85キロ。本州と北海道を津軽海峡をくぐって結ぶ。ついこの間まで、世界最長の鉄道トンネルだった。23.3キロは海の下になる。

 今年3月開業の北海道新幹線を、青森県側の奥津軽いまべつ駅から、北海道側の終点、新函館北斗駅まで乗った。

 車内電光掲示板の、青函トンネル入りの表示を見落としたこともあるが、前日観光ガイドが特急時代の経験として話した「青函トンネルに入ると、傾斜で前のめりになる」という感じはなかったからだ。また、新幹線は防音が進み、トンネル内の走行の音も静かになったという。

 前日は津軽半島の北端、青森県外ケ浜町の龍飛崎(たっぴざき)温泉ホテル竜飛に泊まった。1階ロビーの床に測量基準点の鋲(びょう)が埋め込まれ、トンネル工事で出た石が置いてあった。24年にも及んだ工事の間、工事関係者の宿泊も多かった。ホテルの真下を、青函トンネルが通る。

 竜飛埼灯台に足を運んだ。案内してくれた龍飛岬観光案内所「龍飛館」館長の工藤さつきさん(56)が「この季節、こんなに天気がいいのは珍しい。風もほとんどない」と驚くように言った。日本一風が強いところといわれ、年間の平均風速は10.1メートル。「風が強くて車から外に出られないこともありますよ」

車が通れない362段の階段国道=青森県外ケ浜町で

車が通れない362段の階段国道=青森県外ケ浜町で

 青く輝く津軽海峡に漁船が点々と白く浮かび、約20キロ先の対岸の背に駒ケ岳(1、131メートル)など北海道の山並みが一望できた。眼下にこぶのような島が見える。「帯島」と呼ばれる。奥州・平泉で討たれたとされる源義経が実は生きていて、同半島の三厩(みんまや)から竜馬(りゅうめ)に乗って北海道へ渡る際、馬の腹帯をここで締め直したからといわれる。伝説の義経が越えた海峡を、竜馬のような速さの乗り物が海の下を走る。

 灯台から少し下がったところに、石川さゆりさんの「津軽海峡冬景色」歌謡碑があり、スイッチを押せば、竜飛岬をうたう2番の歌声が流れた。そこからほど近いところに、全国唯一の「階段国道」がある。国道339号。「地図を見ただけで国道に昇格させた」などともいわれるが、むろん車は通れない。362段を歩いて下りた。

大沼湖畔から駒ケ岳を望む。湖面に駒ケ岳の姿が映っていた=北海道七飯町で

大沼湖畔から駒ケ岳を望む。湖面に駒ケ岳の姿が映っていた=北海道七飯町で

 新函館北斗駅からは車で回った。駒ケ岳を仰ぎながらの大沼、小沼などの大沼国定公園や、道路の両側に広々とした牧場が続く“ミルクロード”など、北海道らしい気分が味わえる。

 縄文遺跡群として北東北とともに世界文化遺産登録を目指す函館市の国史跡、大船遺跡に寄った。縄文時代中期の竪穴住居跡の一部が復元され、史跡公園として整備されている。

 発掘資料などを展示する市縄文文化交流センターには、北海道唯一の国宝の「土偶」がある。内部が空洞の中空土偶で、約3500年前の縄文後期の墓から出土した。面立ちが優しく、おなかの膨らみ具合などから妊婦を模したとみられている。

北海道では唯一の国宝の中空土偶=函館市縄文文化交流センターで

北海道では唯一の国宝の中空土偶=函館市縄文文化交流センターで

 学芸員の平野千枝さん(34)が「ほぼ完全な形で見てもらえ、当時の精神性をうかがうことができる」と説明した。神秘的なまなざしに古(いにしえ)の世界に引き込まれる思いがした。

 新函館北斗駅に戻る前、北斗市の景勝地、きじひき高原に上った。昨年、標高560メートルのところに「パノラマ展望台」が新設された。函館山や函館の市街地、遠くは羊蹄山(ようていざん)なども見える。いま人気なのは、駅に向かって大きな弧を描く北海道新幹線が眺望できることだ。

 新幹線の出発時刻に合わせ、目をこらした。カーブの辺りで車体が光ったように見えた。周囲から「見えた、見えた」とはしゃいだ声が聞こえた。

 文・写真 朽木直文

(2016年7月8日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
竜飛崎へは、新幹線奥津軽いまべつ駅に隣接の津軽二股駅からJR津軽線に乗り換え、終点の三厩駅で下車。
外ケ浜町営の循環バスがある。
奥津軽いまべつ-新函館北斗は50分。
函館へは、新函館北斗からはこだてライナーで最速15分。

◆問い合わせ
龍飛岬観光案内所「龍飛館」=電0174(31)8025
北斗市観光課=電0138(73)3111
函館市縄文文化交流センター=電0138(25)2030

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道の駅しかべ間歇泉(かんけつせん)公園

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イカ刺しがごめ丼イクラかけ

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★青函トンネル記念館
竜飛崎にある。
1988年に開通した青函トンネルの歴史を映像や立体モデルなどで展示。
海面下140メートルの世界を味わえる体験坑道は作業坑の一角にケーブルカーで下りる。
開館は4月下旬~11月上旬。
入館料は大人400円、小学生200円、ケーブルカー乗車券とのセット料金は大人1300円、小学生650円。
電0174(38)2301

★道の駅しかべ間歇泉(かんけつせん)公園
北海道鹿部町。
約12分間隔で15メートルほどの高さまで天然温泉が噴き上がる。
足湯のほか、地元の食材を蒸して食べる「温泉蒸し処」がある。
間欠泉見学は入園料大人300円、小中学生200円。
電01372(7)5655

★がごめ丼
函館駅に近い函館朝市名物の海鮮丼。
函館特産で粘りのあるガゴメコンブを用いていて人気が高い。
函館ダイニング「雅家」ではイカ刺しがごめ丼イクラかけを1404円で提供。
電0138(22)1000

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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