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清流 長良川

清流 長良川 岐阜県郡上市 アユに踊り 心弾む夏

長良川に沿って走る長良川鉄道の観光列車「ながら」=岐阜県郡上市で<br />

長良川に沿って走る長良川鉄道の観光列車「ながら」=岐阜県郡上市で

 長良川鉄道の観光列車「ながら」に揺られ、岐阜県郡上(ぐじょう)市に入ると、豪快な流れが目に飛び込んできた。川にはアユを狙う釣り人たちが点在する。この春に運行を始めたばかりのロイヤルレッドの車両が、ゆっくりと長良川沿いをさかのぼっていくと、竿(さお)を置いて手を振る人もいる。
 
 木の香りが漂う車内では、地元の野菜や肉をふんだんに使ったランチが出され、冷酒のグラスを傾ける夫婦の姿もある。何よりも、長良川が最高の酒のさかなのようで、トンネルを抜けて川が一望できる場所に停車すると「うわー、川の流れがまぶしい」と歓声が上がった。郡上八幡駅に着くと、歩いて中心街に向かった。

長良川の流れに立ち良型のアユを狙う釣り人=岐阜県郡上市で

長良川の流れに立ち良型のアユを狙う釣り人=岐阜県郡上市で

 「清流長良川の鮎(あゆ)~里川における人と鮎のつながり~」が昨年末に世界農業遺産に認定された。上流の郡上市はアユの餌となる藻類の付く大きな石が多く、良質な「郡上アユ」をはぐくんできた。昔から「郡上おどり」とともに、地元の人をとりこにしてきたのはアユの友釣りだ。大正期に伊豆から腕利きの漁師たちがこの川へ乗り込んで荒稼ぎをした。郡上の釣り人はその技術を吸収し、自ら道具や釣法を考案し「郡上釣り」というジャンルを確立した。

 吉田川に着くと、小学生たちが水遊びの最中だった。岸の高台にあるカフェから川を眺めていると、橋から川をのぞき込み、アユの様子を観察する高校生がいた。先ほど通った食堂の前にあった「中高生鮎友釣り選手権」のポスターを思い出した。キャッチコピーがいかしていた。「百点よりも取りたいものがある」さらに「勉強なんかしている場合じゃない」という意味のフレーズもそえられていた。夏といえばアユなのだ。この時季のあいさつは「アユはどうやな」が決まり文句。晴れた友釣り日和ともなると、職場を早退して川に向かう人もいる。「そう、仕事なんかしている場合じゃないんだ」とある男性は真顔で語る。

釣り人が持ち込んだアユを選別する郡上漁協の職員=岐阜県郡上市で<br />

釣り人が持ち込んだアユを選別する郡上漁協の職員=岐阜県郡上市で

 汗をぬぐいながら1キロほど吉田川沿いを歩いて下ると長良川に着いた。強い日差しが白く波立つ瀬を際立たせ、両岸に立つ釣り人が浮かび上がる。10メートル近い長さの竿が大きく曲がりアユが宙に舞った。年配の男性はバランスを崩して転倒しそうになりながらも、必死でアユを取り込んだ。郡上は流れの速い荒瀬が多いのが特徴で、そんなポイントには大きなアユが潜んでいる。胸近くまで流れに入り、アユが掛かると一気に引き抜き、麦わら帽子にかぶせた小さなタモでキャッチする人もいる。そんな名人たちは地域の人たちから一目置かれ、川遊びをする子どもたちにとってはヒーローのような存在だ。
 

夕方、次々と掛かるアユに思わず顔がほころぶ釣り人=岐阜県郡上市で

夕方、次々と掛かるアユに思わず顔がほころぶ釣り人=岐阜県郡上市で

 長良川は天然遡上(そじょう)が減り、全国的に冷水病などの感染症が広がった影響もあり、昭和期までのような魚影はない。釣り人が多くて釣るのが難しい「激戦区の川」ともいわれるが、全国各地から釣り人が押し寄せて、滞在しながら連日、竿を出す。

 夕方になると釣り人が上げたアユが郡上漁協の出荷所に生きたまま持ち込まれる。氷で締められた後、サイズごとに仕分けされ、岐阜市の市場や名古屋市のホテル、東京の料亭などに直送される。釣り人は伝票を受け取り、翌日の競り値に応じて、現金を受け取るという、大正期から続いているシステムだ。20センチ以上の良型ぞろいで50匹近く持ち込む若者もいて誇らしげだ。同漁協参事の白滝治郎さん(58)は「釣って生きたまま持ち込まれたアユは鮮度が違う」と胸を張る。つやがあって青光りするアユからはキュウリやスイカのようなほのかな香りがした。

 どこからか、郡上おどりのおはやしが聞こえてきた。郡上にアユと踊りの夏がやってきた。

 文・写真 柳沢研二

(2016年7月15日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
郡上市へは東海道新幹線のJR名古屋駅から特急ワイドビューひだで美濃太田駅まで約40分。
長良川鉄道に乗り換え、郡上八幡駅までは約1時間半。
車は名神・一宮ジャンクション経由、東海北陸道で約50分。

◆問い合わせ
郡上市観光連盟=電0575(67)1808

おすすめ

「昼の天然アユコース」

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郡上おどりの実演

郡上おどりの実演

★観光列車「ながら」
毎週金土日祝日を中心に美濃太田-北濃を1往復。
ランチプラン1万2000円(2日間有効のフリー乗車券付き)、
スイーツプラン5000円(1日間有効のフリー乗車券付き)がある。
手軽な「ながら」ビュープランは乗車券に乗車整理券500円が必要。
「ながら」予約センター=電0575(46)8021

★アユ料理
8月1日からはやな漁が始まる。
併設された食事どころではアユのコース料理が味わえる。
アユ料理店も多くあり、大和町の長良川沿いにある料理旅館「清竜」では
塩焼き、田楽、フライ、刺し身、雑炊の「昼の天然アユコース」が6480円から。
人気のうな丼が付いた「鮎・鰻(まん)セット」が4104円。
水曜定休。
電0575(88)2047

★郡上おどり
9月3日まで八幡町一帯で繰り広げられる。
8月13~16日は徹夜おどりがある。
郡上八幡博覧館では1日5回(土日祝日7回)、郡上おどりの実演がある。
大人520円、小中学生310円。
電0575(65)3215

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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